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傷がなければ完成しなかった物語

今年、3年ぶりに日本に帰国していろんな場所に行く事もできた。地元に勿論帰るのが一番の目的だったのですが、それでも関西を中心に大阪や京都、神戸に広島、そして東京にも5日ほど滞在しまして、よき気分転換になりました。

そして気がついた事といえば、自分にはあまり都心が合っていないという事ぐらいでしょうか。東京で3日も滞在すれば頭痛がして、慣れていない空気感というか、人混みというか、目まぐるしい情報とでもいうのだろうか、とにかくダメでした。多分、パリでも同じなのですが、仕事などで行くのであればいいのですが、それ以外では本当に数日だけで十分だと知りました。今後の参考になりそうです。

とにかく日本ではもう一つの目的でもある、体の癒しと治療に専念しました。珍しく1ヶ月ほどクライミングも休み、ただただ1年ほど抱えていた左の腰の痛みとの対決でした。そして知り合いでもある接骨院さんにお世話になり、とにかく調子を戻せる様にとがんばりました。その結果、フランスに帰国してからも段々と回復してきているのがわかり、本当に嬉しいかぎり。体にエネルギーが戻ってきた感覚もでてきて今年は頑張れそうです。

さて、近況はこれぐらいでしょうか。後は写真のために日々、何かしらの編集だったり撮影のためにどうすればいいのかと今は知識を入れ込んでいる感じですが、少し自分にとって面白い感覚に陥ったのでその記事を書こうと思います。それは、傷についてです。


皆さんは傷と聞くとどう思うでしょうか。痛みであったり、欠陥であったりとやはりネガティブな感覚を抱くのではないでしょうか。かくいう自分もやはり傷はない方がいいと思っていたのです。

例えば作品を作る時にどうすれば完成するのかを考えるわけです。完璧に仕上げて、動きを仕上げ、そして空間を見極め、音楽の盛り上がりなどを気にしたり、衣装はどうすればいいのかなど、様々なところに気を遣うわけじゃないですか?それは完璧なものを作りたいわけですよ。でも、それは一つの方法でしかなかったのだと思うわけです。

多分誰もが原石かダイヤモンドかと言われれば、ダイヤを欲する人が多いと思うんですよ。それらが世に出回る作品の大半だと思うわけです。細部にまでこだわり抜いてそれこそ隅々にまで汚れのない様に綺麗にするわけです。そして一度綺麗になればそれを保ちたい。これが普通なのです。

でも、いつも思っていたのは、面白み、つまりドラマにはあまりにも色がかけてしまっているのです。それがどこか自分の中に埋れていた本音がそのゴミ溜の中で叫んでいたのです。面白くないと

だけで答えは見えないのです。どう完璧にしようとしても、その瞬間はいいものの次の瞬間には忘れ去られてしまう。作品をみたはずなのに記憶に残っているのは隣の人の咳ばらいだったなんてこともあるわけですよ。だからいつも作品には欠けているものがあった。それがなんなのかを考えていたところ、傷というネガティブに捉えられがちなシンボルに出会ったわけです。


これは本当に訳の分からないところから気づかされました。プラモデルのドラマの最終話、プラモとしては完成したものにさらに加工をしたのに、それをわざと壊して物語を表現するという所からです。

傷や汚れは歴史と流れで生まれる。そして最後に完成するのはどれだけその傷を負いながらも前に進んで来たのかによるものだと。

完璧とは傷を付けないことではなかった。完璧でも完成はしないんだと。

傷をつければ歴史が生まれ、困難が生まれる。だから人生には苦しみがあるのだと。そしてその苦しみを持ちつつも前に歩みを進めるからこそドラマが生まれ、人生に陰影が生まれる。過去に思い出されるものだって、苦しみや痛みが多いのは、印象が残り、歴史からドラマが生まれたからじゃないだろうか。そして未来の自分が笑って話をできることが乗り越えたという自信になってきたはずだ。

昔にそういえば千利休だったか忘れたが、お坊さんか、庭師だったかの話を聞いたことがある。弟子か息子が庭の整備を任されていた。弟子は毎日落ち葉の一枚もない様に掃除をしていたが、師匠からは一度も合格も出されなかったそうだ。ついに弟子はどうすれば完成するのかと師匠に問い出したところ、師匠はその場にあった木をゆすり落ち葉を落としたそうだ。

自然とは何か、そして人が感じる完成とは何なのかをよくよく考えさせられたと思っていたが、人の感覚もそうなのではなかっただろうか。わざと傷をつけるのでは勿論ないが、表現を自然とできるには傷という体験も大事だったなと改めて思ったものだ。

完成と完璧は違った。芸術もその奥深くまで潜り込み、歴史を刻んで行くしかない。また一つ人生の学びがそこに合った様な気がした。何で学んだかなどは問題ではない、それを常に考えていることが大切であり、創造をより一層厚いものにできればいいなと思うばかりである。

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