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2021年12月の記事一覧
さようなら、いままでありがとう
「夢を見た」と、彼はリビングにやって来るなり言った。「夢の中で、ぼくは売れないバンドマンのまま、ガラガラのライブハウスで演奏したり、路上で弾き語りしたりしてた。オンボロアパートに住んでて、車も、財産も一切ない」
彼女は、コーヒーを淹れて飲んでいるところだった。昼食を済ませたところだった。かたわらにはトランクが置いてある。
「そう」と、彼女は言った。「そこにわたしはいた?」
「うん」と、彼はうなず
女王陛下のことを愛さなければならない
もしその女王が鏡に向かって「この世で一番わたしのことを愛しているのはだあれ?」と尋ねたとしたら、「それは女王陛下、あなた自身でございます」と鏡が答えるくらい、その女王は自分が大好きな人間だったので、自分の国の国民たちが自分を充分敬愛しているとは考えなかった。充分どころか、全然不足である。まるでなっていない。
女王は国民どもの母であり、女神であり、恋人であり、その他もろもろ、とにかく最上級に愛さ