マガジンのカバー画像

TomoPoetryー友野雅志の詩

150
日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

新しく、そして最後の朝。

新しく、そして最後の朝。

その朝 愛するひとの死が どこにでもあることを シーツに感じる どこまでも沈むあたたかさに きみの死も 朝のレモンティーのかおり 死という生花を かこむテーブルで すいこむ香りは 生き生きとして 眠りがひとつの扉をくぐるように 目覚めはまた別の扉をくぐるように 黄色のテーブルクロスに 投げられた手を きみは手のひらで あたためる 生きるとは 突然で疑問だらけ

もっとみる
あたらしく生まれるのは

あたらしく生まれるのは

生まれたのは 泡の岩礁 シャンプーのような 青いサボテン ワイングラスの少女 豚の陶器や あふれている臓器 からからガラスが 風に鳴る あれは 捨てた童話の頁から吹いてくる冬の風 頬を濡らすのは 時が湿っているから ひとびとは立ちつくす 凍ったまま 次の一歩をおろせない 白い手の波 跳ねる白と黒の鍵盤 遠い国の墓地 額縁に名前はない かさかさと 過

もっとみる
きみの空のいのち

きみの空のいのち

走りはじめた 時代のかたむきで ひとの魂は氷っている 切り傷の ふかさの歎き しずけさの かたさの視線 氷の星が 回転するのにあわせて 青い肉体が くだける 垂直に立っているのは ひとではない ひとは 斜めの罅にそって 与えられた役割りと 絶望を 軋ませる 眠りのなか あるいは 死の意味のなか 貫いていく沈黙 それがわたしたちにとって 垂直

もっとみる
きみのあしあと

きみのあしあと

時間がきえ わたしの眼は 命そのものをみる きみや祖先の 魂が カラフルな蕾から あふれたり 種子になる わずかの時間 歩むことができない ひとがひとでなくなる あるいは ひとがひとになる 風の音 決して消えることのない 神の声 そこでわたしは 立ち止まる 背後には 生まれるものも 死ぬものもいない 赤子のかおり 死者のかおり あたらしい星の香

もっとみる
輪になるもの

輪になるもの

まるくなった口を 舐める 星座図から 正しい球体を 集める 純白の破れそうに やわらかい星を 口にふくみ ころがし きみをつくる 一日だけの宇宙 そして充実 夜に歯ぎしりする 破れ水浸しになって きみもわたしも 泣く 宇宙の端と端 ひとり正座して 足先から 白くまるくなる だれかの舌で 転がされて まもなく 真珠となり 輪になる

もっとみる
背負う

背負う

きみは背負う遠くで低くつづく嗚咽それに続く静寂その生まれて去っていく 一瞬の重さ 突然止まるトラックの荷台のようにまがりかどからさきは音のない青い風が吹いている 思いだすだろうかきみの背の声のうまれるところを 闇がさらさらながれるその時間を頬で受け 呼吸のようにこぼしていく 今朝もまだ暗いなかでその重さが生きているきみの生を

まだ明るさのなか

まだ明るさのなか

「明るさは滅びの姿であろうか、人も家も、暗いうちはまだ滅亡せぬ。」 太宰治『 右大臣実朝』 笑ってはいけない 夜明け前に まだ薄暗いこの世 そこにいるのだから 明るさは すでに過ぎ去った あるいは まもなく再び戸口から入ってくる そうだろうか おびただしい快楽と おびただしい河岸の死と 地下鉄でくぐる 不安の 動悸

もっとみる
目覚め

目覚め

ある朝 わたしはすべてを失った あるいは すべてを見つけた わたしの息のなかに かれは はるか昔に死んだ 明け方 彼は口笛を吹いて わたしに語り続けた 世界のあたたかい日差し 凍ったままの赤い蕾 死んだまま 生きている不思議 わたしは 彼の口笛が ひびく宇宙に浮いている ねえ きみ 語りかけた時 わたしは誰もいない世界にいる 青い河岸で 星に向かっ

もっとみる