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きみの空のいのち

走りはじめた 時代のかたむきで ひとの魂は氷っている 切り傷の ふかさの歎き しずけさの かたさの視線 氷の星が 回転するのにあわせて 青い肉体が くだける 垂直に立っているのは ひとではない ひとは 斜めの罅にそって 与えられた役割りと 絶望を 軋ませる 眠りのなか あるいは 死の意味のなか 貫いていく沈黙 それがわたしたちにとって 垂直に立つものだ それに触れるために 死者の わずかな傾きに その名が 一本の線である 空の振動に わたしたちは 生を重ねる 生は 徐々に傾き 地と同じ平面で 過去の夜と未来の朝に 染まり 希望をまちながら凍る いくつかの夜の世紀のあと 空が割れて いのちが滴り あたらしい人が 立ちあがり 歩きはじめる 少し傾いて 凍った生は 立つ 丸みやくぼみに あたたかさを隠して ときに あたたかい息で きみの空をしめらす

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