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大人の階段を上る話!

「大人になんか~ならないよ~らしくないのがいいところ~♪」
オバケのQ太郎の曲だ。
そう、私は元来大人にならない為に勉強し、必死に努力をして来た!
私だって大人になんかなりたくないのだ!!!
今日はそーゆー話だッ!!!


子供の頃、私の周りにいた友人たちは口をそろえて「早く大人になりたい」妖怪人間ベムのような事を言っていた。
「ガキ扱いされるのは嫌だ」とか「子供なんてまっぴらだ」とか
私はそれを聞く度に不思議でたまらなかった。


なぜ、大人になんかなりたいのだろう。
圧倒的に子供の方が楽ではないか!
昼はのんびりお昼寝し、会社も無ければ仕事も何にもない。(妖怪人間ベムに対抗してゲゲゲで攻めてみました)
完全なる保護の下、自由気ままに遊び回る事が出来る。これ以上の幸福は無いはずと私は小学生の頃から常々思っていた。

私にとって大人の象徴と言えばコーヒーだった。


嗚呼、思い出すだけで唾液腺から気持ちの悪い涎が染み出してくる。
黒くてドロドロとした苦い飲み物。
子供は決して口にしてはならず、一度でも口に含もうものなら苦みで悶絶し、後悔のうちに絶命必死。
大人はみんなあれをごくごく飲んでいるのをみて、口を付けて見たりしたが、とても呑めたものではない。

こんなまずい物を大人はごくごく飲んでいるのか驚き、私はきっと大人のリーダー的な奴から命令され、渋々飲んでいるに違いないと思っていた。


そんな下らない妄想が間違いだと気づいてからも、大人になりたくないという気持ちはずっと変わらず、年々強くなっていた。(中学の時は少し揺らいだ。主にエロ関連で)
大学生になる頃には、大人が責任塗れだったり、なんやかんや制約が多い事などが明確に分かり始め、気持ちは最大限まで達していた。

20になる前の晩、私は部屋の窓を開けておいた。
無論、ピーターパンがやって来る最後のチャンスだからだ。
しかし、残念なことに私の部屋には逃げた彼の影が迷い込むことも無く、ネバーランドの代わりにガラの悪い田舎の成人式へ行く羽目になった。

そうして、私は法律上成人つまりは、大人になり、大学を卒業して去年からは社会人。名実ともに大人の仲間入りである。
厚生年金も払い、社会保険にも入っている。小学生の私がみれば卒倒しそうなほど大人である。
私は一言も大人にしてくれと頼んでいないのに………

私の仕事は基本的に事務だ。ずっとパソコンの画面を睨んでいたリ、キーボードをひたすら連打したりする。単調なのだ。
加えて私は朝が極端に弱い。(昔から10時始業、もっと言えば13時始業でいいと思っている)
午前中の業務など、ほぼ半分は睡魔との戦いである。眠気を覚ます為に少し体を動かしてみたり、頭の中で音楽を流して見たり。
しかし、そのどれも悉く失敗した。

そんな時私はふと思い出した。
大学時代の後輩が「眠気冷ましにコーヒーを飲むんですよ」と言っていた事を。
因みに私は未だに相も変わらずコーヒーが飲めなかった。
理由は至極単純、苦すぎるからだ

中学校時代にイキった同級生連中が無理して缶コーヒーを啜っているの見て、影で憐れんでいたし、大学時代には積極的に【コーヒー不要論】を説いて回った。
表ではコーヒーが飲めない事に対して何ら負い目を感じていない様に振舞っていた(いや、それどころかコーヒーを飲んでいる奴は基本的にカッコつけだという暴論まで吐いていた)が、やはり少しばかり憧れはあった。

だって、小説やこのエッセイを書きながら自分で挽いたコーヒーを飲むなんてかっこよすぎるではないか!!
しかし、何度トライしてみても体が受け付けない。口の中に広がる苦みが全身をぞくぞくっと震わせて二口目まで口を付けさせてくれないのだ。

砂糖やミルクを入れればいいじゃんと思ったそこの君。私だってそんなこと何度も言われた。しかし、それではコーヒーを飲む意味が無くなってしまうではないか!
私はあの苦みがあってこそコーヒーであると思っている。わざわざ甘くしてまで飲むほどコーヒーに恩を売っていないのである。


だから、今度もほとんどダメ元のような気分であった。
自販機でブラックコーヒーを買い、飲んでみた。
やはり、苦い。耐えられない苦さだ。
しかし、この不快感が眠気をすっ飛ばしてくれた。
それになんだか、調子がいい…………


その日から、私はコーヒーが飲めるようになった。

(勿論、好んで飲もうとは思わないが)

案外飲めるもんだな、と嬉しい気持ちになってハッとする。
上手い具合に大人の階段を昇らされてしまっているのでは……!?
大人の階段をまた一段、無理やり引っ張り上げられたような気分になり、嬉しさ半分、寂しさ半分。

もしかすれば、数千人ほどはこの日本に私と同じく大人なんかになりたくないと思っているだらしのない奴(ごめん)がいるかもしれない。
しかし、そんな彼らもこうやって無理矢理階段の上から引き上げられ、大人の階段を昇らされていくのかもしれない………南無南無………

PS:こんなことで大人になった気分に陥るぐらいにはまだまだ子供です。

【告知】
近いうちに某所で上げている短編集をnoteにも乗っけます。続報を待たれよ

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