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「ほんとうのリーダーのみつけかた」

梨木香歩 「ほんとうのリーダーのみつけかた」 (岩波書店)

はじめて見かけたときからどこか気になっていた本。

何故梨木香歩が唐突にこんな本を?というのもあったと思う。

少し考えてみると自分にとって梨木香歩とはまず第一に小説・・・ではなくて「エストニア紀行」や「水辺にて」といった紀行エッセイ、”いい旅人”という印象だったりすることに思い当たる。彼女鳥が好きなのだ。それは自分にない切り口なので新鮮。

次いでああ、そういえば「西の魔女が死んだ」「冬虫夏草」などの著者である小説家さんなのであった・・・とくる。
(これはたまたま遭遇した映画版「西の魔女が死んだ」のロケ隊の態度が最悪で、そこから発する無意識なマイナスイメージも関係している。ああもったいない。双方もったいない。)

そういう人がなぜこんなエッセイを・・・とアチコチのぞいているとそうか、彼女は吉野源三郎「君たちはどう生きるか」が大好きでインスパイアされて、「僕は、そして僕たちはどう生きるか」というオマージュ作を書いている。

そしてこの「僕は、そして僕たちはどう生きるか」が文庫化された時の講演の記録を軸に作られたのが「ほんとうのリーダーのみつけかた」というわけなんですね。

さらに本屋仲間の薦めもあって、ようやく手に取ってみました。

なんだか前置きがグダグダと長くなってしまいまいしたが、結果としてこれがものすごくいい。特に今時期、こういう状況下読んでよかったな・・・と思える本です。

本を読むにいいタイミングって必ず多かれ少なかれ存在して、やはりパオロ・ジョルダーノなんかはやはり発売当初のタイミングでよかったと思うし、この本は今がよかった。自分にとっては。(さらにややこしいのですが”再読”という選択肢もあって、ジョルダーノを今読んだらどうなのかな?なんて興味も。そしていろんな選択肢に耐えうるというのは確実にいい本の条件の一つですね。)

話が逸れました。

「ほんとうのリーダーのみつけかた」というタイトルから想像もつきませんが、これ一般的によくある”リーダー論”的な本では全くないんですね。
こういう状況下ではやはり強力なリーダーを求めてしまう動きも出てくるのかもしれませんが(自分も一時期そんな考えが脳内に入ってきて、やはり少しバランスが崩れてるな・・・という感じでした)この本はそのリーダーをどこに見出すべきか、どんな態度で接するべきか・・・という内容。

途中何度も”同調圧力”というキーワードが脳裏をよぎりますが梨木女史が本書の内容を意識し始めたのは今よりはるか前、2007年の教育基本法改正により妙に愛国心が強調されだした頃の事だそうですよ。そう、”同調圧力”って今産まれたものじゃない・・・振り返ればあれも、これも。

生きづらい世の中で自分を見失わないためのリーダーはどこに?

カンのいい方ならすぐに気付いてしまうかもしれませんね。

わからくたってもちろんいい。恥ずかしいことなんてひとつもない。

そんな”悩める人””考える人”への優しい言葉がつづられているのが、本書です。

何となく不安な、多くの仲間に読んでもらえるといいな。

そうそう本書、70ページ程度と大したボリュームのある本ではありません。もちろんあれこれ考えながら読むとページ数を感じさせないボリュームですけど。

抵抗のない方はkindleなど電子書籍で読んでみるのもいいのかもしれませんね。

(自分、紙の本屋ですが決して電子否定派ではありません。kindleのアプリ入れてます。ただ、やはりあまり使わないのだけれど・・・。)

カタチはどうあれ、読んで欲しい。

そんなわけです。



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