会社の寮生活って意外と楽しい

新社会人、新入生の中に、寮生活をスタートさせる人は少なくないと思う。

私が入社した十数年前は、同期の大半が会社が保有する寮に入寮し、寮が無い配属地は会社が借上げた賃貸アパート・マンションに入居した。

プロスポーツ選手と同じだね、と言えばそうかもしれないが、いやいや、次元が違う。

コンクリート建てで、側から見れば周辺のマンションと同等の外観を有するものもあれば、倒壊寸前のボロ屋もあった。

私が入寮した寮は、食堂(30人ほど収容可能で、リビングスペース付き)、風呂、トイレ、洗面所、洗濯機と乾燥機は共有で、各人に一つ個室が用意されていた。

なお、上記の共有設備と通路、玄関、外回りは管理会社の方が毎日掃除してくださっていた。

個室は、2000年1桁台まで2人部屋だったそうだが、時代の流れもあり、私が入寮した時は、1人部屋に変わったばかりだった。

床は畳で、広さは都心の1Kほど(6〜8畳間)、お気持ち程度の板の間(時代劇でいう、掛軸や兜、生花が飾ってあるエリアのイメージ)と、ベランダが付いていた。

せめて、部屋にトイレとユニットバスが付いていれば…と思った次第だ。

(ユニットバスと小さなキッチンが付いている寮もあった)

贅沢かもしれないが、世界的な大不況の中、大手企業に採用され、新生活に夢膨らむフレッシュマンたちのモチベーションは、この入寮説明会で若干傾いた。

ところが、「住めば都」とは本当だった。

仕事を終えて疲れ切ったところに、暖かい食事と、お風呂が準備され、仲間たちに囲まれて、母親や祖母のような寮母さんと過ごす日々は宝物になった。

以下に女子寮事情を説明する。


食堂

寮母さんや、外部委託の調理師によって、朝食は6時頃から、夕食は17時頃から、食事の提供があった。

ガラス張りの冷蔵ケースに、名札と共にサラダ等の冷蔵品が保管され、白米と汁物はブュッフェ形式で取り分ける形式だった。

稀に、謎のメニュー(蒲鉾の天ぷら、はんぺん入りのオムレツ等)が提供されたが、それも含めて全て美味しく、お腹いっぱいに食べていた。

ところが、金曜の夜は激戦で、とりわけ、カレーライスの日は、帰宅が遅くなればなるほど、具は無く、白米も無く、サラダのみ(それすら誰かに食べられていることも…)。

誰でも自由に使えるキッチンが食堂と各階にあるので、全食自炊で通す人もいた。


風呂

小規模銭湯のような雰囲気が漂う風呂だった。

入り口の扉を開けると脱衣所があり、隣の扉を開くと洗い場が4台、4人が足を伸ばしてゆったり浸かれる浴槽が1つあった。

5人以上が入ると、ちょっと狭く感じる広さだ。

風呂に入る時間は自ずと決まってくるので、気が合う人同士で時間を合わせて入ったり、個室に訪ねてそのまま一緒に向かったりした。

湯船の中こそ情報公開の場であり、職場の誰それの愚痴や、あの件宜しく頼んだといった仕事の話も、プライベートの話も、ざっくばらんにお喋りしていた。

お湯は、屋外の給湯器で沸かす仕組みのため、その中のお湯が枯渇すると、シャワーのお湯が出なくなった。

したがって、夜遅くに帰ると、水風呂と水シャワーにひとり驚き、服を着てすごすごと個室に戻った。

なお、隣に予約制のユニットバスがあるので、生理中や一人になりたい時は、こちらを使用した。


トイレ

各階にトイレはあったが、個室が2〜3つ、そのうち2つが和式だった。

人によると思うが、小は普通にできても、大や生理中は相当な神経を使った。

自室の扉を少し開けて、トイレ方面を確認し、誰もいないことを十分に確認して、サササッと済ませた。

飲み会で飲み過ぎてフラフラで帰宅した時は、申し訳ないくらい、たった一つの様式トイレを占拠した。


洗面所

小さなキッチンの隣にあるせいか、ここで食器洗いをする人もいた。

綺麗に使っていれば問題は無いが、水浸しにしたままだったり、食品が詰まってしまったりすると、寮長から注意喚起された。


洗濯機・乾燥機

入寮者同士のトラブルの元、洗濯機と乾燥機。

使用中に眠ってしまったのか、私物を取り出さないまま数時間放置する人、それに苛立ったのか、勝手に中身を取り出して使用する人、それを繰り返すと、必ずトラブルになった。

取り出さないままいると、カゴが置いてあればその中に入れられていたが、無ければ洗濯機の蓋の上に山積みになり、今度はその洗濯機が使えず、イライラ…負の連鎖だ。


個室

広さや設備に関しては最初に説明した通りだ。

各自、テレビや電子レンジ、冷蔵庫といった家電、ベッドを持ち込んで、工夫して住み心地を良くしていった。

畳が嫌だ!という人は床一面にラグを敷いたり、電気が昭和すぎる!という人は電球や電灯自体を変えたり、間接照明だけにしたりした。

互いの部屋を覗かせてもらい、アイディアを共有し、個性的な部屋が出来上がっていくのは楽しかった。

私の部屋は荷物が少なく、炬燵があったこと、更には、階段の正面の部屋ということもあって、皆の溜まり場になっていた。

冬は鍋パーティー、そのまま自室に戻らず寝泊まりする人もおり、土日の朝は何人かでホットプレートで好きなものを焼いて食べる、という風に過ごしたり、寮の飲み会会場にもなった。

いつも鍵を開けていたので、ノック音と共に気軽に入り、お喋りしたり、泊まっていったりした人もいた。

そういうことが、ストレスの解消になり、活力に変わったので、私は一人暮らしをするよりも、寮で良かったな、と思った。


まとめ

私のように、寮生活に抵抗感がある人もいると思うが、自分次第で存分に楽しめるし、貯金が減りにくく、コスパは大変良い。

嫌なら自分で選択して、付き合いを制限したり、部屋を借りたりすればよいのだ。

まずはお試しと思って気軽に入ってみるのも良いと思う。

もしも、新生活を寮でスタートする人が読んでくれたなら、「住めば都だ」と伝えたい。

この経験が、後の海外出張で活かされるとは、思ってもみなかった。

以上

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