かつての詩47「文学ラグナロク 序」

「文学ラグナロク 序」


文学が死んだ
なんて数字の上の話だろ? 
生かすも殺すもそれを利用している市場の理屈があくまであって
悪魔が棲んでる伏魔殿の魔窟なんてあざとい奸計で成り立っている
熟成出来ない積み重ねたクソみたいな塾生程度のエンターテイメント
出版不況で本が売れなくて
不協和音が鳴り響き
布教活動は仏頂面さ
誰がこいつのケツを拭く? 

書く奴がいなくたって読む奴がいる限り
一度生まれたものはそう簡単には死にはしない
言葉が生まれて何年? 
文学が生まれて何年が経っている? 
源氏物語の初出から一〇〇九年目
紫式部は地獄に堕ちたが
死ぬなんてそう簡単にたどり着ける到地じゃないのは頓知じゃないさ
風邪引いて寝込んでもみな
全力で生まれたもんだから全力出さなきゃ死ねないもんよ

心の詩が聴こえる? 
心臓の鼓動を一晩中聴き分けてから言うんだな
深い深い水の底で命の声を聞き分ける
ってのが文学なんだから
安易な女々しさで命の重さなんて語るんじゃない
心臓の重さなら平均三百グラム
右心房 左心房 張子房 調子に乗るなよ天一坊
策略説いて倫理を凛々と語りたいなら
フギンとムニンを従えて
その言葉に責任が取れてからの話だぜ
心を研ぎ澄ませよ

書き手も読み手も本気を出せよ
呑気な娯楽なら酔態晒して衰退してって
流れ木みたいに大海を漂ってるはずだろ
それでも禁煙初期の吸いたい吸いたいと本を手に取るような行為こそ
文学への愛ってものさ
きみの覚悟を見せてごらん

書かずにいられないから書く
読まずにいられないから読む
それ以上の理屈がこの世界には必要だろうか
うっすらライムの香りを匂わせているつもりなのに
俺の詩集の売上は百冊なんて夢の夢
つれない読者は毒蛇にもならないし
芥川の『詩集』のようにやがては林檎畠の紙袋
紙だろうが電子だろうが
遺伝子だろうが神だろうが
生き様がひとつそこにあって
それが言葉にさえ成れば
そのエフェクトが文学だった

文から学ぶこその文学
つまりは手紙
あなたへのメッセージだ
満足に投影も出来ない手紙は届けないで欲しいもんだ
食えない奴の食えないものに
屈託しなけりゃ食ってくだけの金を払う価値があるのか
他人の知性を血肉にしたいなら
芸術には身銭を切らなきゃ罪深い
それが敬意であって投資であって
生きる上での闘志です
同志と共に闘志があれば凍死はしないと年甲斐もなく言ってみよう
そこから商売人と市場を回せば
至上の文化は延々エンターテイメント

文学を追え
言葉は進化する
風の音を聴け
空想は深化する
頁を捲って行け
誰も読んだことのないフロウをペン先から繰り出すんだ
不老長寿のロングセラーを繰り出そうぜ
あ、不老長寿は有り得ない
刻んだ時間は刻まれたまま
フロウはラップの歌い回し方だから
文学には不老はないが不死はある

シェイクスピアにもならない現実の筋書は
きっと「文学は死ななかった」と結局誰かがうそぶいて
ラグナロクは目も当てられない茶番劇で幕を引く
と揉めないようにメモしよう



Masanao Kata©️ 2017
Anywhere Zero Publication©️ 2017
電子詩集『文学ラグナロク』
https://bccks.jp/bcck/152170/info

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