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親父と私

『とんび』と言う映画を観た。
とんびが鷹を産んだと皆に言われるほど、荒くれ者の父からそれに似つかない息子が生まれる。
父と息子の物語だった。

この映画を観終わった時、ふとこんなことを思った。
私と父の物語なら、どんな題名がつくだろうかと。

題名を考えていると、父との思い出がいくつも思い出された。
最近のものから、遠い記憶の奥にしまい込んだ埃まみれの古いものまで。

私にとって、父は何で。
父にとって、私は何なんだろう。

私は、娘を産むまで父が大嫌いだった。
幾度も裏切られた気になったし、そんな情けない父を見るのが辛かった。
私が大好きだった父は、もう死んだ。
そう思っていた。

しかし、『とんび』と言う映画を観ていると、登場人物の息子が見ていない場面ほど、父の愛情が映されているように私には見えた。
でも、息子は全くその愛に気づかない。
私もこの息子のように、私が気づいていないだけで、ずっと父の愛は私に一心に注がれていたのかもしれないなと感じた。
そう感じた瞬間。
たくさんの父のやさしい眼差しが映画のように、思い出された。
シーソーをしながら笑いかけてくれている父。
貧乏をネタに家族を爆笑させた父。
こたつを立てて、子犬が寒くないように一生懸命世話をしていた父。
色鉛筆とスケッチブックをクリスマスか誕生日にねだると、申し訳なさそうに私を見た父。
中学の時、足を骨折した私を毎朝送ってくれた父。
高校の彼氏も、嫌な顔一つせず一緒にスノボに連れて行ってくれた父。
大学祝いにこの鞄を持たせてやりたいと、高いブランドのバッグを買いに連れて行ってくれた父。
人気で無いってなったら、血眼で探してくれた父。
私が、同棲でズタボロになった時、大国町まで迎えに来てくれた父。
結婚を決めた時、喜びもせず無表情だった父。
でも、夫にこれだけを伝えた。
「頑張り屋で頑張り過ぎてしまうから、頼むな。」と。
そして、育児が辛かった時、もう居場所がないと思ってた私にこうも伝えてくれた。
「いつでも帰ってきなさい」と。

なんや、私ちゃんとずっと愛されてるやんか。

疑って、決めつけて、遠ざけて。
どうせ私のことなんか、好きじゃないんやって。
大切じゃないんやって。
もういらんねやって。
勘違いやないか、全部。

それも踏まえて、もう一回、自分に問いたい。
私にとって、父は何で。
父にとって私は何なんだろう。

きっと、私が生まれ出たその日から、私にとって父は大好きな父で。
きっと、私が生まれ出たその日から、父にとって私は大好きな娘なのだろう。
何があろうと。
こう思えるまでに、まぁまぁな紆余曲折はあったものの、私たちは結局変わらず親子でい続けている。
これまでもこれからも、父と娘。
互いに、それ以外の何者でもないのだ。

そう気づいてもまだ、言えない言葉が私にはある。
その言葉を直接言うことは、きっと無い。
しかし、この記事だけは贈りたい。
この言葉を添えて。

親父へ(私は父を、花の16歳ぐらいから親父と呼んでます。笑)
「私の親父として、生き続けてくれてありがとうございます。
しぶとく、しぶとく生きてくれてありがとう。
ずっと愛し続けてくれてホンマにありがとうな。
ようやく気づきました。そやけどまだ、全部許したわけやないけどな。
でも、まぁこれからもよろしく。以上。」ゆうのより











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