あなた、という認識主体

 語りかけるならば、ここには「あなた」以外にはいないということになる。これを書いているものなどいないのだ。これを読んでいる者しかいない。それが他ならぬ「あなた」という者だ。あなたは一体誰だろうか。「汝自身を知れ」とマトリックスのネオもその文字を読んだが、あなたは一体誰であろうか。人間であろうか、セクシャリティや国籍、宗派、性別、あるいはノンバイナリーといった、なんらかの属性を持つ者だろうか。それらは「あなた」が認識しているものであり、言うならば対象である。あなたの言う性や属性はそれ自体で「あなた」でないのは明白であろう。「あなた」はあなたの言う性や属性、人間と認識しているもの、腕や足、顔、眼球と脳を通してみた視覚、機能を通じて得た知覚、それそのものではないのは明らかだ。では、あなたは一体どこへ行ったのだろうか。逃げたわけではあるまい
最初から、ずっとそこにいる。意識、そのものである。

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