かつての詩138「手放した傘」

「手放した傘」

都会の喧騒では小波が聴こえないから
とあなたが今にも言いそうだったから
電車をいくつも伝って海を目指した

今年の夏は異常な暑さだと
メディアに連日取り上げられて
今度の台風は十数年に一度の規模だとか
ニュースで毎回取り上げられて
今どうしたいのか
今どうすべきなのか
繰り返す子守唄に
どうにもこうにも目も覚められず

辿り着いた海辺は閑散の秋
来年の夏はきっと涼しいだろうね
曇り空にからめられた生臭い潮風に
あなたの手放した傘は
砂浜でふわりと宙を舞った
そんな話


MASANAO KATA©️ 2018
Anywhere Zero Publication©️ 2023

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?