ヴォクス・マキナの伝説をTRPG側から解説してみた Season3 Week1(第1~3話)
序文
お久しぶりです。いかがお過ごしでしょうか、マイケルです。
まず初見の方へ:
この記事は「ヴォクス・マキナの伝説をTRPG側から解説してみた」(シーズン1、2編)の続きです。シーズン1-2の内容に加え、原作となるTRPG配信シリーズ『Critical Role』についても紹介しているため、まだの場合はこちらから順に読むことをお勧めします。
Season 2の公開以来、国内での『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を取り巻く環境が変わり始めました。
映画『アウトローたちの誇り』、コンピューターゲーム『バルダーズ・ゲート3』の2つが現れ、D&Dというシステムにとっての「顔」として、新たな風を吹き込んでくれました。
私自身、この2つの解説記事で私史上最高のページビューとスキ!数を叩き出した上、『アウトローたちの誇り』解説はnote運営のまとめ記事にも掲載され、読んでくださった皆さんに感謝するばかりです。
映画記事のTwitter.comでの鳴りやまない通知の量を見た時、嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。
映画やゲームから入ってきて、ヴォクス・マキナの伝説の過去2シーズンをご覧になられた方は少なからずいらっしゃるでしょう。そういう皆さんのためにも、シーズン3、張り切っていきましょう!
概要に関して
シーズン2と同じくクロマ・コンクラーベ編のため割愛します。
主要設定
第2話~:地獄
D&Dの宇宙観において、地獄とはダンテ・アリギエーリの『神曲』地獄編のように、九つの層をなし、九層地獄(The Nine Hells)とも呼ばれます。
『バルダーズ・ゲート3』を遊ばれた皆さんであれば、作中に登場する「アヴェルヌス」とはその第1層になります。
ですが、一行がヴェスティッジのひとつ「夜明けの殉教者の鎧」を求めて向かう「ディスの街」は第2層。さらに深い領域ということになります。
D&Dの設定ではテレポートするには先に第1層のアヴェルヌスを通る必要がありますが、第3話では直接ディスに到着しています。直接門が繋がっているためでしょうか?
下の記事でも少し解説していますのでこちらもどうぞ。
個別解説:第1話
〈隠密〉と〈知覚〉(ヴァクスvsヴォルガル)
重要なアイテムなどはあらかたシーズン2で説明したと思うので、D&Dのシステムに関するネタも軽く紹介しましょう。
敵陣に忍び込み、敵幹部の会話を盗み聞く。こんな手に汗握るシーンでは「技能判定」を行います。
20面ダイスを振り(D&Dではダメージや回復以外は基本的に20面ダイスで判定します)、そこに能力値と行為への自身の専門性を表す「習熟ボーナス」の有無で結果が増減します。
そしてその行為の分野を表す「技能」は、この場合隠れる側は〈隠密〉、探す側は〈知覚〉を使用します。
ルールブック通りの能力値なら、ホワイト・ドラゴンは超高齢の個体なら〈知覚〉判定のボーナスは+13、ヴァクス級のローグ相手なら〈隠密〉で+15といった所。やはり古竜相手、伝説的なローグですら油断なりません。
マイナー・イリュージョン or メジャー・イメージ(ライシャン)
ライシャンが新たなヴェスティッジ「夜明けの殉教者の鎧」の情報を提供する際に、魔法で作り出した幻像。これはシーズン1でスキャンランが使用したマイナー・イリュージョンやメジャー・イメージのような、比較的低レベルの呪文と思われる。
コマ送りのような映像から、マイナー・イリュージョンの映像に追加のマイナー・イリュージョンやプレスティディジテイションのような音声を生み出す呪文を加えたという事も考えられる。
低レベルゆえか、ケイレスは「あんな映像、誰でも作り出せる」とは言うが、エクサンドリアは魔法の修得者が比較的多い世界観なのでしょうか?
首から火炎噴射?(ソーダク)
グロッグがソーダクの首から火炎噴射を受けて吹き飛ばされますが、これはただの絵面的な演出だと思います。ソウル・アンカーを取り込んだ影響なのでしょうか?
テレポート(ライシャン)
ヴォクス・マキナ一行を逃がすため、ライシャンが緑の煙に包んでテレポートさせます。
シーズン2第1話でギルモアのアイテムとして登場していたテレポートの呪文なのでしょう。
プレイン・シフト(シーズン2第6話参照)同様に複数人をまとめて移動させられますが、手掛かりとなる物体や永続のテレポーテーション・サークル(シーズン3第3話参照)がなければ失敗して別の場所に出てしまう可能性があります。
ライシャンは毒霧を吐くグリーン・ドラゴンなので、霧のエフェクトを伴っているのでしょう。これまで何度か触れていますが、使用者による演出の違いもヴォクス・マキナの伝説の面白い所ですね。
コントロール・フレイムズ(ケイレス)
火炎ブレスを受けのたうち回るライシャンを、何か覚悟ができたと言わんばかりに鎮火するケイレス。
『ザナサーの百科全書』収録のコントロール・フレイムズの呪文、あるいは他の何らかの風関係の呪文でしょうか。
過去のエピソードで名前の挙がったコントロール・ウィンズ、コントロール・ウォーター同様の四大元素関係の初級呪文の一つで、燃料のある場所に火を点ける、火を消す、火の大きさを変えるといった効果を1つの呪文でまかなうことができます。
カバルの破滅(アナ・リプリー)
夜明けの殉教者の鎧を持ってアンクハレルの町を逃走する盗人。内側に星空の輝くマントの力か、銃でいくら撃っても当たりません。さらに呪文を吸収し反射、短距離のテレポートなど、強力な効果を持っています。
第2話で説明された通り、もう一つのヴェスティッジ「カバルの破滅」なのですが、呪文の反射以外は原典Critical Roleではなかった能力のようです。
シーズン3が終わる頃にまた別の記事で紹介できればと思います。
個別解説:第2話
変装の扇/ディスガイズ・セルフ(ギルモア)
衛兵の気をそらすため、魔法の扇で衛兵に変装するギルモア。
ディスガイズ・セルフの呪文の効果を持つ魔法のアイテムのようです。
低レベルの呪文で、自分が他の人型生物に見える幻を作り出します。ただし幻なので、物理的な接触に弱いのは他の幻術と同様です。
なお、ギルモアの魔法の扱いに関してはシーズン2第1話のテレポートの項で紹介した通りです。
魔法のアイテムの数々(衛兵)
アンクハレルの衛兵が標準装備している、電撃をまとう武器や魔法を寄せ付けない鎧など、アイテムの数々。
これらに関しては皆目見当もつきませんでした。一応考察は置いておきます。
武器は火や電撃を纏う武器というものはまあありがちなので特定しづらい。電撃は呪文を発動する能力があるのでしょうか?
鎧はケイレスのエンタングル(Season1 第11話参照)の脱出を助けているので、クローク・オヴ・プロテクションのようにセーヴィング・スロー(抵抗判定)にボーナスを与えるアイテム?
拘束具はアイアン・バンズ・オヴ・ビラーロ―球状にまとまった鉄の帯が展開して相手を拘束するアイテム―が類似していますが、帯がエネルギー体です。機能上は同一のアイテムなので、ガワを変えただけと考えるのが妥当でしょうか。
モンスター:スードゥドラゴン
アンクハレルの主、ジモン・サ・オードが連れている白い小さなドラゴン。
ヴェクスの感覚が反応していた相手は、領主のペットでした。
これはD&D原典のモンスター・スードゥドラゴンに相当するものなのでしょう。
人懐っこく大人しい性格で、簡単なテレパシーを使うこともでき、魔法使いなどのペットとして人気があります。
個別解説:第3話
モンスター:ブラッドハウンド…?
ライシャンが引き合いに出した「ブラッドハウンド」とは…
どこかファンタジーっぽい響きですが、D&DやCritical Roleの設定上にはなく、調べたところ我々の世界に存在する犬が出てきました。
とはいえ、「血の猟犬」の名を関するモンスターが存在していてもおかしくはないのですが…。
テレポーテーション・サークル(アルーラ)
ドラコニアへ向かうための手段を、魔術師アルーラが手配してくれました。
日本語吹き替えでは「テレポート・サークル」とありますが、となればテレポーテーション・サークルの呪文でしょう。
シーズン2第1話でライシャンが見せたテレポートの呪文と異なり、テレポーテーション・サークルの呪文は儀式で設置されたテレポート先用の魔法陣にのみ飛ぶことができます。
また、この呪文を同じ場所で365日連続でかけつづけることで、永続の魔法陣を設置することもできます。
一行が飛んだ先のサークルは街外れの崖の上にありましたが、こんな所に誰が365日間連続で呪文をかけつづけたのでしょうか?
NPC:キーマ / 種族:ハーフリング
本名:ヴォードのキーマ / Kima of Vord
ドラコニアでヴォクス・マキナに同行する、アルーラのかつての旅仲間の一人です。
種族:ハーフリング
種族はハーフリング。D&Dではノーム・ドワーフと並ぶ小人種族の一つで、長らく基本のクラスとして登場しています。
正直な話『指輪物語』ほかに出てくるホビットのパチモンですが、D&D独自の個性が追加されていったとかなんとか…?(筆者はどの辺りに新設定があるかに関しては詳しくないのでなんとも…)
クラス:パラディン
クラスはパラディン。これはシーズン2の#4で紹介しています。
ベルトのドラゴンの頭の紋章など、彼女はバハムート(シーズン2 #1「ヴァッセルハイムとプラチナ神殿」参照)に誓いを立てているようです。
NPC:ドーラ / 種族:ドラゴンボーン
本名:ドーラ・ロリアン / Dohla Lorian
ドラコニアでヴォクス・マキナに同行する、もう一人のアルーラのかつての旅仲間の一人です。
種族:ドラゴンボーン
いわゆる竜人種です。スカイリムのアレではない。
ドラゴンに祖先を持つ人型種族で、過去の記事でも紹介した色彩竜や金属竜の特性を受け継いでいます。
ドーラはソーダクのようなレッド・ドラゴンの血を引いていますが、それでも善なる冒険者でした。というように、祖先となるドラゴンの血は本人の性格には影響はありません。
D&D本編では尻尾がない方が珍しいなどとされることもありますが、エクサンドリアの世界では尻尾がある種と尻尾のない種があるそうです。
クラス:不明
何らかの呪文を使うクラスのようですが、詳しい情報はわかりませんでした。使用する呪文の傾向や外見からウィザードかソーサラーのように見えますが…。
NPC:アルーラ / クラス:ウィザード
本名:アルーラ・ヴァイソーレン / Allura Vysoren
エモンの宮廷魔術師、そしてパーシーが留守の間ホワイトストーンを任されていたアルーラ。長らく登場していましたが、少し説明したいことがあったのでここで紹介させていただきます。
種族:ヒューマン
散々登場しているので説明することはありません。
クラス:ウィザード(防御術)
アルーラはクラスで言えばウィザードに相当するキャラクターです。
D&Dには呪文を扱うクラスこそ数多いですが、ウィザードは学問として魔法を扱います。
ウィザードは、自らの呪文書に研究成果として呪文の使い方をしたため、幅広い種類の呪文を扱うことができますが、彼女も彼女なりの呪文書をどこかに持っているのでしょうか。
アルーラ一行の登場で他の呪文を扱うクラスも多数登場したので、ここで比較してみましょう。
ウィザード(アルーラ):学んだ知識、研究成果
ソーサラー(ギルモア):自らの才能、異能
ウォーロック(ザーラ):外部の大いなる存在との契約
クレリック(パイク):神や概念への信仰
パラディン(キーマ):自ら立てた誓い
ドルイド(ケイレス):自然との繋がり
レンジャー(ヴェクス):自然との繋がりやサバイバル技術の延長線上
そして、ウィザードのサブクラスは多くが魔術の分野を表しており、アルーラは「防御術」の専門です。これまでにも登場した物理的なバリアに加え、解呪や魔法対策も防御術に含まれます。
光の拘束?(アルーラ)
かつての仲間を裏切るドーラの前に、アルーラが最初に放ったのはドーラを拘束し振り回す光の鞭。
拘束の呪文こそいくつかありますが、それらしい呪文は見つかりませんでした。
先代の冒険者相当としてある程度プレイヤーキャラクターに寄った存在ではあるのですが…。
続いてドーラに押し出すようなエネルギー波を発射していますが、これも特定しきれません。
ミスティ・ステップ?(アルーラ)
飛び込んでくるドーラを間一髪で避けるアルーラ。
魔法のような光を纏っていましたが、ミスティ・ステップの呪文でしょうか?
9m程の短距離を瞬間移動できる呪文です。元は比較的低レベルですが、レベルが上がって低レベル呪文が使いやすくなると頻発したくなりますね。
シールド・オヴ・フェイス?(キーマ)
ドーラ、アルーラ、キーマ三者の戦いの中で次々と繰り出される攻撃。
その一つにドーラの炎を防ぐ光の盾があります。
これもパイクのようなシールド・オヴ・フェイスなのでしょうか?
光の波?(キーマ)
ドーラ、アルーラ、キーマ三者の戦いの中で次々と繰り出される攻撃。
キーマは光の波を起こして攻撃します。
軽めに使え対象の狭い呪文ということで神聖なる一撃かガイディング・ボルトの呪文のようですが、特定しきれません。
シールド乗り(アルーラ)
ヴォルガルから逃げるため、パーシーがアルーラにシールドをソリのように使うことを提案します。
D&Dのルールでは各種バリア系の呪文は物理的な物体として動かせるような記述は見当たりませんが、こういった機転こそTRPGの華だと私は考えています。
地形破壊?(ドーラ)
アルーラたちを追い詰めるため、地形を破壊し雪崩を起こすドーラ。
これほど大きな地形を破壊できるとなると文字通り地震を起こすアースクエイク、地面を操るムーヴ・アース、岩を泥に変化させるトランスミュート・ロック辺りでしょうか?
いずれもレベルは高めですが、アルーラのレベルが原典Critical Roleでは15~16と推定されているため、やはり他の仲間たちのレベルも相当高いのでしょう。
ディメンジョン・ドア(ドーラ)
ついに追い詰められたアルーラ達。ヴォルガルの隣に火の中からドーラが現れます。
先程紹介したミスティ・ステップのような単体テレポート呪文に見えますが、Season 2 第5話でアルーラも使用したディメンジョン・ドアの呪文にも見えます。
まだまだ続く
ヴァクスら捜索隊が地獄へと降りていくところで今週はここまで。
久しぶりで私自身勝手を忘れている節もありますが、また12話(?)続けていきましょう。
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