教育実習と"See you"の意味
20年ぶりに中学校へ通った。教育実習だ。
私は英語を教えた。ベテランの池谷先生が私の世話係についてくれた。
授業は、まず英語で"Good morning, everyone."とあいさつしてから始まる。そして英語で曜日や天気を質問して、生徒に答えてもらう。
授業の最後には教師が"See you"と言う。生徒は"See you"と返事する。
生徒たちは、信じられないくらい英語の能力が高かった。特にリスニングの力が凄まじく、中学時代の私を軽く超えていた。
私自身の中学校生活といえば、毎日誰かに「気持ち悪い」と言われたものだった。「おはよう」よりも言われた気がする。
20年後にふたたび訪れた中学では、私を「気持ち悪い」という生徒はいなかった。むしろその逆のような前向きな言葉を、数えきれないくらい浴びた。みんなが笑顔で私に接した。私は5種類くらいのあだ名を付けられた。
実習の最終日、私は池谷先生にたずねた。「授業の最後にするあいさつは、いつもの"See you"じゃなくて"Good bye"の方がいいでしょうか?私はもうこの学校には来ないので…」
池谷先生は「"See you"にしましょう。"また、どこかで"ってね」と言った。
私は生徒たちに"See you"と言った。彼らは"See you"と答えた。