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寒山の書斎から。2022.10.~coldmountainstudy的今月のピックアップ。

今月のピックアップは、少な目6冊。新旧取り混ぜて。

文庫は、唯一継続して読み続けている故・ヘニング・マンケルの最新訳。

H・マンケル 「イタリアン・シューズ」 (創元推理文庫)

恋人との人生で一番美しい約束を
果たすため、男は旅に出る
〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉の著者、
北欧ミステリの帝王が描く、
孤独な男の贖罪と再生、そして希望の物語

ひとり小島に住む元医師フレドリックのもとに、37年前に捨てた恋人がやってきた。不治の病に冒された彼女は、白夜の空の下、森に広がる美しい湖に連れていくという約束を果たすよう求めに来たのだ。願いをかなえるべく、フレドリックは島をあとにする。だが、その旅が彼の人生を思いがけない方向へと導く。〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉の著者が描く、孤独な男の再生と希望の物語。

惰性で同じ作家のミステリを読み続けるのはやめよう・・・と決めて、実行しているのですが既に亡くなっているマンケルは別です。これからの季節、マンケルの湿っぽさ・重たさは歓迎ですね。

続いては新書旧作。

内田樹・岩田健太郎 「リスクを生きる」 (朝日新書)


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競わず、裁かず、虐げず。
いじめも査定主義もそろそろ終わりにしませんか?
パンデミックが可視化したリスク社会を生きるすべ、
不条理な現実を立体視する実践知がここに!
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ウイルスがほんとうは何ものであり、
どういうふるまいをするのか「わからない」。
それでも、経験的にわかること、実践的にできることはある。
あれば、それをする。――内田樹

コ○ナ禍のようなことが突然起こる不条理な世界で生きていくには、
粘り強さというか、殴られてもめげずに立ち上がる根性のような、
ある種のハードボイルドな生き方が必要だ。――岩田健太郎
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◎目次より
【第1章】感染症が衝く社会の急所
●「わかっている」人ほどわかっていない感染症
●勝者が総取りする「東京的なゲーム」
●空洞化する高等教育のゆくえ
●反知性主義のバックラッシュ
●イエスマンを見分けるブルシット・ジョブ
●語られない東京オリンピック etc.

【第2章】査定といじめの相似構造
●孤独が蔓延る競争社会
●人を意地悪にする査定的な眼差し
●チームのパフォーマンスを上げるには
●日本の学力を下げた教育の市場化
●いじめにGOサインを出す教師
●管理業務を最小化せよ etc.

【第3章】不条理を生きる
●ダイヤモンド・プリンセス号動画配信で果たせた役割
●情報を商品扱いするメディア
●サイエンティフィック・マインドが欠けた学び
●非専門家だからこそできること
●この世は不条理なものである
●ハードボイルドという寛容さ
●スキームを切り替えながら生きる etc.
もっと少なく読む

この二人の対談は以前もあったと思うのですが、やはりこういうテーマだとある程度”新鮮さ”が大事(それでも1年たってるんですけど)と、手に取りました。

次も新書。

三木那由他 「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション」 (光文社新書)


◎内容

私たちは会話を通じて何を伝え、何を企んでいるのか。
あるいは相手の心理や行動にどんな影響を及ぼそうとしているのか。
気鋭の言語哲学者が、『ONE PIECE』や『鋼の錬金術師』などの人気の
フィクション作品を題材に、「会話」という営みを徹底分析!
コミュニケーションとマニピュレーションという二つの観点から、
会話という行為の魅力と、その中身をわかりやすく解き明かす。

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◎目次

はじめに

第一章 コミュニケーションとマニピュレーション

第二章 わかり切ったことをそれでも言う

第三章 間違っているとわかっていても

第四章 伝わらないからこそ言えること

第五章 すれ違うコミュニケーション

第六章 本心を潜ませる

第七章 操るための言葉

おわりに

本書で取り上げた作品

一応発売時にもチェックしていたのですが購入を見送った本です。
が、その後聞こえてくる評判が結構気になるものが多くて。
言葉、会話。
外せませんからね。

続いては個人的には定番。

青木真平・海青子 「山學ノオト3 二〇二一」 (エイチアンドエスカンパニー)

「なんだか僕は「言葉にできること」しか言葉にしていない気がしている。」
奈良県東吉野村。人口一七〇〇人の村の山あいに佇む一軒家、人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」。自宅を開放して図書館を運営する夫婦が、仕事に、生活に、山村と街を、あるいは彼岸と此岸を往復しながら綴った日記に、エッセイや草稿「研究ノオト」を収録した、日記帳。資本主義と権力、人権や経済、そして自身の体調のこと。自粛やオンライン会議が日常化していく中で考えた、二〇二一年の記録。

同じく山奥で、ウチは本屋兼ですが同じく図書館をひらくものとして欠かさず読んでいるシリーズ第三弾。海青子さん単独の著作を夏に読んだのですごく頻繁に彼らの世界に触れている感じ。悪くない。


久住昌之 「勝負の店」 (光文社)

大人気ドラマ『孤独のグルメ』原作者によるエッセイ38篇。
旅先や散歩中に出会った気になる飲食店――ネットで検索はいっさいせず、入る前に店をよーく見て、想像力をたぎらせる。
決断が難しい店ほど、当たればワンアンドオンリーのおいしさと、ドラマがある。
これぞリアル『孤独のグルメ』!
挿絵は、「泉昌之」名義で著者と長年タッグを組む和泉晴紀氏が担当。

何時もの場所じゃない、未知の店で食事をする。

してみるとこれもまた”小さな旅”ですよね。誰でも、どこでも愉しめる。

そうそう、首都圏では「孤独のグルメ」最新シリーズがもう始まっているんですよね。唯一愉しみに待っているTVドラマ(?)です。

信州では2~3週遅れの放映でしょうか。

あまり観なくなってしまったTVの画面でも、小さな旅を愉しもうと思います。

最後はこれも、”本屋の本”です。

辻山良雄 「小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常」 (幻冬舎)

まともに思えることだけやればよい。
荻窪の書店店主が考えた、よく働き、よく生きること。
効率、拡大、利便性…いまだ“高速回転"する世界に響く抵抗宣言エッセイ。


“本に携わる人間にとり、
「命の洗濯」とはこのような本を読むことかもしれない。
「そうあってほしい世界へと手を伸ばす、
ものいわぬ意志」を感じさせる本"
―――ブレイディみかこ(ライター)

“この世でもっともユニークな場が、
町でいちばんの「あたりまえ」の本屋さんでもある。
毎朝シャッターをあけるたび、
辻山さんはそんな奇跡に立ちあっている"
―――いしいしんじ(作家)


<目次>
本のこと、店のこと
本屋は動的平衡/福の神/旗を立てる/ブックスキューブリック/後からのまなざし/小さな自由/Oさんの野球帽/「ここにある本はわからない」/覆水盆に返らず/ずっと、店にいる/添えられた手/本を運ぶ労働者たち/傍観者ではいられない/〈貧しさ〉について/シンボルスカと良心、小商い/何も知らなかった/「おじさん」の背中/声にふれる/本という共通語/穴あきの平積み

通り過ぎたものたち
偶然をむすぶ町/二人の職人/いま読みたい本を買うのではない/閖上の夜/母の「労働」/農夫の手/街の避難所/記憶の店、遠い街/高田馬場の喫茶店/小さなシステム/虹の彼方に/朝のショベルカー/父と「少年ジャンプ」/夜が明ける/わたしにはなにもないから/途方にくれる大人/給水タンクの午後/ある夢にまつわる話/Hの微笑み

コ○ナ禍の書店
二〇二〇年、三月/いま身にしみること/それもまた一日/店を続ける力/誰かといること/再開のとき/歩きながら考える/伝えきれなかったこと/ドラえもんの辞書/それは「たまたま」でしかない/取り残された<体>/来る日も来る日も また次の日も/荒波を進む船/その人に棲む少年/分けることば、癒すことば/自分に合った服/キリンの松/わたしはもう戻らない

どれもおなじで、どれもが違うのが本屋の店主さんのエッセイですね。これは先日訪れた新刊書店でチョロっとのぞいてみたら、たまらなくほしくなってしまった荻窪Titleの辻山さんのエッセイ。

正直、幻冬舎の新刊ってチェックしないんです。角川もかな。

”望みでない”本が多すぎてチェックしていると疲れてしまうんですね。だから結構良作が漏れている。沢木耕太郎なんかもそうでしたね。

そうそう。

来月のピックアップでは唯一確実に・・・沢木耕太郎の最新作を取り上げることになります。

沢木さんの、しかも旅モノ。言うまでもなく「深夜特急」以来沢木さんの旅モノは特別な意味を持っています。

これから寒い高原の冬。

薪の火にあたって読む最高の友。

こんな友がいれば、冬もむしろ愉しみですね。



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coldmountainstudy  店主:鳥越将路

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