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若さま侍捕物手帖・中編「五月雨殺し」(1947)+大川橋蔵主演・若さま第4作目 紹介と感想

城 昌幸『縄田一男監修・捕物帳傑作選 若さま侍捕物手帖』徳間書店, 2008, p193-369


あらすじ

夜間、浅草新堀橋を歩いていた若さまは、いきなり見知らぬ侍に斬りつけられた。若さまと対峙した侍は、そのまま闇に消えて行った。
侍の正体は分からなかったが、その後ろから商人風の男が歩いていたため、それが狙いかと若さまが後をつけてみると、質店・阿波屋の者らしい。
二日後、遠州屋小吉が阿波屋へ行こうとしている若さまへ、殺しがあったので来て欲しいと頼む。
殺されたのは、かつぎ小間物問屋の安次郎という男だった。
現場は、今は使われていない茶室風の廃屋だった。
若さまは死人の顔に見覚えがあった。それは、二日前に見た商人風の男だったのである。
現場には、小間物問屋には似つかわしくない結城織りの着物もあった。
果たして男は本当は誰なのか?
若さまは、些細な手がかりも見逃さず、事件の本当の姿を見つけていく。

紹介と感想

開始早々斬られそうになったからなのか、若さまが終始事件解決に積極的で、ほぼ全ての関係者に会いに行ってると思います。

話自体も、中編らしく事件を軸に人間関係を組み立てており、目的も最初に起きた殺人事件の解決がメインのため、かなりミステリーらしい展開です。

ミステリーとしては、そんなに難しいものではないですが、しっかり手がかりや疑問に思える描写を入れているのが良かったです。

登場人物については、謎の為に配置された人物という感じが少しあり、そこがちょっと残念でした。

若さまの出番も活躍も多く、楽しく読める捕物小説でした。

大川橋蔵主演04「若さま侍捕物帖 鮮血の晴着」(1957)

原作のエピソードを所々脚色して使いながら、全体の筋としては派手な強盗や権力者による犯罪を用いた、映画独自の物語を展開していきます。
監督が違うからか、過去作より捜査物ミステリー的な見せ方となっていました。

原作の長さに合わせたのか、映画自体も1時間程度でまとまっており、豪華なテレビ時代劇スペシャルを見ているような感じがあります。
大川橋蔵による若さまも大分板についてきて、秘剣一文字崩しもビシッと決まっています。

短い時間の中で、色々とイベントが盛りだくさんで中々楽しめました。

原作との主な違い(ネタバレあり)

・物語の開始は、店の者皆殺しの押込み強盗から始まる。
・若さまが夜に斬られる描写は無し。
・政略結婚のため引き裂かれた武家の結婚話も絡む。
・六左衛門が花嫁衣裳を手に持って亡くなっている。
・八代将監の義理の娘・お露をさらって閉じ込めている六左衛門、二重生活とかいう話ではなく、ろくでなしすぎる。
・そもそも、六左衛門も八代将監も大分悪い犯罪者になっている。

キャスト

   若さま侍/大川橋蔵

    おいと/星美智子
  遠州屋小吉/星十郎
  佐々島俊蔵/伊東亮英
     千造/岸田一夫
     太吉/国一太郎

  土居紀伊守/阿部九洲男
阿波屋六左衛門/徳大寺伸
     重蔵/富田仲次郎
    佐兵衛/水野浩
    忠兵衛/立花伸介
   おしゅん/浦里はるみ
    四郎吉/富久井一朗
    おかね/金剛麗子

映画概要

「若さま侍捕物帖 鮮血の晴着」(1957)
原作:城 昌幸「五月雨ごろし」
構成:村松道平
脚色:松本憲昌
監督:小沢茂弘
時間:59分

東映・大川橋蔵主演シリーズ作品リスト
01「若さま侍捕物手帖 地獄の皿屋敷」(1956)原作:『双色渦紋』
02「若さま侍捕物手帖 べらんめえ活人剣」(1956)原作:『双色渦紋』
03「若さま侍捕物帖 魔の死美人屋敷」(1956)原作:『おえん殿始末』
04「若さま侍捕物帖 鮮血の晴着」(1957)原作:「五月雨ごろし」
05「若さま侍捕物帖 深夜の死美人」(1957)原作:「だんまり闇」
06「若さま侍捕物帖 鮮血の人魚」(1957) 原作:『人魚鬼』
07「若さま侍捕物帖 紅鶴屋敷」(1958)原作:「紅鶴屋敷」
08「若さま侍捕物帖」(1960)
09「若さま侍捕物帖 黒い椿」(1961)
10「若さま侍捕物帖 お化粧蜘蛛」(1962)


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