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若さま侍捕物手帖・中編「だんまり闇」(1954)+大川橋蔵主演・若さま第5作目 紹介と感想

城 昌幸『若さま侍捕物手帖 第十四巻 まんじ笠』捕物出版, 2020, p63-134


あらすじ

五月初めの雨上がりの夕方、若さまがぶらぶら歩いていると、明神下のおゆみと呼ばれている女スリが、追手に追われているので一緒に歩いて欲しいと近づいてくる。
どうやら、人からの依頼で何かしらの書付を掏り取ったらしい。
その後、若さまも匕首で斬りつけられたり、おゆみを尾けていた老人が家まで押しかけたりと様々なことが起こった。
次の日、森田屋の娘・おあいが殺されるが、家の者は口をつぐむばかり。
更に、金正重右衛門の娘・おさとが行方不明になるが、こちらも調べにだんまりを決め込んでいる。
誰もが真実を話してくれない事件に、小吉は苛立ちを覚える。
なぜ、誰もがだんまりを続けるのか。若さまが鮮やかに謎を解く。

紹介と感想

次々と不審なことが起こるのに、誰もがだんまりを決め込むのはなぜなのか? これがこの物語のメインの謎になります。

謎自体は難しいものではなく、この物語の見どころはお白州に関係者を呼びつけて、若さまが珍しくピリッとした空気の中で事件を解決させるところにあります。

中編の為、登場人物もそこまで入れこむよう人物はいませんが、その中にあって明神下のおゆみが掏り取った物を手放すかどうかグズグズしているのは、若さま効果もあってか少しずつ可愛く見えてきました。

話としては標準作だと思いますが、相変わらずリーダビリティが良く、次々とページをめくってしまう勢いがありました。

大川橋蔵主演05「若さま侍捕物帖 深夜の死美人」(1957)

祭りを楽しみながら酒を楽しむ若さま。しかし、その裏ではある企みが進行していた。
大工の棟梁・政五郎殺しに端を発した連続殺人の裏に潜む陰謀を、若さまの神道流一文字崩しが暴く。

大筋は原作の要素を使いながら、政五郎一家の存在などオリジナル部分が良い影響となって、原作より楽しめる話になっていました。

唯一、お白洲の場面が無いのが残念でしたが、最後の若さまの大活躍で相殺です。

色々と要素を盛り込みすぎるより、これくらいの時間と話の規模で展開する方が勧善懲悪系の娯楽時代劇は楽しめると思っているので、前作と今作は好みに合っていました。

原作との主な違い(ネタバレあり)

・政五郎殺しの側に笛が落ちており、速水家へ疑いが向く。が、すぐに関係ないと分かる。
・おあいが政五郎の娘に変更。
・事件の裏にある秘宝を造ったのが政五郎達の先祖という事になっており、原作ではなんとなく手に入れた地図への理由付けと、現在の事件へのドラマが追加されている。
・おさとは、原作だとさらわれているだけだったが、映画では殺害される。そこで、原作で森田屋が死体を引き取ってだんまりを決め込む場面を、映画では金正に変更されて使用されている。
・クライマックスは駿州・久能山の御宝蔵での大立ち回りになっているため、原作にあったお白洲の場面は無し。

キャスト

  若さま侍/大川橋蔵

   おいと/星美智子
 遠州屋小吉/星十郎
 佐々島俊蔵/伊東亮英
    千造/岸田一夫
    太吉/国一太郎

   政五郎/加藤嘉
   おあい/若水美子
   おゆき/三笠博子
   政太郎/片岡栄二郎
   おつや/常盤光世
   おゆみ/浦里はるみ
金正重右衛門/薄田研二
   おさと/美鈴れい子
森田市郎兵衛/阿部九洲男
森田三郎兵衛/富田仲次郎
 速水孫太夫/山口勇
 速水真之助/立花伸介

映画概要

原作:城 昌幸「だんまり闇」
脚色:村松道平
監督:深田金之助
時間:58分

東映・大川橋蔵主演シリーズ作品リスト
01「若さま侍捕物手帖 地獄の皿屋敷」(1956)原作:『双色渦紋』
02「若さま侍捕物手帖 べらんめえ活人剣」(1956)原作:『双色渦紋』
03「若さま侍捕物帖 魔の死美人屋敷」(1956)原作:『おえん殿始末』
04「若さま侍捕物帖 鮮血の晴着」(1957)原作:「五月雨ごろし」
05「若さま侍捕物帖 深夜の死美人」(1957)原作:「だんまり闇」
06「若さま侍捕物帖 鮮血の人魚」(1957) 原作:『人魚鬼』
07「若さま侍捕物帖 紅鶴屋敷」(1958)原作:「紅鶴屋敷」
08「若さま侍捕物帖」(1960)
09「若さま侍捕物帖 黒い椿」(1961)
10「若さま侍捕物帖 お化粧蜘蛛」(1962)


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