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✓鹿の王(上・下)

▽あらすじ
上巻:強大な帝国・東乎留(ツォル)
にのまれていく故郷を守るため、
絶望的な戦いを繰り広げた
戦士団<独角(どっかく)>。
その頭であったヴァンは、奴隷に落とされ、
岩塩鉱に囚われていた。
ある夜、一群れの不思議な犬たちが
岩塩鉱襲い、謎の病が発生する。
その隙に逃げ出したヴァンは
幼子を拾い、ユナと名付け育てるが――

下巻:不思議な犬たちと出会ってから、
その身に異変が起きていたヴァン。
何者かにさらわれたユナを追うヴァンは、
謎の病の背後にいた思いがけない
存在と向き合うことになる。
同じ頃、移住民だけが
罹るとされる病が広がる王幡領は、
医術師ホッサルが懸命に
その治療法を探していた。

▽印象に残ったフレーズ

「命ある者はみな、いずれ必ず死にまする。
大切なのは、与えられた命をいかに
生きるかであって、長短ではござりませぬ。
穢れた身で長らえるより、
清らかな生を心安らかに全うできるよう
私共祭司医は微力を尽くしているのでござりまする」
「清心教の持ち出す神の道理というのは、
そのあきらめを患者と身内に納得させ、
自らの無力を納得するために
生み出した究極の理屈だ」

人は、自分が思いたいように
出来事をこじつけるものだ。

病に情けはない。善悪も関係ない。
だからころ恐ろしいのだ。

▽感想
大変おもしろい小説だった。
病の成り立ちからヴァンたちが生きている
今に至るまでの経緯が政治を絡めて
分かりやすく書かれていた。
ツォルのせいで移民が発生し、
人や動物が動き、土地や環境が変わり、
病の生態系も変わる。
ツォル民が病に罹り、死に、
アカファ民だけが助かる理由。
ツォルとオタルの医療の根本的な
考えというか認識、捉え方の違い、
自分の国を取り戻したい民たち、
そんな思いを、物語にしたのが凄すぎる。

国や習慣が違うだけで、
生きる運命が変わってしまうという
下りが今の地球全体にも
起きている事実なんだよなあと思った。

ヴァンとホッサルの視点交互で
話が進み、お互いも違う場所にいるのに
一つの真実に向けて、ヴァンとホッサルが
どんどん一つの点に向かってくる。
その向かう過程で病の原因や、
流行した理由、移民たちの気持ちなど
読んでいて「なるほど~~」と
言わずにはいられなかった。

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納得できます。

鹿の王(上・下)/上橋菜穂子/角川書店


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