【小ネタ】監督交代前後の成績比較

昇格2枠、降格4枠という異例のレギュレーションはJ2に少なくない影響を与えている。こと監督人事に関しては積極的に動くクラブが多く、ここまで実に9つのクラブで監督が変わっている。

監督が変わって劇的に変わるチームもあれば、そこまで変わらないチームもある。という事で監督交代前後のチーム成績を平均得点、平均失点、 平均勝点という尺度で比較してみた。なお山口は名塚監督に代わってまだ2試合なので割愛した。

①V・ファーレン長崎

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平均得点 1.1→1.8
平均失点 1.6→0.7

勝点80を達成した手倉森長崎体制からほとんどの主力を慰留したことで「自動昇格候補の最右翼」と目された吉田長崎だったがスタートダッシュに失敗。リトリート志向のチームに即時奪回の意識を植え込んだことでバランスを崩し、毎試合失点を重ねたのが不調の主な要因だった。

13節からバトンを受け取った松田監督は自身の代名詞であるゾーンディフェンスの原則を落とし込むことで守備の改善に着手。平均失点は半分以下に減少、同時に複数得点も取れるチームに変貌した。「良い攻撃は良い守備から」と事あるごとに松田監督は語っているが、堅い守備から繰り出される鋭いカウンターは大きな武器となった。

ちなみに平均勝点2.2は普通に自動昇格のペースとなる。すごいぞ松田監督。

②モンテディオ山形

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平均得点 0.7→1.3→1.7
平均失点 1.1→1.0→1.1

今年は「降格を避けるための監督交代」が主だったが「昇格を目指すための監督交代」を実施したクラブが2つある。前述した長崎と、これから記述する山形だ。

昨シーズンの中盤以降はヴィニシウスアラウージョがフィットしたことで調子を上げていた山形、個人的には自動昇格を予想していたが序盤は大いに躓いた。長崎のように守備が崩壊したわけではなく、どちらかというと得点を取り切れない試合が多かった印象だ。そして奇しくもホーム長崎戦でカイオとエジガルの無慈悲砲を喰らって石丸体制は終焉を迎えた。

佐藤コーチが暫定監督を4試合務めたのちピーター・クラモフスキー監督が正式に就任した。グラフを見れば分かる通り、攻撃力がバイキルト状態となり7連勝を含む12戦負けなしで一気に勝点を伸ばした。山口、水戸に連敗したことで勢いを削がれたが監督交代は十分に機能したというべきだろう。来シーズンは生きるパルプンテことマルティノスをどう組み込めるか注目したい。

ちなみにクラモフ山形の平均勝点2.1も自動昇格ペースに乗っている。すごい。

③東京ヴェルディ

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平均得点 1.4→1.2
平均失点 1.6→1.5

永井監督は名目上「成績不振」を理由に解任されている。たしかに昇格を目指すには物足りない成績ではあったが、実際には報道されていたパワハラ問題の影響も少なくはなかっただろう。

ヴェルディはもう降格を心配するような立ち位置ではないが、堀監督に交代してからは上手く勝点を詰めていない。平均失点こそわずかに改善したが同じくらい得点数も減少している。来期も堀監督を継続するのか、また別の監督を連れてくるのかという点が注目ポイントになりそう。平均勝点1.0は結構厳しい。

④大宮アルディージャ

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平均得点 1.0→1.5
平均失点 1.3→1.2

大宮もまた戦力的には自動昇格候補と目されながらスタートダッシュに失敗したクラブの一つになる。ただ大宮の場合はさらに具合が悪く岩瀬体制では平均勝点0.7と降格ペースの成績だった。岩瀬大宮はわずか2勝で幕を閉じることになったが、なぜか長崎にだけ4-0と快勝しており、どうして岩瀬大宮がさっぱりダメだったの全く分からない。あれだけの選手層で、しかも馬渡がいてそうはならんやろという感じだが、ともかく15節で岩瀬監督をあきらめ霜田監督を招聘する。

個人的には霜田監督は「ロマンに殉じる」という印象が強かった。前所属の山口では若い選手を中心にアグレッシブで攻撃的なサッカーを展開していたが、一つ布をめくると儚い脆さを併せ持っており、劇的に勝ったり劇的に負けたりするイメージがあったので正直「大宮大丈夫か…」と内心思っていた。思っていたがデータを見せられた今、考えを改める必要がある。得点数を1.5倍にし、失点数は微減ながら改善している。平均勝点1.4なら残留はほぼ間違いなさそうだ。

⑤SC相模原

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平均得点 0.6→0.8
平均失点 1.4→1.1

2020シーズンの劇的な幕切れでJ2昇格を果たしたSC相模原だったが戦力的にはどうしても1枚落ちると言わざるを得ず、降格予想に挙げる人は少なくなかった。懸念通り三浦監督は開幕から苦戦を強いられることとなり、2勝5分9敗という成績で解任されることになった。

この相模原を残留へ導くのはどう考えてもベリーハードモードだが、そのミッションを引き受けたのは我らが高木琢也だった。もともと守備構築には定評のある監督で、5-4-1の人海守備とハードワークを土台に守備を立て直し失点数は1.1まで改善している。また夏の補強ではDeNAの十分な援助、また関東圏から近いという地の利を活かしながらJ1でベンチに座る有望な若手を大量に補強できた。「高木塾」と呼ぶべき体制は来期以降も継続できる可能性が高く、是が非でもJ2に残留してPO圏内を目指す足掛かりにしたい。シーズン終盤に控える金沢、北九州、群馬、愛媛、松本との6ポインターが重要であるのは言うまでもない。個人的にはめちゃくちゃ応援してる。

⑥ザスパクサツ群馬

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平均得点 0.8→1.0
平均失点 1.6→1.0

複数失点が多かった奥野群馬、平均勝点も降格ペースとなる0.8でシーズン中盤までは実際に降格圏に沈んでいた。しかし久藤監督就任後は劇的に守備が改善、ホーム東京V戦から6戦で稼いだ勝点12が大きく貢献して降格圏から脱出している。

このペースでいけばなんとか残留までたどり着けそうな感じだが残り9節の対戦相手を見ると京都、山形、長崎、町田、新潟、磐田…け、結構キツイとこ残してますね(´ρ`)

⑦愛媛FC

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平均得点 0.7→1.0
平均失点 1.7→1.7

非常に危ういのが愛媛。去年まで志の高い川井式ポジショナルサッカーを目指していたのでとても好印象だったが昨シーズン末に川井監督を解任(辞任だったのかな?)、今年から就任したのは和泉監督だった。正直どんな方なのか分からないうちに成績不振で解任となり、コーチだった元京都の實好監督が就任する。

一応、和泉監督時代と比べると平均得点がわずかに上昇しているが守備は改善できていない。平均勝点もギリギリ及第点の1.0で、まずは守備を何とかしないと残留は厳しくなってくる。先日長崎と対戦した時は「前線からプレスに行く気概はあるが間延びをうまく隠せない」という印象が強かった。

⑧松本山雅FC

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平均得点 1.0→0.8
平均失点 1.9→1.7

このグラフを作成して一番衝撃だったのは松本。愛媛も危ないけどそれ以上に松本のほうが危ないのかもしれない。

19シーズン末にJ2降格が決まり、それまで8年監督を続けてきた反町監督が退任。古今東西、長期政権のあとは上手く行かないもので、1年でのJ1復帰を至上命題にした20シーズンは序盤から大苦戦。途中から就任した柴田監督で松本らしさに復活の兆しが見えたものの13位フィニッシュ。シーズンオフには26人OUT23人INという、いつぞやの千葉のようなレボリューションを発動させて21シーズンこそという思いでのぞんでいた。

が、昨シーズン末の好調は選手の入れ替えとともにどこかへ行ってしまったのか、柴田松本はまたも苦難の船出となる。何がまずかったのか内容までは分からないが、昇格を目指すチームにしては平均失点1.9はあまりにも多すぎた。途中3連勝なども挟み上昇のきっかえにできるかと思いきや波に乗れず、結局19節終わった段階で柴田監督は解任。そして就任したのは名波監督だった。

そこから名波監督が持つ人たらしな性格とかマインドが自信を喪失したチームに上手く作用して浮上する…かと思ったが実際には柴田松本よりも戦績は悪化している。平均勝点0.9は普通に降格ペースとなる。失点こそ多少改善したものの、得点も同じくらい減少している。さらに残留の切り札になるはずだったセルジーニョが怪我で4週間離脱。

「いやいや、さすがに松本が降格はないっしょ」とどこかで高を括っていたがこのグラフを見ると怖くなってきた…でもさすがに松本降格はないっしょ…

⑨おわりに

この記事は「うちの松田先生すごいでしょ!もっと褒めて!!」という邪な気持ちを原動力に書き始めたが、このグラフ結構面白いなという事で他に監督を交代したクラブについても記載してみた。

サッカーを攻撃と守備に分けて捉えるのはナンセンスかもしれないが、監督を交代する場合は攻撃か守備に特化した"型"があった方が上手くいきやすいのかもしれない。

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