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ソーシャルワーカーが開催するカンファレンスは内容よりも「医師の参加」が成功のカギ

  • 退院前カンファレンスのセッティングしんどい

  • 退院前カンファレンスを開催するほどの患者さんではないかな…

  • 忙しいから情報共有は電話で済ませよう

退院支援の際に重要なイベントとなる退院前カンファレンス(以下カンファレンス)ですが、何となく「やったほうが情報共有できるから」程度で開催しているMSWは多いです。
私は医療ソーシャルワーカー(以下MSW)として5年以上高度急性期病院の救命病棟で働いており、MSWの業務の可視化に努めてきました。
当記事では「カンファレンスはなぜ開催した方がよいのか?」について徹底解説します。
この記事を読めば、カンファレンスが重要性についての理解が進み、カンファレンスのセッティングが増えること間違いなしです。
多職種連携に悩んでいるMSWはぜひ最後まで読んでください。カンファレンスの開催によってMSWの業務負担軽減につながる方法を伝授します。

在宅の専門職がカンファレンスを開催してほしい本当の理由

ケアマネや訪問看護、施設相談員等の在宅の専門職(以下在宅)は入院前の情報提供シートに「カンファレンス開催する際は参加したい」といったような文言を残してあることが多いです。結論を先に言っておくと上記の専門職は表では「カンファレンスをしたい」という意向ですが、裏には別の目的があります。実際の目的は以下の3つです。

  • 退院後に情報共有不足で揉めたくない

  • 顔の見えたつながりを作りたい(医師に会って話をしたい)

  • クライエントに安心して退院してもらいたい

カンファレンスにおいて最重要なのは「医師」の出席

カンファレンスには医師を必ず同席させます。医師が同席しなくてもカンファレンスは可能ですが、それは病院側の理由です。医師が忙しいのは百も承知ですが、ケアマネも訪問看護も介護施設の相談員も忙しい中で病院に来院されます。
病院というホームグラウンドで開催するからには「カンファレンスを病院で開催した価値」を見出す必要があります。その価値の象徴が「医師」です。

  • 医師から直接話をきくことができた

  • 退院後に向けて直接アドバイスをもらえた

  • 医師と直接会えて顔と名前が一致した

入院中以外で医師がカンファレンスに参加することは少ないため、カンファレンスに特別感を演出できます。医学的な情報共有の底上げにもつながり、在宅は医師と連携した実績が作れるため地域から感謝されます。さらに多職種が集まるほど病院は退院時共同指導料や介護支援等連携指導料、在宅は退院時共同支援加算等の算定が期待できます。

カンファレンスに医師を参加させるテクニック

カンファレンスに医師をさせることが重要だと解説しましたが、多忙な医師を参加させるのは難しいと考えるMSWは少なくないでしょう。
医師をカンファレンスに参加させるハードルが高いのであれば医師にカンファレンスを開催してもらえば良いのです。「いや、もっとハードル高いわ」との声が聞こえてくるかもしれません。確かにMSWのように一からセッティングしてもらうのは到底無理です。
医師が患者さんに対して必ず実施しなければならないICをカンファレンスに見立てて実施すれば良いのです。ICの日程に合わせてケアマネや施設相談員等を同席させれば、ICであることに変わりないですが、カンファレンスと同等の効力を発揮します。ICが行われる時点で家族の同席が確定しているため、MSWの連絡調整の負担が減り一石二鳥もしくは三鳥くらいの価値があります。カンファレンスの開催により、本来在宅との情報共有が必要であった時間を別の支援に充てることができます。

カンファレンスの開催はMSWの負担を減らす

カンファレンスの開催は一見するとセッティングに時間がかかり負担が大きくなると考えがちですが、開催した後のリターンは大きいです。MSWもカンファレンスよって多くの恩恵を得ることができます。

  • 情報提供がMSWよりも詳細に行える

  • 責任の所在が明確になる

  • 退院後の問い合わせ先がMSW以外になる

カンファレンス開催の根底は「患者さんのため」ですのでより正確な情報を共有したほうが患者さんの満足につながります。例えば褥瘡の処置に関しては、MSWよりも看護師の方が情報共有の適任者であることはいうまでもありません。「看護師」が伝えることによって詳細な情報と一緒に「説得力」を提供します。
責任の所在が明確になることも大きなメリットです。MSWが提供する医療の情報は必ず他の専門職の又聞きになるため、言葉の説得力に欠けてしまいます。先ほどの褥瘡の処置を例にすると、看護師が発信している事実を確認できるため「褥瘡のことは看護師に聞こう」となりMSWの負担が軽減されます。
MSWが受けられる恩恵は、退院後の患者さんへの問い合わせがMSW以外になることです。退院後における在宅の問い合わせは9割以上の確率で医師や看護師等医療専門職への問合せです。退院された患者さんの問い合わせは非常にストレスを感じるものです。MSWとしてソーシャルワークをした内容は把握していますが、病状や処置に関してはMSWよりも適任者がいます。病院の専門職がカンファレンスに参加したことで在宅はより正確な問い合わせができるようになります。

まとめ カンファレンスの開催は病院による最大限のおもてなし

  • 病院と在宅が連携をを図る

  • 患者さんとその家族の安心してもらう

  • 多職種での情報共有

カンファレンスを開催する意義は?と瞬時に問われたらパッと思いつくのは上記3つのようなイメージだと思います。改めて文字に起こしてみると分かりますが、既に病院の専門職であれば、意識して臨床に励んでいることばかりです。
カンファレンスの開催は「病院から在宅に向けたおもてなし」と捉えて良いでしょう。カンファレンス=エンターテイメントと解釈し、在宅に向けたパフォーマンスとして開催することで、在宅は医師が参加した「特別感」多職種連携が行えた「優越感」万全な状況で退院後の患者さんを迎えられる「安心感」を満たすことにつながります。
カンファレンスを開催しなくても患者さんは退院できますが、カンファレンスというエンターテイメントを提供することにより「こんなケアをしていたんだ」「ちゃんと支援してくれていたんだ」「病院も頑張ってたんだ」という感情を情報共有とセットで提供することにより在宅の満足度は大きく上昇します。

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