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「ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。」

幡野広志 「ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。」 (ポプラ社)

ガンの闘病記を一冊読んでみたい、とずっと思っていた。

目をつけていたのは、これ。

ガンの闘病記・・・と言ってもそれこそ幅広く、誰のものでもいい・・・というワケでは絶対にないので、好きな作家さんのそれを・・・と思っていた。刑事ヴァランダー・シリーズの書き手のエッセイは(たとえテーマが何でも)つまらないわけがないと。

でもなんとなく。

価格の事もあるし、そのうち文庫化されるんじゃないか・・・なんて甘えもあって。

手が出ずにいた間に聞こえてきたのが幡野さんに対する好評価。

noteも書かれています。

なんとなく直感で、この本にしてみようと。

そもそも。

なぜに闘病記を読もうなんて気になるかというと・・・私的な話なのですが自分の両親は二人とも既に他界。
片方は、ガンで亡くなっています。
しかも二人とも比較的”若い”とされる年齢で亡くなっていますので、自分もそうなのかな?なんて何となく思いながら生きているわけです。

そして自分にも家族がいますので、そんな時・それまでをどんな態度で迎えればいいのかな?なんてことはやはり考えてしまうんですね。

もちろん自分がそんな辛い状況になって、思っていた通りの自分でいられる自信なんて全くありません。

でもやはり考えたことがあるのとないのでは全く違う、これもまた本当だと思うんです。

そんなことをぼんやり思いつつ・・・選んだのがこの本で、結果よかったです。

あまり”ネタバレ”にならないように書きたいとは思っているのですが、ガン含め自分が”そういう状況”になった場合の多くの場面をこの本は提示してきます。

医療。

親。

配偶者。

子供。

家族の定義。

”善意の”周囲の声。

それらの要素がもたらす可能性を体験取材も含め提示しつつ、結局は何が大事かと呼びかけてくる。

自分にとっては腑に落ちる考え方でした。

これを単に悲劇の主人公譚、と見たくないですね。自分はここから学べるな、と感じています。

配偶者に、息子(自分の場合)に。

理想的な態度で接することができているか?といえば全然そんなことないでしょう。今の自分。

でも。

最低限こうしたいな、こうありたいな、を思うことは出来ました。

特に自分が苦手な“押し付けがましい正義の味方”にならないよう、近づかぬよう。

考えたことがある。

これがあるとないとではやはり大きく違うと思いたいのです。

だから本を読む。

自分にとってはいい一冊でした。

もちろんマンケルも読もうと思っています。


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