第12話 37週、駆け込みデート
まだまだ生まれるまで時間があるぞと言っていたら、あっという間に37週まできた。
とはいえ、まだまだ子宮口は硬く閉じている様子であった。
当の本人も、胎盤枕で手を頭に当てて口をぺろぺろしたり、あくびをしたりして、ゆったりとお腹の中でくつろいでいるのがエコー検査に写っていた。
内診で指をグリッと膣の中に入れたりするんだけど、それが痛くて痛くて顔がひん曲がる。「まだっぽいな」という先生の声がして、イテテ…となりつつも『［まだっぽい］ は、いつ ［そろそろだな］ に変わるのだろうか』と疑問に思っていた。
37週にもなると、着替えるのも ゼェゼェ、ハァハァ と必死の作業である。世の中は正月セールの真っ只中だったが、体型がダルマさんなので洋服を買う気にもなれず、買い物といえば赤ちゃん関係か授乳ブラや前開きのパジャマくらい。グレさんも彼なりに用心したり、私を気遣っているのか、あまり遠くへ出かけようとは言わなくなった。
けれど、2人でゆっくり出かけたりも今だけのチャンスで、その時間を楽しんだ方が良いんじゃないだろうかと思い始めた。それで、「デートがしたい」とお願いをしたのだった。
デートと言っても、何をするかはよくわからなかったのだが、気になる場所、好きな場所、行きたかった場所へと3週にかけて出かけた。
① 気になっていた【中目黒】
とりあえず、お昼を食べよう！と、たまたま見つけて入ったカレー屋さん Cafe Red Book は大当たり。最近ではついついGoogleマップでお店を検索し、星の数を見る癖がついてしまって、つまらない人間になってしまったように感じていたので嬉しい。
バスマティライスは大変に美味しかった。
その後代官山へ足を伸ばすも、なんかもうオシャレすぎてよくわからなかった。
立派な桜の木々が並ぶ目黒川沿いを歩いて、まだ見ぬ桜の花に想いを馳せた。暖かくなったら今度は親子で桜を見に来よう。
② 大好きな【谷根千散歩】
翌週は、大好きな根津〜谷中を歩いた。この街はなんとも落ち着く場所で、大好きだ。
人も少なくて、のんびりした空気感が疲れない。かと思えば谷中銀座商店街は活気もあって楽しい。美味しいものトラップ全部に引っ掛かりたい。
前から行きたかった、 Le Coussinet の 窯出し搾りたてシュー（300円）は、お店の方が手のひらにポンと乗っけてくれる。ぽわんとしたカスタードクリ〜ムをサクサクのシュー蓋で掬いながら食べる。『幸せ…』と自然に口から漏れるんだから本物だ。1回に5個食べたい。
谷中方面へ向かう途中、 ひるねこBOOKS という本屋さんを途中で見つけた。入ってみると、新書や古書が所狭しと並ぶ。洋書も数多くあって、ジャンルも多彩でとても楽しい本屋さん。子ども用のフランス語練習本を見つけた。そろそろ詐欺って言われそうだけど、今度こそ頑張ろうフランス語（と思ってまた時が過ぎているが）。
③ 行きたかった【北千住・ライカノ】
大大大好きな孤独のグルメで五郎さんが行っていたタイ料理レストランのライカノ。ここに行きたいという夢を叶えてくれてありがとう。
大学時代の友人も一緒に、みんなで舌鼓。ここに間違いなく居た五郎さん。五郎さんと同じものを食べる幸せ！
こんなに美味しいタイ料理初めて！ってほどの素晴らしいご飯だった。注文するもの全てが美味しくて嬉しい。
ぷくぷくぷくぷく太っていくことも、もうこの時点では気にしなくなってしまったし、また食べすぎて絶対太ったけど、心は大満足した。
結局は食べ物にしか目がいかない。でも美味しい美味しいと言う時間が1番楽しくて幸せ。
さ、ノミちゃん、陣痛、いつ来ても良いよ！！！！！
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