リモートワークでも新人教育はできるのか?
2019年の冬、中国の武漢市で第1例目の感染者が報告されてから, わずか数カ月ほどの間にパンデミックと言われる世界的な流行となりました。
そんな「Withコロナ」の生活は日常化し、仕事においてもプライベートにおいても生活が一変。
現在も完全にコロナ前のような生活に戻る目処は立っていない状況です。
そんな新型コロナウイルスが猛威を振るう中、企業の多くが働き方の多様化に力をいれざるを得ない状況となりました。
その代表がリモートワーク。すでに様々な企業が取り入れており、一定のメリットがあることも実感しているでしょう。
実際2021年3月に国土交通省が発表したデータによると、2020年のテレワーク実施者は2019年の9.8%から19.7%へと倍増しています。
また、それに伴い新人研修もリモートで行う企業も増えてきています。
今回は従業員・企業双方にとって重要な意味をもつ新人研修を、リモート下で行うことは可能なのか。
今回はリモート新人研修のメリットデメリットについて考察していきます。
1.リモート新人研修に対する不安
まず新人たちはリモート研修に対してどういった不安を抱えているのでしょうか。
「一緒に働く人たちかどんな方たちなのかがわからず不安」
「わからないことがあったときに誰に聞けばいいのかわからない」
「直接会わずに同期とコミュニケーションが取れるのか不安」
など、対面で仕事をしていればまず解決できるような不安を抱えている方が多くいます。
一緒に働く方たちの人となりがわからず、質問もしにくい。
これが継続していくことで業務の進行が鈍化していき悪循環に陥ります。
しかしながら社員の安全面を考えると、リモートでの研修は必要不可欠。
メリット・デメリットを考察し、実際自社での運用が可能なのか、リモート研修の導入の可否を検討していきましょう。
2.リモート新人研修のメリット
不安な声が多々上がるリモート研修にも、実はたくさんのメリットがあります。
①当事者意識の向上
従来の対面型の研修と比べ、リモート研修だと講師と参加者の距離が近く自然と常に見られているという意識を持つことになります。そのため対面の集合研修よりも気を抜けず、常に緊張感をもって研修に参加することができます。
②感染対策ができる
今、多くの企業がリモートワークを取り入れる理由として、新型コロナウイルスから社員をも守ることです。多くの人が公共交通機関を使って出社し、多くの時間を共に過ごすという機会をなくすことで、感染拡大のリスクを減らし、受講者の安全を守ることができます。
③コストの削減
対面で研修を行う場合、受講者や講師の交通費、また大きな会場をレンタルする場合にはその会場費など、リモート研修を取り入れることによりそのコストを削減することができます。また複数支社がある会社では、その全員に同じ研修を受講させる場合には、移動費や宿泊費といったコストがかかることになりますが、リモートであればそのコストもかけることなく全員に同じクオリティの研修を行うことが可能となります。
④効果的なロールプレイング
新入社員研修で必ずと言っていいほど行う電話研修。そこでは声のトーンや言葉遣い、顔の見えない電話というツールを利用したコミュニケーションを学びロールプレイングを行うでしょう。リモート研修であれば、架電役と受電役にわかれ、双方がカメラをオフにした状態で実際に顔が見えない状態で実践することにより、声のトーンや言葉遣いがどれだけ大切か身をもって知ることができます。
3.リモート新人研修のデメリット
続いてはデメリットについて考察していきます。
①新入社員の集中力の維持
リモート研修は対面の研修に比べ、参加者の疲労感が強く、集中力が長く続かないことが予想されます。リモート研修は画面越しではありますが対面より距離が近く感じられるため、普段とは違う緊張感が続き、より疲労感を感じやすく集中力が低下しやすくなります。そのため対面研修よりも多く休憩時間を設けることが必要となるでしょう。
②研修で使用するテキストの準備
従来の対面形式での研修では、当日使用するテキストは当日配れば問題ありませんでした。しかしながらリモート研修では、使用するテキストは研修当日までに受講者の手元に渡る方法で配布しなければなりません。
また、データでの送付は研修画面と資料を同時にパソコンの画面に映し出すことで読みづらいという問題も発生します。また資料に書き込むこともできないので、後日復習した際に、振り返りが十分にできないといった影響も考えられます。
③インフォーマルラーニングができない
インフォーマルラーニングとは、実際の職場でなされる業務や日常の中で無意識のうちに学習することを言います。
同期が先輩からアドバイスされている内容を聞いて学んだり、先輩の業務を見て聞いて学んだりした経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
リモート研修ではそういった機会が極端に少なくなってしまうことが予想されます。
④コミュニケーションの低下
リモート研修では、受講者同士のコミュニケーションの場が極端に減少します。決められた時間にWeb会議ツールに入室し、座学の研修を受けたら、課題やテストには黙々と一人で取り組んでいく、このような研修内容になってしまっているのではないでしょうか。社会人マナーや座学で業務上必要な情報を得ることも重要ですが、新入社員の場合は同期や先輩社員とコミュニケーションをとり、会社に溶け込むということも非常に重要になります。
4. リモート新人研修で行うべき工夫
上述した通り、リモート研修にはメリットも多くある反面、様々なデメリットもあります。
よりよいリモート研修にするためにできる工夫を考えていきます。
①無理のないタイムスケジュール
PCと長時間向き合うリモート研修では集中力の維持が難しくなるため、無理のないタイムスケジュールを組むことが重要になります。こまめな休憩や、進捗状況を確認するための雑談タイムを挟み、受講者が集中できるように配慮したスケジュールを組みましょう。
休憩をとる目安として、ポモドーロ・テクニックという時間管理術があります。
(参照: https://next.rikunabi.com/journal/20161026_m1/ )
これは「25分の作業+5分の休憩」を4回繰り返し、その後30分間の休憩をはさむというものです。これは人間の集中力が続くのは25分程度が限界だとされていることに基づき、考案されたものになります。リモート研修では1コンテンツを25~30分程度に細分化し、5分程度の休憩を挟むとよいでしょう。
②オーバーリアクションを意識
リモート研修では受講者の顔が画面上に表示されますが、スペースが限られているためどうしても表情の変化が伝わりにくくなります。そのため講師側は手や体を使ったジェスチャーや表情で伝えるように意識することが必要です。
③コミュニケーションの工夫
受講者同士や、新入社員と先輩社員とのコミュニケーションを図る場の工夫も必要と考えます。対面研修であれば、休憩時間や研修後などに受講者同士で交流し。親睦を深めることが可能です。リモート研修では、受講者同士のリアルなコミュニケーションを図るため、グループワークの場を多く設けたり、課題に対するディスカッションの場を設けたりする工夫が必要です。
働き方が大きく変化した現在、テレワークを導入し研修もリモートに変える企業が増えてきています。
リモート研修は従来の対面研修と比べ、今まで以上に受講者に注意を払う必要がありますがリモートで運用できるようになれば会社としてもメリットがあることも確かです。
時代は刻一刻と変化しています。
「WITHコロナ」を念頭に置き、コロナ禍であってもベストパフォーマンスを実現できるよう、従来のやり方にとらわれるのではなく、リモートでの研修を行う必要があるのではないでしょうか。
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