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ひむか神話街道 ~ 高千穂町を訪ねて

「ひむか神話街道」シリーズ第3回は、皇祖発祥の地と伝えられる高千穂町(たかちほちょう)をご紹介します。

以前、天の逆鉾がある天孫降臨の地・高千穂峰のお話をしましたが、高千穂町は、こちらとはまた別の場所になります。

高千穂町は、九州の真ん中、宮崎県の最北端に位置し、阿蘇山の火山活動で噴出した火砕流を五ヶ瀬川が侵食して作られた高千穂峡や、「岩戸隠れ」などの日本神話にまつわる名所が散在する観光スポットです。

高千穂町の場所
(Created by ISSA)

「高千穂」の名の由来
「高千穂」という言葉は、天照大御神の孫である瓊瓊杵尊 (天孫)が、葦原中国(地上界)に降り立った(降臨した)際に、「暗闇に包まれていた大地に、稲穂の籾(もみ)を撒いて明るく照らした」ことを意味します。

稲穂は、日本建国の原点である

「岩戸隠れ」の神話
天照大御神の弟・須佐之男命(すさのおのみこと)は大変な暴れん坊で、いたずらに手を焼いた天照大御神は、岩でできた洞窟である天岩戸(あまのいわと)にお隠れになりました。

すると、世界は闇夜に包まれ、食べ物が育たなくなったり、病気になったりと、次々、大変なことが起こりました。

困り果てた八百万の神々は、天安河原(あまのやすかわら)(巻頭カバー写真の場所)に集まり、相談を交わされます。

イラスト:天岩戸神社ホームページ

そのとき、思兼神(おもいかねのかみ)という賢い神様が一計を案じ、天鈿女命(あめのうずめのみこと)が招霊(おがたま)の木の枝を手に舞われ、その周りで他の神々が騒ぎ立てます。

天照大御神は、あまりにも外が賑やかなので、不思議に思われて天岩戸の扉を少し開けてみました。

その時、岩の扉を手力男命(たぢからをのみこと)が開け放ち、天照大御神に天岩戸から出て頂くことが出来ました。

左:手力男命《道の駅・高千穂、天岩戸神社》
右:天鈿女命《道の駅・高千穂、高千穂神社》
(Photo by ISSA)

そして、世の中が再び明るく平和な時代に戻りました。

これが、「岩戸隠れ」の神話です。

高天原(天上界)から追放された須佐之男命のその後は、こちらから☟

では、ここからは今回、訪れた高千穂神社天岩戸神社などの四社について、ご紹介して参ります。

高千穂神社
高千穂神社は、高千穂皇神(注1) をお祀りする神社です。

高千穂神社入口
(Created by ISSA)

(注1) 日本神話の日向三代と称される皇祖神とその配偶神、6神の総称(下図参照)

神々の系図
(Created by ISSA)

高千穂神社は、約1900年前に創建され、日本書紀にも記述がみられる由緒ある神社です。

高千穂神社 拝殿、神楽殿、夫婦杉
(Photo by ISSA)

境内には樹齢800年の秩父杉や、縁結びで有名な夫婦杉がそびえています。また、神社境内の神楽殿では、毎晩20時から1時間、高千穂神楽が披露されています。

天岩戸神社
天照大御神を御祭神とし、大御神がお隠れになられた天岩戸と呼ばれる洞窟を御神体とする神社です。

天岩戸神社・西本宮拝殿
(Photo by ISSA)

天岩戸神社は、岩戸川をはさんで西本宮と東本宮が鎮座し、西本宮拝殿の裏側にある遥拝所から、天岩戸を拝むことができます。(注2)

(注2) 
遥拝所には、社務所で申し込み、神職の案内で入ることが出来るが、遥拝所からでも天岩戸を明瞭に見ることはできない(撮影も禁止)

天安河原
西本宮から岩戸川沿いに進むと、岩戸隠れの際に八百万の神々が集まって相談した場所と伝えられている天安河原があります。

仰慕窟(ぎょうぼがいわや)と呼ばれる洞窟に天安河原宮があり、思兼神と八百万の神々が祀られています。

上:天安河原への道のり
下:仰慕窟と天安河原宮
(Photo by ISSA)

この辺りでは「願いを込めて小石を積むと願いが叶う」として、多数の石積み信仰がみられます。(注3)

(注3) 戦後、参拝客の間で自然発生的に生まれた風習

槵觸神社
槵觸(くしふる)神社は、瓊瓊杵尊などの五神をお祀りする神社です。

日本神話では、「瓊瓊杵尊は、猿田彦神(さるたひこのかみ)の道案内で日向・高千穂のくじふる嶽(たけ)に降臨した」とされており、社名はこの故事に由来しています。

槵觸神社拝殿
(Photo by ISSA)

神社周辺には、神武天皇と兄弟神誕生の地と伝えられている四皇子峰(しおうじがみね)や、天孫降臨後、神々が遥拝した場所といわれている高天原遥拝所など、神話にまつわる史跡を散策するコースが整備されています。

神武天皇と兄弟の降誕地とされる四皇子峰
(Photo by ISSA)
神々が集まり遥拝したとされる高天原遥拝所
(Photo by ISSA)

荒立神社
荒立(あらたて)神社は、猿田彦神と天鈿女命を御祭神としています。

荒立神社拝殿
(Photo by ISSA)

ここは、猿田彦命と天鈿女命が結婚して住まわれた地と伝えられ、切り出したばかりの荒木を利用して急いで宮居を造ったため、荒立宮と名付けられたといわれています。

おわりに
以前、こちらの記事を書いたとき、

天照大御神の孫として地上界に降臨したほどの神(瓊瓊杵尊)が、「姫君(木花佐久夜姫)のご懐妊をお疑いになるとは、何と器の小さいことを…」といった話をしましたが、
 
今回も、天照大御神ほどの太陽神が、「弟の粗暴を理由に岩戸にお隠れになるとは、これまた何と器の小さいことを…」と感じられた方も居られるかもしれません。
 
ただ、ここで大切なポイントは、分かり合えない相手に心を開くことの大切さや、閉ざされた心を開かせる術(=和の精神)について、天照大御神の岩戸隠れをめぐるこの神話を通じて語り継がれてきたということです。

(Photo by ISSA)

日本神話の面白さは、そんな神々の人間臭いところや、物語を生み出した古代の人々の想像力にあるのかもしれません。

そして、伝承として語り継がれる中で、人々が様々な教訓を学び、叡智に磨きをかけることができる。そこに日本神話の真価があると思います。

全国各地に様々な神がお住まいであり、難しい作法も経典もいらない。行きたい時に訪れて祈るだけで、清々しい気持ちを取り戻すことができる。

そして、宗教という観点からも、決して争いごとを生み出すことはない。

日本の神話や神道は、本当に素晴らしいと思います。

天上界から降臨した瓊瓊杵尊が
稲穂の籾を撒いて明るく照らした
とされる高千穂の地

機会があれば、
是非、訪れてみてください🍀