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✓弁当屋さんのおもてなし-ほかほかごはんと北海鮭かま-/喜多みどり

▽あらすじ
「あなたの食べたいもの、なんでもお作りします」
恋人に二股をかけられ、傷心状態のまま
北海道・札幌市へ転勤したOLの千春。
仕事帰りに彼女はふと、ひっそり佇む
『くま弁』へ立ち寄る。
そこで内なる願いを叶える「魔法の弁当」の
作り手・ユウと出会った。
千春は凍った心が溶けていくのを感じて・・・


▽印象に残った文章

新しい場所で新しい事をして。
その先に、新しい自分がいるんだ。

昨日知らなかった場所が、今日は知っている場所になった。

お弁当を開けたら、そこが家庭になる。


▽感想
千春がお弁当を食べる描写がとてもおいしそうだった。

千春は苛立ちのままぶっすりと鮭かまに箸を突き刺し、
そして結局身をほじくり出した。
左手も使い、骨からこそげとった身を、一口食べる。
・・・美味しい。
脂はよく乗っているが、焼き方のおかげかべたべたした感じはしない。
鮭の豊かなうまみが口の中に広がる。
ご飯が食べたくなって、交互に食べていくと、
腹の底から、じわじわと熱がこみ上げてくるような感覚が生まれる。

スマホを見ながら鬱々とご飯をただ
口に入れているだけだった千春は
このお弁当のおかげで、
両手で鮭かまにしゃぶりつき、
ただただ美味しいと食べるを繰り返している
千春をみたら食べるって大事なんだなと思えた。

食べる時は食べる、食材を感じて
誰かがいれば誰かと話をして
食事がどんなに大切なのか考えさせられる。

千春だけじゃなく、くま弁にやってくる
お客さんのために作るお弁当は
ただのお弁当かもしれないけど
誰かの心を満たしてくれている。


✓弁当屋さんのおもてなし-ほかほかごはんと北海鮭かま-/喜多みどり/角川文庫


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