マガジンのカバー画像

批評&書評&音楽批評&散文

39
どこまでも善良な文章を集めました。読んで心地よい気持ちになってもらえたら嬉しく思います。
運営しているクリエイター

#詩

滝本政博詩集『エンプティチェア』

滝本政博詩集『エンプティチェア』

 私と滝本さんにはひとつ共通項がある。ふたりともいいおじさんでありながらSNSで自撮り画像をよく出していること。コーヒーカップを見栄えよきアングルで撮り出すように、部屋にある空っぽの椅子をありのままに撮ってみたくなるように。みなさんはどうだろうか。自撮り画像を出すのが恥ずかしいだろうか。プライバシーが侵される怖さと抵抗感があるだろうか。自作の詩を出すことには抵抗がなくて、なぜ自撮り画像は嫌なのだろ

もっとみる
詩を書く理由と云い訳

詩を書く理由と云い訳

詩を書いて人前に晒すことは恥ずかしい。
ポエムポエムなどと揶揄され
陰キャと侮蔑を受ける。
詩を書いたとしても自分のもとに
置いておくべきなのかもしれない。
雨ニモマケズは宮沢賢治の
メモ書きでしか、なかったそうだ。
それでも、人に読んでもらう詩を
書こうとする時
美しく、賢く、さらにいえば、
自我を消し、知的さ、言葉の遊戯へと
もたれかかりながら、
人にみせることの出来る詩句として
誰かに喜ばれ

もっとみる
指差すことができない/大崎清夏 詩本評

指差すことができない/大崎清夏 詩本評

どう読めばいいのか困惑した、という感想が多い。
私が初めて詩集本というものを買った「指差すことができない」は中原中也賞を受賞された作品。これを読むと詩の手法がある小説とは何か、が逆説として理解されるだろう。外界を書いている言葉が自己の内側を表しているということ。形而下の外界を現す言葉が形而上の存在を書いているということ。読者は形而下から外界の実存を認識しようとする。しかし書かれている言葉は形而上の

もっとみる