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「ルポ 筋肉と脂肪 アスリートに訊け」

平松洋子 「ルポ 筋肉と脂肪 アスリートに訊け」 (新潮社)

平松洋子さんといえば自分にとっては圧倒的に”食”の人であって。
次いで、読書、エッセイの人か。

それがどうしてアスリートとその周辺につながっていくのがまず冒頭に、丁寧に興味深く書かれている・・・ところから始まるこの本。

突然ですけれど。

自分、スポーツ好きです。観るのもやるのも。

いわゆるスポーツマンってガラではないのだけれど、今も週末は子供達と一緒に体を動かしているし。(少年野球の練習を手伝っています。)

でもね。

好きだけど、上手くない。

よくいるでしょう?

子供のころみんなで何かをスポーツを!って時に必ず張り切って元気よく「やる!やる!やろうぜ!」ってノッてくる子。

でも大した活躍はできない。ワイワイやってるだけ。

あれが自分です。

導入部を読むとどうやら平松女史もスポーツは好きでも結果が上手い事出なかったタイプらしい。
(しかし同時に、好きだった水泳で選抜選手に選ばれた旨書かれているので多分に謙遜も含まれているのかも。)

しかし、離れなかった。スポーツから。別の面に入り込むようになった。

その経緯が少し自分と似ている感じだったので、この本を愉しく読めたのかもしれません。

すみません、もう少し自分の話を。

結果は出ない・・・いや、正確に言うとそんなに真剣に自分を追い込んだこともないのですが・・・なりにスポーツが好きであり続けた結果、いわゆる”自分探し”な状態の頃、スポーツの裏方になれないか?トレーナーなんてどうだろうか?・・・なんてアイディアにぶつかったことがあります。

結局このアイディアも”学ぶにしても学費がなぁ”・・・なんて立ち消えになっていくのですから自分、全くもって中途半端な人間なのですが、この目線はずっと残り続けました。今も自分なりにカラダつくりを続けていますし(これまた自分に大甘なのですが)スポーツの結果や目で見える動き以外のカラダ作りや技術論などとても興味がある。

似たような感じと言っては失礼か、「アスリートの身体と精神の内側に、私なりに分け入ることはできるだろうか。」という問いに自ら応えた力作がこの本。

自分はやっぱり前半の、力士・プロレスラーといったそれこそ肉体を糧に生きる人達の話・・・カラダつくりと食事を中心とする・・・にグッと来てしまうのですがもちろんそれだけではありません。

陸上・野球・テニス・・・等多岐にわたる分野でのトレーニング・補給・ケアする周辺の人間、果ては腸内環境に体脂肪計。

ちょうど疫病騒ぎをまるっとまたぐ期間執筆された本、最後は取材対象それぞれの現在を取り上げてこの本は終わります。
そうそう、冒頭では挙げ忘れてしまったけれど平松女史といえば軽快な文の書き手であると同時に素晴らしいインタビュアー・聴き手でもある。スポーツに対する好奇心と併せてその聴き手としての魅力がこの本を支えるもう一つの要素でしょう。

あとがきがまたいい。改めて平松女史のこの本への思いが伝わってくるようで。

この本を通じて、たとえ目だけでもいろんなスポーツとの関わり方が見えてくるといいし、それができると感じました。

もちろん、自身が現場で活躍するアスリートである必要はなくて。

平松女史も自ら言うように、好きであれば誰にとっても「スポーツは、私を拒絶していたのではなかった」と思える場面があるはずなのだから。


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