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ホロコーストを疑っている人のために

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かつてナチスドイツが行ったホロコーストを「なかった」という人たちがいます。それらの主張の代表的なものを、ある海外サイトを参考に論破する試みです。
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2021年12月の記事一覧

『西岡論文「戦後世界史最大のタブー。ナチ『ガス室』はなかった」』を反論してみる。

ラインハルト作戦MGK論文への批判の翻訳をちょっと中断。 1995年(平成7年)と言えば、阪神・淡路大震災のあった年であり、またオウム真理教によるサリン事件のあった年でもあります。この年の日本のマスメディアはこの二つの大事件で一色だったと言っても言い過ぎではないと思いますが、この年の1月17日に発売された、文芸春秋社の月刊誌『マルコポーロ』にセンセーショナルな見出しとともに掲載されたのが、今回の表題タイトルの記事でした。 日本のホロコースト否定の歴史なんて別に研究もしてま

2021年度版人気記事ランキング一覧(ホロコースト関連のみ)

なぜこの記事が、他の記事を完全に思いっきり出し抜いて一位になってるのか、私自身はその理由がわからない……などとダッシュボードの閲覧数をぼーっと見ていて、今回はそれを紹介しようかなと思いました。大晦日に短い記事ですけど、どーぞ。 第一位:年間閲覧数3,871この記事は、本来は私自身訳す気は全くなかったのです。「ナチスの人間石鹸」などには興味は少しはありましたが、ホロコースト否定とはあまり関係がないと見做していたことと、この元記事自体の内容が、人間石鹸なら人間石鹸それ自体のこと

ホロコーストの否定とラインハルト作戦。MGKの偽りに対する批判(4)

今回の翻訳は、戦後に行われたニュルンベルク裁判ではない、細かいたくさんの裁判の話です。連合国が主体で行ったニュルンベルク裁判やアメリカ占領軍が実施したニュルンベルク継続裁判はある程度知られていると思いますが、細かい裁判になると、ほとんど知られていないと言う感じがします。 例えば1960年代に行われた西ドイツによるフランクフルト・アウシュヴィッツ裁判ならば、映画になってることもあり多少は知られているのかもしれませんが、それ以外にも細かい裁判がいっぱいあったと言う歴史的事実は、

ホロコーストの否定とラインハルト作戦。MGKの偽りに対する批判(3)

今回は、以前に翻訳した部分を含む箇所の翻訳になりますが、以前の翻訳は参考にしつつも完全に再翻訳しています。およそ1年前に翻訳しているのですが、改めて読んでみると、修正が必要な箇所はあるものの、意外にも翻訳の出来がそこそこ良かったりするので、いったいどうやってそんな翻訳をしたのか、思い出せません(笑)。自分で自分を褒めるとすれば、機械翻訳任せにせず、割と一生懸命調べてたようではあります。わかりにくい地名や人名などにはリンクを貼ったり、Wikipediaを翻訳してコピペしてあった

ホロコーストの否定とラインハルト作戦。MGKの偽りに対する批判(2)

アウシュヴィッツなら素人の割にそこそこ知ってるけど、他の収容所などの話になると途端にほとんど無知だったりします。特に、絶滅収容所でない強制収容所の知識は絶望的にありません。もちろんこれは、私が対象とするネット否定派がほぼアウシュヴィッツのことしか話題にしないからですが、アウシュヴィッツのことは論じ尽くされている感もあり、それでも知らないことはまだあるにせよ、他のホロコーストに関する知見ももっと得たいとは前から思っていたりもします。 一応は過去にもいくつか、アウシュヴィッツ以

ホロコーストの否定とラインハルト作戦。MGKの偽りに対する批判(1)

ホロコースト否定というテーマに足を突っ込み始めた最初の頃は知識があまりなかったので、ネットでホロコースト否定について自分で何かを述べても否定派に突っ込まれて叩きのめされるんじゃないかと不安が拭えませんでした。しかしそのうちに色々知識がついてくると、そんなに不安を感じずに否定派に議論をふっかけにいくようになったのですが、私に絡まれたそれら否定派の多くは割とすぐに逃亡する事態になりました。Twitterではブロックされたり明らかに非表示にされたり、無応答になったりするわけです。最

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(19):アウシュヴィッツ-20

あと2、3回かなと予想していたら、予想から2回となる今回でヴァンペルトレポートの翻訳は終了でした。裁判所に提出されたレポートは700ページもあったそうです。アーヴィングの本が嘘ばっかりなのを暴いたエヴァンズ教授のレポートもそれくらいらしいです。ヴァンペルトレポートは裁判の後に出版もされてるそうですが、もちろん日本語版なんてありません。 今回は、アーヴィングが当時、自分のウェブサイトと出版社で扱っていたサミュエル・クロウェルの論述についての話から始まります。クロウェルの論文で

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(18):アウシュヴィッツ-19

何度も何度も言っているように、あまりに長いので、翻訳している最中でもどんな話が書いてあったのかを忘れてしまいます。今回も、アイヒマンの話が頻発しますが、私がこのホロコースト否認の問題に本格的に取り組んで割とすぐに購入したのが、『アイヒマン調書』でした。 それまでも、アドルフ・アイヒマンの名前は当然知ってましたし、いくつかの映画も見ていました。ハンナ・アーレントの『エルサレムのアイヒマン』は未だ読んでませんが、これは私がホロコーストそのものに関心があるのではなく、ホロコースト

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(16):アウシュヴィッツ-15

今回の部分を翻訳し始めたのと同時くらいに武井彩佳氏の『歴史修正主義』(中公新書)を買ったのですが、すでに再版されておりさすが中公新書よく売れるのだなぁと羨ましい限りです。過去に一冊だけ偶然に小説を出版できたりしてるもので再版はほんとに羨ましいものです。版を重ねるごとにその分の印税もらえますからね。いや、非常に興味深く読めました。 速読ペースで一日で読んでしまったので、もっかいゆっくり読んでから書評でもしようかなと考えていますが、多分ですけど、日本ではこうしてホロコーストを中

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(15):アウシュヴィッツ-14

さて、本裁判の主役であり原告であり、首席弁護人(アーヴィング自身が代理人なしで原告弁護人を務めたからね)である、デヴィッド・アーヴィングについてです。 一応、簡単にアーヴィングについて英語Wikipediaの冒頭だけ翻訳して紹介しておきます。 アーヴィングほどのベストセラーを何冊も出した著名な歴史家になると、Wikipediaの記述も相当長くなっており(その半分以上はアーヴィングが起こした様々な騒動の話だが)、私も全部はまだ読んでません。それに比べ、日本語Wikipedi