かんだ(ひ)

むかしFE二次創作サイトを管理していました。 いまはぽつぽつ二次創作を書いたり、昔書い…

かんだ(ひ)

むかしFE二次創作サイトを管理していました。 いまはぽつぽつ二次創作を書いたり、昔書いたものをアップしたりです。 主に聖戦の系譜とトラキア776

マガジン

  • 聖戦とトラナナのおはなし(二次創作)

  • ティニーの首飾り

    父親別ティニーの首飾りの話

  • せいせん(し)のおはなし

    聖戦の系譜に出てくる12聖戦士の名前の入った話をかきました。トラナナ含みます。

最近の記事

喪の昼餐(ブルームの話)

※2010年にサイトにあげていたお話の再掲です。 ========  アルスター王妃エスニャの死の知らせを聞いた時、ブルームはひとこと「うむ」と返したのみだった。人を下がらせ、一人になると、きょうだいで一人だけ取り残されたという感傷に人目を気にせずに浸った。いまのブルームはフリージ城にいることは稀だが、たまに戻ってきたこの城でその知らせを受け取ったことも感傷を深める一因である。  感傷は追想となって、あれこれと昔のことを思い出す。例えば、バーハラの学舎にいた頃、こんなこと

    • 弟の妻(エーディンの話)

      明確なカップル表現はありませんが、国の継承具合からある程度は前提カップルが限定されますことご了承ください。本創作では ・パティがユングヴィ継承 ・レスターもユングヴィにいる ・パティは遠くに恋人がいる となっております。トラナナ要素を含みます。 ーーーここより二次創作ーーー  姪が継いだ懐かしい故郷ユングヴィに戻る。遠く城を認めた時から目の奥がじんと痺れた。若きあの日に突然破られた平穏、踏み躙られた住みなれた城、次女の悲鳴、騎士の死体、聖なる弓を抱えたまま攫われた以来戻る

      • 弟の結婚(エーディンの話)

         アンドレイの結婚はユングヴィにとってどのようの意味を持つのか、エーディンにはよくわかっていない。  姉の不在がこの家にもたらしたものはあまりにも大きい。ひたすらに姉の生存を信じ待ち続ける父。その父を立てつつも、姉が戻らないことも見越して蠢く臣下の派閥。弟の母(父の妾である)は出たがり人ではなかったが誰かは野心を吹き込む。それを牽制していたであろうエーディンの母、つまり父の妃はすでに他界している。エーディンは聖堂で姉の帰りを祈り暮らした。姉の帰還、それだけ考えていればよかった

        • フリージの宝石箱

          いつか何かのために書き溜めたもの。ティニーの首飾りを書いたので、ほかの人たちも… ======= ライザの耳飾り  大きな耳飾りをつけると彼女の気持ちは一層引き締まる。  いつだったか、イシュトーが伸ばした手を止めて、「それがあると頬に触れられない」と言った。そして彼女の頬に触れようと伸ばされた指先を戻して「余計なことを言った」、と彼は言うのだ。いつだったか、この耳飾りは鎧のようなものだと話したことがあるのを思い出したのだろう。この耳飾りをつけている時の彼女が武人でありた

        喪の昼餐(ブルームの話)

        マガジン

        • 聖戦とトラナナのおはなし(二次創作)
          19本
        • ティニーの首飾り
          3本
        • せいせん(し)のおはなし
          6本

        記事

          シレジアの花嫁(セティ、カリン、ミーシャ)

           リーフの軍に合流してから、セティは長い話をカリンから聞かされた。ミーシャからも話は聞いた。セティが初めで出会ったその天馬騎士は、カリンと比べなくても寡黙であり、必要なことしか話さなかった。そしてセティには、必要なことすら話してくれていないように感じた。  シレジアの飢えたこどものたちのために戦っていた彼女からみて、王子という立場でありながら父親を捜して国を出た自分がどのように見えているかは、彼女の冷たい視線が物語っている。いや、彼女の視線を冷たく感じるのは、単に自分の後ろめ

          シレジアの花嫁(セティ、カリン、ミーシャ)

          呟けるというので

          呟けるというので

          雨4(ヨハンの話)

           こういう時のヨハンは頼りになる。  普段は謎の詩情を溢れかえらせているので分かりにくいが、彼は自身の武勇や戦場での指揮のみならず、後方支援にも秀でている。その日、雨の中の敗戦、続々と戻る各部隊の受け入れの差配を的確に素早くこなしている。  雨が止み、戻るべき部隊がおおかた戻り(しかし失われたものは多い)、山崩れで戻れない部隊の救援の部隊が城を出たころ、ようやくヨハンは一旦休んだ。  「お疲れ様」  そう声をかけるとヨハンは疲れてはいない、と言う。雨の中歩き回ったヨハンはずぶ

          雨4(ヨハンの話)

          雨3(ジャンヌの話)

           てのひらに力が入らない。指が動かない。先ほどから湿った布を絞り続けているが終わりがない。  ずぶ濡れの兵士たちが次々と戻る。体が冷えないように濡れたものは脱いでもらう、乾いた布で体を拭ってもらいたいが、足りず、体を拭って重く水を含んだ布を次の兵士が使う。やがて水が滴り落ちて役目を果たさなくなる。あちらに火が、あちらに飲み物が。ここには布が。布が。もう乾いた布はない。ジャンヌは搾り続けて力の入らないてのひらを自分の腿に叩きつけた。  負け戦はある。しかし今回解放軍が負けたのは

          雨3(ジャンヌの話)

          風をかたどる(ユリアと彼女の愛するひと)

           ※このあいだアップした「ひとりではしる」ののちの話。 _______  庭を歩くだけなのに着膨れてしまって、そんなユリアを彼は笑っていたけれども、いざ歩き始めると彼は「寒いな」と言い出した。ユリアは襟巻きに顎を埋めて、ふふと笑う。秋の庭は色づいた木々が吹く風に葉を舞わせている。明日になれば葉はかなり落ちてしまっているのではないかとそんな気がした。  庭師は毎日落ち葉を掃いているが、これでは追いつかない。追いつかなくても、庭師は葉を掃く。そうやっていつもこの庭は美しい。  風

          風をかたどる(ユリアと彼女の愛するひと)

          ひとりではしる(戦後のユリアの話)

           城の広い庭をユリアはひとり走り走り斜めにつききった。先程彼女は何かを見たのだ。白い影が南東の角にある大きな柳の木の下でふらりと揺れた。  ユリアはそれを母だと思った。そんなはずないと分かっていたのだが。  柳の元に至ってみるとそこにはやはり誰もいない。風が吹いて、ゆらゆらと枝葉が揺れている。ユリアは右を見て、左を見て、それから空を見た。息が上がって苦しい。枝の向こうに、太陽が輝いている。母はいない。胸が潰れるように苦しい。  そんなユリアから少し距離を置いて、従者が控えてい

          ひとりではしる(戦後のユリアの話)

          菊三株、そして(ティルテュとブルーム)

          可憐で素朴な菊の花がフリージの庭には咲いていた。元々は母が植えた三株だったと言われているが、随分と増えてこんもりと茂っていた記憶がある。皆はその花を西の菊と呼んでいた。本当はなんという花なのかティルテュは知らない。西の菊だというのだから、アグストリアに咲く花かもしれないと思っていた。 彼女は久しぶりにその花を見た。兄が持ってきたからだ。兄はおもむろに包みを取り出して、その中から一株、萎れかけた菊が出てきた。根がついていて、土が兄の足下にこぼれ落ちた。花弁は欠け、全体的に萎れて

          菊三株、そして(ティルテュとブルーム)

          転移魔法

           その日の戦場は過酷であった。雨が降っていた。雨の中ラナは杖を振り続け、しまいには杖に封じられた癒しの力が尽きた。何も答えなくなった杖をラナは見る。薄く濁った水晶に雨の雫が流れていた。その水晶が、うっすら光った。いや、違う。光ったのはラナの周りの地面で、水晶はその光を鈍く返したに過ぎない。転移魔法である。  ラナは転移魔法で拠点に戻されたのだった。たしかに、あれ以上戦場にいてもラナは役には立たなかったろうが……。  「ラナ、大丈夫?」  休んでいるとラクチェがラナの様子を見

          夕暮れ 川辺にて(アグストリア解放戦争中 アレスとデルムッド 、ナンナ)

          アレスは絵になる男だ。その髪が陽に透けるとまるで光そのもののようで、しかし彼が纏っている鎧は闇そのもののよう。長身がとにかく映える。特に日が傾きかけた光の中のアレスは本当に絵になる。ゆったりと流れる川の面は象牙色に輝いて、岸に立つアレスはそれをぼんやりと眺めているようだったが、デルムッドの視線に気付いたらしい。顔を上げて不機嫌そうな声で言った。 「何を見ている」 「いやぁ、見とれてたんだよ。アレスは絵になるな、って」 言うとアレスは露骨に不機嫌そうな顔をする。外見の美しさを指

          夕暮れ 川辺にて(アグストリア解放戦争中 アレスとデルムッド 、ナンナ)

          吉報(戦後のセティとホークの話)

           このところの難提は王の結婚である。そろそろしてもらわなくては困るのだが、相手が難しい。各国の王たちのように先の動乱で決まった人と結ばれいれば、諸々の問題は起こっただろうが押し通せた。なのに王にはその気配はない。やはりまだ独身でいるフリージ公ティニーといい仲だったのではないかという噂もまことしやかに飛び交っているが、実際のところはわからないし、もしそうだったとしてもフリージ公はフリージを離れないだろうし……と思っていたところに大きな知らせがきた。  王に呼ばれで行くと、いくつ

          吉報(戦後のセティとホークの話)

          希望と身勝手(コープルの話)

          「コープル……あなたには大変な思いをさせてしまったわね」 アルテナはそう言うが。 「気遣ってくれてありがとう。私は大丈夫よ」 アルテナはそう言うが。  コープルはとにかくアルテナのことが好きだった。アルテナは美しい。アルテナは強い、アルテナは優しい。好きにならない要素がない。とにかくコープルはアルテナが好きだった。  アルテナはトラキアの王女である。いや、王女であった。トラキアは希望を持ちにくい貧しい国だが、アリオーン王子とアルテナ王女が次代を率いていくと思うと未来は明る

          希望と身勝手(コープルの話)

          ノディオンの花嫁(1)

          書きかけです。本編開始前のノディオンの話  ==================== 「一度会ったことがある。印象? 礼儀正しく知的で品のある女性だった」  そう兄は言う。礼儀正しく、知的で、品のある……とラケシスは頭の中で兄の言葉を姿にしようと思ったが、うまく像が結ばれない。  「髪の色は?」  「栗色」  「目の色は?」  「栗色だったと思う」  「声はどんな感じ?」  「落ち着いた感じだな。ラケシスよりは低くて、ラケシスよりゆっくりと話す」  自分は早

          ノディオンの花嫁(1)