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心に残った名作映画10選(邦画編)

心に残った名作映画10選(洋画編)からの続編です。
 
子供の頃からどちらかと言えば洋画派だったので、古い邦画はあまり詳しく知らないのですが、それでも、近年の邦画はかなりの本数を観ていると思います。
 
今回は、その中から特に心に残った邦画10選をご紹介したいと思います。
 
 
海賊と呼ばれた男

海賊とよばれた男

出光興産と、その創業者である出光佐三をモデルとした国岡商店の店主、国岡鐡造の生涯を描いた百田尚樹氏の歴史小説を原作として、2016年12月に映画化された。
 
満州鉄道への潤滑油の売り込み、旧海軍石油タンクの底掬い、日章丸のイラン派遣など、大戦前後の過酷な時代にあっても凛として誇りを失わず、社員を大切にし、日本と国岡商店の再建に挑む姿に心を打たれました。
 
「戦争に負けてすべてを失おうとも、この国は必ずや再び立ち上がる」
 

「一千名にものぼる店員たち、彼らこそ最高の資材であり財産である」
 
「精一杯やって、それでもあかんかったら、一緒に乞食をやろうや」

 
主人公・国岡から発せられる一言一言に、真実味や懐の深さが感じられます。
 
何のために財を成し、何のためにお金を遣うのか。私腹を肥やす小金持ちに溢れる世の中、経営理念の在り方について一石を投じる作品です。
 
 
浅田家!

浅田家!

写真家・浅田政志氏の写真集「浅田家」と「アルバムのチカラ」を原案として、2020年に公開された。
 
写真家として歩み始めた浅田家の次男・政志は、東日本大震災の被災地に入って、泥だらけの写真をひとつひとつ手洗いして持ち主に返すボランティア活動に従事する。
 
そんな中、父親を亡くした一人の少女と出会い、家族写真を撮ってくれと懇願され…。考えた政志は、少女の父親が愛用していた腕時計をつけて、少女と妹と母親の写真を撮ることに。
 
ファインダーを覗き、レンズを操作する政志のしぐさに父の姿をみた少女に、満面の笑顔が戻る…。
 
大好きだったお父さんの写真だけが、どうしても見つからなかった理由。そして、お父さんがいつもどれだけ愛してくれていたかを、このとき少女は悟ったのでした。
 
写真には撮影者自身は映らないけれども、撮影者の「思い」が表れているもの。撮影者がファインダー越しにどんな思いでシャッターを切ったのかが、より一層、感じ取れるようになった気がします。
 
 
南極物語

南極物語

1983年に高倉健主演で公開された不朽の名作。初期の南極観測隊における苦難を描いた物語で、南極大陸に残された兄弟犬タロ・ジロと隊員が1年後に再会する実話に基づいている。
 
1957年の第1次南極観測隊は、南極観測船「宗谷」で南極大陸へ赴いた。年があけた1958年2月、「宗谷」は越冬隊を上陸させ帰国の途につくため再び南極大陸に接近したが、長期にわたる悪天候のために南極への上陸・越冬を断念。
 
その過程で樺太犬15頭を、無人の昭和基地に置き去りにせざるを得なくなった。極寒の地に繋がれたまま、餌もなく残された15頭の運命は如何に…。
 
犬たちの世話係だった隊員は、苦悩の末に帰国。そして、1年後に再び「宗谷」で南極大陸を訪れた。
 
一本気で堅気な印象の高倉健さんが「おーっ!」と叫んで、南極の冬を生き延びた兄弟犬タロ・ジロと再会するシーンは、何度観ても涙を誘います。
 
そして、誰もが一度は耳にしたことがあるヴァンゲリスのBGMは、南極の雄大さや神秘と相まって感動を引き立ててくれます。
 
もし、南極についてご関心があれば、是非、こちらもご一読ください。

 
 
ハッピーフライト

ハッピーフライト

2008年に公開された矢口史靖監督の作品。2年間のリサーチの末に、航空業界の様々な仕事の面白さを知り、当初予定していた航空パニック映画から脚本を変更した。
 
ANAで機長に昇格する訓練を受けている副操縦士と教官を兼ねた機長は、羽田発ホノルル行のB747-400に乗務したが、途中、ピトー管(対気速度を計測するセンサー)の不具合で羽田への引き返しを余儀なくされ、台風通過直後の羽田に何とか着陸することができた。
 
2人のパイロットを軸として、キャビン・クルー、グランド・スタッフ、航空整備士、航空管制官、バードパトロール、フライト・ディスパッチャー、気象予報士と、次々に航空業界の専門職にスポットが当てられていく。
 
2時間という限られた時間に、笑いあり、スリルあり、そして各専門職の特徴や魅力などが、軽快さを損なわずにぎっしり盛り込まれて、観終わったら何故か用事がなくても空港に行きたくなってしまうような、ある意味、異色の映画だと思います。
 
 
海難1890

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海難1890

2015年に日土友好125周年を記念してトルコと合同で制作された。

1890年9月、トルコ帝国の軍艦「エルトゥールル号」は日本から帰国の途上、和歌山県南端の紀伊大島沖で嵐に遭い暗礁に乗り上げて船は沈没。 
 
600人もの乗員が嵐の海に投げ出され、地元住民たちが献身的に救助したことで69人の命が救われた。このことはトルコの教科書にも取り上げられて後世に伝えられ…。
 
そして時代は下り1985年3月、イラン・イラク戦争の最中、行き場を失った300人以上の日本人にトルコが恩返しとして救いの手を差し伸べ、テヘランから退避することが出来た。
 
19世紀後半、当時の日本人には、外国人はさぞ異質に感じられたことでしょう。それでも壁を作らずに私財を投げ売ってでも救助に当たった「真心」は、観る者に感動を与えてくれるものです。
 
島の医師・田村(架空の人物)を演じる内野聖陽さんはいい役者さんですね。その役柄がキラリと光ります。

 
 
沈まぬ太陽 

沈まぬ太陽

1995年〜1999年に週刊新潮で連載された山崎豊子による長編小説を、2009年に映画化したもの。
 
日本のナショナル・フラッグ・キャリアである「国民航空」の社員で、その労働組合委員長を務めた恩地を通して、人命を預かる航空会社の社会倫理をテーマとした作品。
 
昭和60年代、国民航空の旅客機が北関東に墜落。主人公の恩地は対応に追われるが、彼の社内での立場はそれまでも苦難に満ちたものだった。
 
昭和30年代に労組の委員長を務めた恩地は会社に嫌われ、アフリカや中東など路線もない国を転々とする、いわゆる「懲罰人事」にあい苦渋をなめた。
 
ラストシーンの、恩地の言葉が胸に響きます。
 
「地平線へ黄金の矢を放つアフリカの太陽は、荘厳な光に満ちています。それが私には、不毛の日々を生きざるを得なかった人間の心を慈しむ、明日を約束する沈まぬ太陽に思えるのです。」
 
私も過去、アフリカで3年の月日を過ごし、時に人間不信に陥るような辛苦を味わいました。でも、確かに人類の出発点ともいうべき壮大なアフリカ大陸の太陽は荘厳な光に満ちていて、如何なる苦労も包み込んでしまう。
 
まさに「沈まぬ太陽」こそが、私達の生きる希望。
 
この小説は、日本航空の社員だった小倉寛太郎氏の体験に基づいて再構成されました。山崎氏は、フィクションと位置づけていますが、御巣鷹山に墜落したJAL123便の大惨事は、日本航空という大企業の体質が招いたという問題意識を惹起させるものです。
 
先述のハッピーフライトでも分かるように、航空機の安全は、パイロットのみならず運航に関わる全ての人たちとのチームワークで成り立っています。良かったら、こちらも訪れてみてください。 

 
 
男たちの大和 YAMATO

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男たちの大和 YAMATO

辺見じゅん著「決定版 男たちの大和」を原作として、東映と角川が戦後60年記念作品として2005年に映画化。当時、世界最強最大と謳われた「戦艦大和」と乗組員たちの壮絶な戦いを描いた大作である。
 
沖縄に向けて出撃する前に、それぞれに愛する人を訪れて最期の別れを告げ…。出撃の朝、新兵の常田という若者に、母が「死んだらあかん!」と叫んで強く抱きしめる。
 
どういう訳か、自分はこの時代からの生まれ変わりじゃないかと思うほど、当時の純粋で真っすぐな生き方に心を打たれて涙腺が崩壊してしまいます。
 
久石譲の勇ましいBGMが戦艦大和の雄々しさを、そして長渕剛による主題歌「CLOSE YOUR EYES」が別れの悲壮感を一層引き立てます。
 
広島県尾道市の「日立造船向島西工場」にあった戦艦大和の原寸大ロケセットは既に閉鎖されましたが、広島県呉市の「大和ミュージアム」は一見の価値がありますので、是非、訪れてみてください。 
 
良かったら、こちらもご覧ください。

 
 
海猿シリーズ

海猿 - ウミザル

海難救助を中心とした海上保安官の活躍を描いたコミックから、2004年に映画化(その後、2005年に連続テレビドラマ化され、2006年に「LIMIT OF LOVE」、2010年に「THE LAST MESSAGE」、2012年に「BRAVE HEARTS」が公開された)。
 
主人公の仙崎大輔を中心に、海難救助の最前線で活躍する潜水士の苦悩、友情、恋愛、成長を描く。
 
人の命を救う仕事。もちろん、お医者さんは凄いけど、彼らは「自らの命を危険にさらしている」という点である意味、それを上回っている。彼らは船に乗り、ヘリコプターにも乗り、泳力もあれば潜水もできる救命士。まさにスーパー・ヒーローです。
 
体力のみならず、頭脳、精神力、技術、人格のトータルバランスに優れた人物でなければとても務まらない仕事だと思います。
 
巡視船「みずほ」の船上で、果てしない大洋と大いなる愛を歌い上げるB'zの「OCEAN」は、お気に入りの一曲。

このほか、伊藤由奈の「Precious」 、JOURNEYの「Open Arms」、Che’Nelleの「Believe」など、シリーズを通して選曲が大変に素晴らしいです。
 
 
男はつらいよ お帰り寅さん  

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男はつらいよ お帰り寅さん

「男はつらいよ」シリーズ50周年を記念した第50作。2019年2月に公開。
 
柴又の団子屋「くるまや」は、カフェに生まれ変わっていた。寅さん、おいちゃん、おばちゃん、タコ社長は亡くなり、隣の印刷工場もアパートになっている。
 
すっかり大人になったさくらと博(ひろし)の子、満男(みつお)が初恋の人、泉(いずみ)と再会して、伯父・寅次郎との思い出を回想しながら物語が進んでいく。 
 
山田洋次監督らしい笑いと涙があり、家族間のいざこざや不完全な人間模様が描かれ、逆に、そういうところに温かみを感じる。
 
第40作「寅次郎サラダ記念日」の中での名言が再現される。満男が「伯父さん、人間は何のために生きてんのかな?」と尋ねると、寅さんは、しばし「う~ん」と考えた上で、
 
「ああ、生まれてきてよかったなって思うことが何べんかあるじゃない、そのために人間生きてんじゃねえのか」と答える…。
 
監督の最新作「キネマの神様」もとても良かったです。是非、こちらもご覧になってください。

  
 
杉原千畝 スギハラチウネ 

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杉原千畝 スギハラチウネ

第2次世界大戦勃発後の1940年、ユダヤ難民にビザ(査証)を発給して多くの命を救った在リトアニア日本領事館の領事・杉原千畝を主題にした実話に基づく映画。2015年に公開された。
 
ナチス・ドイツによる迫害から逃れるため、極東から北南米や豪州へ向かおうとするユダヤ難民たち。各国公館が次々に閉鎖される中、行き場を失ったユダヤ人たちはビザを求めてカウナスの日本領事館に集まった…。
 
苦悩の末、本省の命に背いてでも「人道」を優先して、ギリギリまでビザを発給し続けた領事・杉原千畝。
 
2005年に反町隆史・主演でテレビドラマ化されています。

ドラマ版では、カウナス駅で杉原千畝を見送り「私たちはあなたを忘れない。もう一度あなたに会いに行きます!」と叫んで大きく手を振るユダヤ少年の姿が涙を誘います。
 
杉原千畝は、私が最も尊敬する偉人です。
 
彼が大切にした言葉「人のお世話にならぬよう 人のお世話をするよう そして、報いを求めぬよう」(自治三訣)は、私自身の「座右の銘」であり、少しでもそのような人間に近づきたいと思っています。
 
良かったら、是非、こちらもご覧ください。

 
 
おわりに
映画は人を励まし、邪心を洗い流し、そして「如何に生きるべきか」を考えるきっかけを与えてくれます。
 
特に、「日本人の原点や誇り」というものを表現できるのは、邦画にしか出来ないことだと思うので、これからも日本の映画業界には、そのような深みのある作品の輩出に期待したいですね。
  
そのうち、気が向いたら「アニメ編」や「テレビドラマ編」なども、順次ご紹介できればと思っています。お楽しみに(^^♪