「もう革命しかないもんね」そして「ぼくにはこれしかなかった。」
森元斎 「もう革命しかないもんね」 (晶文社)
早坂大輔 「ぼくにはこれしかなかった。」 (木楽舎)
極めて印象的な2冊を偶然、続けて読んでしまったので今回は一緒に。
両方とも要するに”生き方”の本。
先に読んだ森元斎、これはもう帯やサブタイトルなどから自分が読まなくてどうする・・・という感じ。
(参考までに、自分も東京を離れ長野の山間に拠点を移しました。)
手造りの、都会からちょっと離れたところで暮らす毎日の動きから様々な意味を考える。
そうそう、著者は哲学者でありアナキストなのであるのだがアナキズムってそう難しくも危険なわけでもなく。
社会的に常識とされる大きなうねりから外れて何とかうまくやろう、自分を活かそう・・・というところに行く。それを考えると自分のようにいわゆる”レールに乗れなかった”人間には極めて真っ当な考え方であり、またそうしないと愉しく生きていけないのであるから自分は部分部分アナキストである、とも言えたりしちゃうわけです。
革命も、同じ。
過激な武力行為による革命だけが革命じゃない。もちろん本書で伝えているのは極めて”おだやかな”革命。
この本はその考え方・やり方を最初は住む場所を作る・食べるものを作る・・・といった手造り的暮らしの中でアタマでっかちにならず(実際暮らしてみればすぐにわかるのだが、アタマでっかちになる余裕なんていわゆる”田舎暮らし”にはナイ。)、実際身体を動かしながら考えて行きましょうよ・・・と。
また食べることもそうなら旅だって音楽だってもちろん本だって・・・とどんどんわき道に逸れながらそれぞれ考え方のヒントを投げかけてくる本。ヒント集ですね。ちなみにどれだけ逸脱するかというとカレー作りからレヴィ・ストロースの構造主義につながってしまうほどの逸脱振り。ここまで来るとむしろ爽やか。
しかしその逸脱の部分が単に著者が言わんとすることに、太い肉付けをしていく。そしてそこがこの本を面白く、またわかりやすくしているんですね。
表現はともかく(栗原康もそうですが、若手アナキストってこういう文が好きな人が多いのだろうか?っていう文です。)自分と考えていることがとても近かった。もちろん知らなかった部分はヒントとして。
ハチャメチャなふりして、極めて真っ当な生き方のヒント集。自分にとってはそんな本。
2冊目は本屋的にも気になっていた本。熊野古道を歩いた帰路、立ち寄った名古屋の本屋さんで買いました。
もう5か月も前・・・でもしっかり覚えてる。旅先で本を買うってとてもいい記憶のカギになったりする。面白い。いわゆる”お土産”よりも自分は好き。(これは本に限らず。いい釣り出来たときの釣具屋で買ったサンダルだって、いいアウトドアショップで買ったTシャツだっていい。)
こちらはややしんみりと自分の失敗の方に属する出来事と思いを中心に、主に若い人に向けてのメッセージ的な感じで書かれています。
本屋についての本・・・というとやはりつい読んでしまうことが多いのですがこの本が気になった一番のポイントはやはり、タイトルなんです。
何故かって。
ぼくにも、これしかなかったからなんです。
長野に拠点を移した自分の思いの原点はあくまで「川の近くに住み、もっと釣りがしたい」という極めてアホみたいに単純なところにあるんですが、これは実際住む場所が決まって、食い扶持稼げればあとはOK・・・。
・・・ってならないんですよね。
つまらないんです。
関わりの量が自分には、足りなかった。
もともと仕事に関しては器用貧乏なのでしょうか、どれもある程度以上の評価はいただけるくらいの仕事はしているのですがのめりこめない。仕事人間になれない。時間になったら早く切り上げて自分の世界に入り込みたい。
じゃあその自分の世界を仕事に・・・というと今度は現実味がない。理由はいろいろ。仕事としての需要が少ない、自分の望む形がない等々。
そんな中食い扶持仕事は続けつつ(よく「世を忍ぶ仮の仕事」なんて表現を使ってますが。)自分が出来る・したい仕事・・・と最大限バランスをとって始めたのが本屋という仕事なんですね。(そしてこういういわゆる”レールを外れた”やり方で幸福を追求することも十分”アナキズム”ですね。)
もちろん食い扶持仕事だからと言ってイヤなことをガマンしたりはしない。コチラはコチラで充実させていくというところは重要ですね。今は結構理想的な状態でコチラにも関われている。極めてラッキー、いい状態と言えるでしょう。しかし改善・・・より良い状態・良い条件に(金銭的なモノだけでなく)・・・は常に狙っています。欲を言えばもう少し地域性が欲しいですね。こちらにも。
しかし自分が本屋でいることで自信も持てるし、地域ともかかわれる。人とのつながりも増えるし愉しいことも増える。もちろん仕事も増える。
(この後収入も増えるとドドーンと書けるようになるのが今後の一番の課題ですね。でもまぁ、そうせずにいたい、仕事であってもビジネスにはしたくないという思いも同じくらいあるのですけれど。)
ここまでたどり着くのに自分でも驚くほど多くの時間を費やして・・・興味のある方は是非マガジン「coldmountainstudyができるまで」をご覧ください。
たまたま続けて読んだ2冊はたまたま自分とcoldmountainstudyの現在・過去・未来を考えるになかなかいい2冊で、その2冊には結構な共通するなにかがあり、続けて読んだことが大変良いなにかをもたらしてくれそうな感じで・・・。
真夏というのに雨、降り止みませんね。
だからという訳ではないですが2冊読んで、2冊分。
何時もより多く書いてしまいました。
みなさま、どうかご無事で。
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