マガジンのカバー画像

たたかう読書

46
「自分を守れる自分」を作るための読書。
運営しているクリエイター

#たたかう読書

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』(文春文庫)

作家であり、ランナーでもある著者が「走る」という行為を通じて自分自身を見つめ、それを「正直に」言葉にした一冊。
本書を手に取ったきっかけは、わたし自身も走ることを習慣にしようと思ったからだった。

著者は1982年の秋に走り始め、それから毎年必ずどこかのフル・マラソンの大会に出るほどのベテランランナーだ。週に60キロ、一ヵ月に260

もっとみる
桐野夏生『ハピネス』

桐野夏生『ハピネス』

桐野夏生『ハピネス』(光文社文庫)

若々しくて、綺麗で、セレブで、おしゃれで、ハッピーなママライフ。

桐野夏生『ハピネス』は、女性誌に頻出しているこれらの言葉を体現するような人たちが暮らす、東京都・江東区の五十二階建てのタワーマンションが舞台の物語である。

このタワーマンションに暮らす専業主婦の有紗は、娘の花奈と二人でタワマン生活を謳歌している。夫は海外に単身赴任しており、有紗の実家は新潟と

もっとみる
羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』は現代社会の現実と、皮肉と、ずるさを多分に感じられる物語である。

「もうじいちゃんなんて、早よう寝たきり病院にでもやってしまえばよか」(11頁)

二十八歳の孫・健斗は八十七歳の祖父のこの台詞を毎日のように聞いている。新卒で入った仕事を辞め、アルバイトで食いつなぐ健斗はフルタイムで働く母のサポートのた

もっとみる
2015年7月~12月読書まとめ

2015年7月~12月読書まとめ

みなさま、新年明けましておめでとうございます!

本年もどうぞよろしくお願い申し上げますm(_ _)m

新年初テキストノートは、去年の振り返りですw

トークノートにも書きましたが、2015年は読書目標の100冊を達成しました~!!(^◇^)

長くなりますが、たけしまの読書記録にお付き合いくださいませ!

*****

2015年1月~6月の読書まとめはこちらです(^◇^)↓
https:

もっとみる

桐野夏生『グロテスク』

桐野夏生『グロテスク(上)(下)』(文春文庫)

9月はだいぶんおさぼりモードで、お久しぶりのnoteになりましたm(_ _)m
シルバーウィークに伏見稲荷大社でおみくじをひいたら「焦らずにコツコツ努力しなさい」というお告げが出たので、引き続きコツコツゆるゆる更新していきます。

本書は「アメトーーク」の読書芸人で光浦靖子さんが紹介していた一冊。
都内の名門私立女子校が舞台で、とある少女(のちに成

もっとみる
浅田次郎『終わらざる夏』

浅田次郎『終わらざる夏』

浅田次郎『終わらざる夏(上)(中)(下)』(集英社文庫)

一年ほど前にnoteで紹介したいわた書店
(https://note.mu/mrn_123_mrn/n/nac918ea47122)
の素敵なサービス「一万円選書」が先週届いた。

今年のお正月に申し込み(約7ヶ月待ち…!)、やっと届いた11冊!どれを読もうかな〜とうきうきしながら背表紙のあらすじを流し読み、浅田次郎『終わらざる夏』を手に

もっとみる

桐野夏生『抱く女』(新潮社)
「抱かれる女から抱く女へ」ウーマンリブ、学生運動、連合赤軍事件が起こった1970年代、時代の流れに圧倒されつつも女子大生の直子は違和感を感じていた。女の生きづらさに戸惑い、反発しながら自分の居場所を探す直子に強く共感してしまう一冊。 #たたかう読書

能町みね子『ときめかない日記』(幻冬舎文庫)
26歳処女のめい子は、女としての自信を持つべくときめきを求める旅に出る。お見合い、出会い系、不倫、どれもピンとこないと思いつつめい子が得たものは…。本編とトヤマユキコの解説が呼応していてそれぞれ何度も読み返してしまう。 #たたかう読書

大瀧純子『女、今日も仕事する』

大瀧純子『女、今日も仕事する』

大瀧純子『女、今日も仕事する』(ミシマ社)

「ワークライフバランス」「自己実現」「バリキャリ」…どれもピンとこない女性たちへ

と書かれた帯とシンプルな装丁に惹かれて読んだ。

本書は著者の経験・苦労を通して女性の理想の働き方を説いた一冊である。これまで「たたかう読書」と称して自分の生き方働き方を模索するために読書をしてきたが、本書ほど「しっくりきた」ものはなかった。
母子家庭で育ったせいか

もっとみる
山田ズーニー『人とつながる表現教室。』

山田ズーニー『人とつながる表現教室。』

山田ズーニー『人とつながる表現教室。』(河出文庫)

山田ズーニーさん。あなたに、10年前に出会いたかった!

以前『おとなの小論文教室。』
(https://note.mu/mrn_123_mrn/n/nbad28ba3de5f)
を読んで著者の言葉に魅了された。10年前にウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」上で連載されたものを書籍化したものだが、わたしが高校生の頃に知っていたら…大学生の頃に出会

もっとみる

金原ひとみ「軽薄」(「新潮」2015年7月号)
成り行きのまま、軽薄に日々を過ごすことができてしまう日本で、どれだけの人が自分の軽薄さを認識しているだろう。強烈な成り行きに流され続けた主人公が生きることを体感する物語。主人公が得た生きる悦びが胸の奥にじわりと響く。 #たたかう読書

金原ひとみ『持たざる者』

金原ひとみ『持たざる者』

金原ひとみ『持たざる者』(集英社)

「蛇にピアス」ぶりの金原ひとみ作品。帯には「『蛇にピアス』から10年。」と書かれていて、「蛇にピアス」を読んだ高校生の時のぞわぞわ感と10年も経ってしまったショックが二重にやってきた。

代表作しか読んでいない自分のミーハー心を戒めつつ金原ひとみ『持たざる者』を読んだ。金原ひとみ『持たざる者』は東日本大震災から四年後、環境や行動を変えて過ごす四人の登場人物の感

もっとみる

百田尚樹『夢を売る男』(幻冬舎文庫)
出版物の売上は年々減少しているのに、本を出したいと思う人は増えている。人間の自己顕示欲につけ込む出版ビジネスを赤裸々に描いた一冊。noteで"ものづくり"をしている人は読むべき。始終顔を平手打ちされるような衝撃が待っている。 #たたかう読書

月村了衛『土漠の花』(幻冬舎)
海外派遣されたソマリアの地で、とある事故がきっかけで内戦に巻き込まれた自衛隊員達の生死の物語。初めての"実戦"、増える犠牲者、とっくに限界を超え気力で戦う彼らの脳裏にふと浮かぶ富士山…。世界の不条理と自衛隊の矛盾を描いた問題作。 #たたかう読書