見出し画像

ゼロから英語をマスターするより、ゼロから源氏物語を原文で読めるようになるほうが多分簡単だという話。

こんばんは。しめじです。

今夜は、まず、古典を読めるようにするために覚えていく必要があること、についてお話しします。

どちらかというと、これから古典を学んでいく高1向けの内容ではあります。しかし、果たしてNOTEって高校生は見るのでしょうか。という疑問もあったので、例えば古典を学びなおしたいと考えている人や、大人になって興味がわいてきたけど、今更勉強しなおすのもなあ…と思っているような方にも少しだけでも役に立てるように書いていこうと思います。(古典に出てくる日本語は殆ど異国語ですからね)

まず、英語でもスペイン語でも、古典に出てくる日本語でも、がーっと勉強して、ある時いきなりスラスラ読めるということはありません。ちょっと文法の理解を深め、語彙が増えたら、読めそうなものを読んでみる、を繰り返すしかありません。

いずれ、英語学習者向けの多読用書籍みたいに、読み易いものや大分慣れてきた人向けのものなどをランク分けして紹介したいなとは思っています。

さて、今夜は、まず初めに、ということで、「こういうことを知識として蓄えていくと読み易くなる」というものを三つあげようと思います。

すぐに丸暗記できなくてもいいので、テストでわからなかったり、あるいは実際に本を手に取って読んでみてわからなかったりした時に、辞書を見て、「あー、あったなー」と思える程度には見慣れておけば、どんどん読むハードルが下がっていくはずです。

単語

とにもかくにもこれは必須です。前後から考えてどうこうなるものでもないですし、前後の言葉もまた、前後から考えて、という無限ループに陥ります。知識はパズルのピースのようなもの。そもそもピースが手元になければ、どれだけ考えても組みようがありません。

高校生は、学校で買った(買わされた)ものでOK。まずはそれから始めましょう。

大人の方であれば、もしお子様やご親戚に高校を卒業した人がいれば譲ってもらってください。あるいは、押し入れの奥にご自身が高校生の時に使っていたものがあればそれでもいいと思います。そもそも1000年前の言葉を収録した本です。20年30年前のものと最新版とで、内容には大した差はありません。

どちらにせよ手に入らない、という方は、「novita 古文単語」で検索してみてください。古文重要単語400というページが出てきます。印刷してもいいですし、スマホでも見られます。

400というと多いかもしれませんが、大半は「見たことある言葉」です。言葉としては同じでも、今とは使い方が違う、という言葉が多いので、例えば今からアラビア語を勉強する、というのに比べればそんなに難しくはありません。

むしろ、人生経験を積めば積むほど言語経験も豊かになっていくので、高校生の時にあんなに覚えるのに苦労した古文単語が意外と簡単に覚えられる…ということも十分あります。

ちなみに、日本語学を学ぶなら必読(というか前提)と言える一冊に、金田一春彦の『日本語』というものがあります(上・下巻とあるので本当は二冊です)。そこに、こんなことが書いてあります。

岩淵悦太郎の『現代日本語』によると、たとえば、フランス語は1000語を覚えると、日常の会話は83.5%が理解できるという。ところが、日本語の方は1000語を覚えても、日常会話は60%しか理解できない。(中略)フランス語は、5000語の単語を覚えると、96%理解でき、あと4%だけ時点を引けばよい。(中略)日本語は96%理解するためには、22000語の単語を覚えなければならない、という数字が出ている。(上巻133頁)

また、占部匡美さんという福岡の大学にいらっしゃる先生の発表によると、日本語で5000語の単語を覚えても会話の80%しか理解できないそう。確かに実感としても、英語やスペイン語のほうが圧倒的にシンプルな語彙で会話や文面でのやり取りが成立するように思います(スペイン語はまた特殊な難しさがあるので、語彙の多様性だけをもって言語の修得難度を計るべきではないですが)。

それを思えば、古典は追加で400覚えれば大体行けるようになります。ゼロから英語をマスターするより、ゼロから源氏物語を読めるようになるほうが多分簡単です(あくまで個人の感想ですが)。

敬語

今私たちが読むことができる「古典」の多くは、貴族や武士など、身分が高い人の書いたものです。残念ながら、その辺の名もなき一農民の日記などはありません。(そもそも、国民ほぼ全員字が読み書きできるようになったのは歴史的に見て最近のことです。江戸時代の識字率は男子が40%程度、女子15%程度と推定している学者もいます。字を読んだり、書いたりできるのは、ある程度特権的なことでした)

したがって、古典には敬語が数多く登場します。特に平安の文章はさらっと天皇が登場したりしますので、まあそれはそれはすごい数の敬語が飛び交います。敬語が分かれば、誰と誰が話をしているのか、などもつかみやすくなるので、話の流れについていけなくなる、ということも減ります。

高校生のうちは、慣れない敬語のオンパレードに挫けそうな気持になると思いますが、本格的に敬語を授業で扱うようになるのは早くても1年生の秋から。今のうちから、おぼえずとも、嫌がらずに文法参考書の敬語のページを眺めておくと後が楽です。

大人であれば、生活の中で敬語を使っているので、圧倒的に高校生より早く覚えられます。今私たちが使っている敬語と、古典の単語のどれが対応しているのかを覚えればいいだけですので、大分楽だと思います。

助動詞

これが、地味に見えますが案外重要です。例えば、次の例を見てください。

タカシ君○○ハナコさん○○誘○○海に行○○。

という文章があった時、○○にはどんな言葉がはいるでしょう。

タカシ君がハナコさんを誘って海に行った。

タカシ君はハナコさんに誘われて海に行った。

タカシ君はハナコさんを誘って海に行きたい。

タカシ君はハナコさんを誘って海に行く気だ。

タカシ君はハナコさんに誘われて海に行くはずだ。

色々できますよね。

この例では、後半の○○二つの部分の役割を助動詞が果たしています。助動詞は、多くの動詞や形容詞にくっついて、それに色々な意味を付け加える。それが分かるか分からないかで、文章の理解度が大きく違うんです。

また、助動詞は字数が少ないものが多いので、他の言葉と紛らわしいものがたくさんあります。きちんと識別して読み取っていこうと思うと覚えることがたくさんありますが、ちょっとずつでいいので慣れていけば、必ずできるようになります。

というわけで、古典を読めるようになるために、柱になる三つの知識、「単語」「敬語」「助動詞」のお話でした。

今夜は、この辺で。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?