この本読みました2:『生命科学的思考』
一歩踏み出す、行動する勇気を与えてくれる本。
生命科学研究者でジーンクエストという遺伝子解析会社の代表である、高橋祥子さんの書籍。「見え方」が一変するというタイトル通り、目からウロコの視点が満載です。周りの人に広めたくなるような考え方が多く、友人にもすぐに紹介したほどです。
「生命原則を客観的に理解した上で主観を活かす思考法」が主題とあります。この生命原則を理解するのは「広い視野を獲得できるから」と明確に述べられています。これを通して、全体の構造(「生命のメカニズム」とも表現されています)という視野の広い状態で見ることになり、自分がどう行動すべきかが見えやすくなると述べられています。
不安に対して、actionable か否かで考える。
まずは、不安が「遺伝子の機能によるものである」と捉えるということです。本能的に不安を抱くこと自体は仕方がない、と考えるだけでも随分と気が楽になります。そして、そこから先は、自分が「具体的な行動を取れるかどうか」で考え方を分ける。
これは、エピクテトスの「自分の権内と権外を適切に見極めよ」の考え方と同じだと思います。自分でコントロールできるものとできないものを区別せよ、そして、コントロールできるものだけに注力せよと。これについては、『その悩み、エピクテトスならこう言うね』(吉川浩満・山本貴光、筑摩書房)にもっと詳しく楽しく書いてあります。
悩み多き受験生にとっても actionable か否かで区別すると、やるべきことが見えやすくなるはず。たとえば、コロコロ変わる受験制度について不安をいだいたとしても(不安に思うのは無理もないことです...)、これに対して具体的な行動を取ることはあまり現実的ではありませんから、自分ができること、コントロールできることをやろう!という感じです。
「何も目指さないと何も起こらないのではない」という部分にはハッとさせられます。
「エントロピーは無限に増大する」ということですから、放っておいたら限りなく無秩序は増大し、崩壊に至ります。これに秩序を与え、阻止しなければなりませんが、そのエネルギーは「有限」であるため、なにをどこに投入するかが極めて重要です。場当たり的な行動ではなく、「意志」が重要であると。これは「戦略」を持って、何をやるべきで、何をやらざるべきかということも明確に意識することが重要であるということだと思います。
失敗だろうが成功だろうが、とにかく、「累積探索量」を増やす。
「物数を尽くす」ことに意味があるのだと読めます。可能な限りバッターボックスに立って、バットを振り続けることでしか、ホームランも偉大な記録も生まれないはずです。
「失敗を恐れる」というメンタル自体が、根本的に間違っているのかも知れないと思いました。
高校生や大学生はもちろん、部下を持つ人や子育て中の人にとっても、大いに視野を広げてくれる一冊です。
タイトルに「生命科学」とありますが、いわゆる「理系の本」ではありません。それを理由に読まなかったらもったいない!生命科学「的」思考を教えてくれる本です。文章は簡潔明瞭でとても読みやすく、わかりやすく、あっという間に読めてしまいますが、自分に置き換えて、何度も何度も読み返したくなる本です。
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