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✓キャベツ炒めに捧ぐ

▽あらすじ
東京の私鉄沿線のささやかな商店街にある
「ここ家」のお惣菜は、とびっきり美味しい。
にぎやかなオーナーの江子に
むっつりの麻理子と内省的な郁子、
大人の事情たっぷり抱えた3人で切り盛りしている。
彼女たちの愛しい人生を、幸福な記憶を、
切ない想いを、季節の食べ物と共に描いた物語。

▽印象に残ったフレーズ

人生から何かが消えていくのは
さびしいものだ。
それが取るに足らないもので、
気づかぬうちに消えてしまう物ならなおさら。

ひとは何かを得た瞬間に、
それを失う危険も得るのだ。
それがいやなら、
最初から何も受け取らないしかない。

▽感想
・夫(のせい?)で息子を失ったと思っている
・ずっと好きだった人に振られても思い続けている
・結婚して同じ職場の人に主人を取られる

もう少し本の中では詳細に語られるけど
3人の抱える大人な事情はこんな感じ。
これが本を読むにつれて徐々に明らかになる。

どれも苦しいけど、のらりくらりと
それを受け入れながら日々を過ごしていく。
嫌な思いをさせられたと相手が思っている
その気持ちにかこつけて、前の旦那さんに
気まぐれに電話をしてしまう江子には
同情もしちゃうし、奥さんにも気を遣って
あげたらいいのにと両方思ってしまう自分がいた。
自分は悪くない上に、まだ好きだもんね…

たかが風邪でくらいで病院に
行かなくてもいいよと言った矢先に
肺炎で息子をなくしてしまう郁子。
前に進めそうなときに限って
その話を引き合いに旦那さんに当たってしまう。
とてもいたたまれないと思って読んでいた。

この二つはもしかしたら一番近い未来で
ありえるかもしれないという意味で
感情移入が一番できてしまった二人。

3人ともしっかりキャラクターがあってよかった。
3人ともパワフルなので60代というのが
まったく想像できずに読み終わってしまった笑

キャベツ炒めに捧ぐ/井上荒野/角川春樹事務所

↳試し読みもありますので、ぜひ

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