#78 自分のやりたいことがない理由を家族のせいにしていないか・前編
“自分が本当にやりたいことをやろう!”
それはわたしが会社員をやめたときに思っていたこと。
…しかし、やりたいことってなんだろ。
♢
さかのぼること10ウン年前。新卒で就活をしたときは、まさに就職氷河期でした。
国立大学の文系学部になんとか滑り込んだものの、情熱もなく大学時代を過ごし、なんの特徴もやりたいこともなく就活をむかえました。
バカ正直な世間知らずで箸にも棒にもかからず、やむを得ずアルバイト先の小さなアクセサリー輸入代理店に就職しました。
多少ブラックだったのでいろんなことをやらせてもらえ、そのおかげで多少のスキルと方向性が見えたので運よく某アパレル企業の本社勤務に転職できました。
ファッションにうとい私でも知っていた外資系ブランドで、規模も大きくホワイト。
今までのフルで休める日は月に2日みたいな生活から、ライフワークバランスだけを求めた転職は成功。
180°人生が変わった瞬間でした。
入社するまでドキドキワクワクしていたのを今でも覚えています。会社の業績は右肩上がり、離職率も低いということを誇らしげに語る人事の方のキラキラ感はハンパなかったです。わたしが入社した年が業績右肩上がりのピークだったのですけれど。
「雇ってもらった御恩を返さねば」と、若さからくる素直さで必死で仕事をしました。正直、誰でもできる仕事だったのですが、それを正社員に任せていたくらい余裕のある時代でした。
わたしはどんどん生産性を上げていき、上司の言うことも素直によく聞いた(と思う)ため、仕事の幅を広げていきました。
あっという間に4年が経過。長く付き合った人と別れ、結婚相手を見つけるためだけに生きてたように思います。今までの人生の中でいちばん自由奔放に生きていました。少々投げやりになっていたようにも思います。
そんなときに親友が紹介してくれた男性と運よく結婚が決まりました。
仕事では「これからずっとできることをし続けるなんて…なんて退屈なんだろう」と思っていました。
「女性が結婚したら転職は無理だ」というのが当時の価値観で、このまま結婚したら転職は無理かもしれないと、入籍前に少しだけ転職活動をしました。
そのときも「やりたいこと」がなく、職場は人間関係がよかったので「きっとここに骨をうずめるのだろう」と転職をあきらめ入籍しました。
その後しばらくすると興味のあった部署への異動が決まりました。でもそこはひとり部署。
今まで管理部門のチーム体制でしか働いたことがなかったわたしは、畑違いの少数精鋭の営業部門へ…
不安でしたが興味のある仕事でしたし、何より華々しいバイヤーというお仕事にウキウキしていました。
ファッションにすこし興味が出てきたかもくらいの、ファッションリテラシーの低いわたしなんかがいいのかしら…と遠慮しつつ(怯えつつ)も、結婚しても異動させてもらえる有難さをかみしめました。
でも異動して1年もせずに妊娠しました。まさか子どもができるとは、というのが正直なところでした。
そこから「重症妊娠悪阻」というまあまあつわりの重い人認定を受けるほど、日常生活がままならず。起き上がることもできなくて出社もできなかったので(当時はリモートとかなかった)病院で診断書をもらい1か月傷病手当をもらって休職しました。
わたしの代わりに実務が出来る人がいないので、バケツを小脇に抱え吐きながら家で仕事をしていました。運よく社内のネットワークにつなげるようにしていたので、なんとか起き上がれるときだけ最低限の仕事をやりました。
そのときに支えてくれたのはやっぱり先輩ママさんで、やんわり要望を言ってきたのは男性でした。どうしてほしかったとかはありません。わたしが悪かったわけでもないし、会社だって妊娠する可能性があることはわかっていたでしょうけど、それでもチャンスをもらえたことはありがたかったです。
体調が不安定なときもありましたが無事に復帰し、妊娠後期には出張に行けるくらいになっていました。大きなお腹で接待してました。
1年間の産休・育休を経て「育児より仕事の方が楽じゃないか…!」とワンオペ育児にメンタル的に限界を感じていたころ、市役所から「来月から保育園に入所ができますがどうします?」と連絡がきました。
子どもは8ヶ月。完全母乳で育てていましたし、乳と卵アレルギーがありました。不安はあったものの保活激戦区だったのでここを逃すと早生まれはいつ入所できるかわかりません。
不安と期待が入り混じった気持ちで復帰したとき、そこに居場所があったことに安堵したことを覚えています。会社のトイレで母乳をしぼりながら仕事をしましたが、そんなことは全然苦ではありません。それよりも仕事ができることがうれしかったです。
育児って誰も見てくれなくて、誰も褒めてくれません。そのことで当時は旦那さんにかなり不満を溜めていました。私の育児の苦労なんてわからないだろう。わかってくれなくていい。いまは女性にしかできない役割がある。けれども、毎日「大変だったね、お疲れ様」と言ってほしい、と。当時はね、言えなかったけど。
仕事をすれば人の役に立てている実感があります。大人同士なのでお礼も言ってもらえるし、やるべきことがある。ゴールがあるので達成感もあります。一人でご飯が食べられる、一人でコーヒーが飲める、一人で座っていられる。だれにも邪魔されないで没頭する時間がある。
そんなことがただただ嬉しかったのです。
つづく
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