【ブランド責任者・EC担当者向け】2024年版Amazon販売の教科書
今回、これまでの運用経験をもとにメーカー・小売店がAmazonで売上を作っていくための知識を教科書のようにまとめようと思います。
本noteの対象者は、ECの委託や内製化で課題を感じているマネージャーの方、年度が替わり新しくEC担当になった方、これまでECを運用していたが知識に不安がある方です。本気で読めば1時間もかからないかと思いますが、理解して落とし込むと今後のAmazon販売に必ず役に立つであろうことをお約束します。
2020年にコロナ襲来という大きな社会情勢の変化があり、ECへ参入する事業者様が一気に増加しました。それまではECへ出せば売れるという状態でしたが、現在ではただ出店しただけでは売れないという状況になっています。その中でも売上を伸ばせているのは、その環境変化に対応している事業者様です。
そしてそのためには、最低限ECで戦っていくための知識が必要になります。本noteがその一助になればと思います。
また、こちらは企業ナレッジとは別に個人で試行錯誤している中でまとめたものであるため、所属企業で教わることとは一致しないですし、内部情報を晒すような内容ではないことを注釈として記載しておきます。
用語解説
内容に入る前に、Amazon特有の用語があるためここで解説いたします。
一般的に使われる広告用語(ex. IMP, CTR, CVR)は割愛して、Amazon特有の用語に絞って解説します。
ASIN
Amazon特有の商品識別番号。AmazonではこのASIN単位で商品ページが作成されます。Amazon上におけるSKU番号というイメージで問題ないです(厳密には同一SKU(=同一商品)で複数ASINが作成できるのですが、これを使うケースは限られるため本noteでは触れません)
FBA
Amazonが提供しているロジスティクスサービスFullfillment By Amazonの略。簡単にいうと、Amazonが販売事業者へ提供している有料の倉庫&配送サービスです。事前にAmazonの倉庫へ商品を置いておくことで、Amazonの売りである当日/翌日配送が実現できます。
バリエーション
Amazonでは複数のASINを一つにグルーピングして商品ページを公開することができます(ex. S/M/Lサイズの展開、複数カラーの展開)。これをバリエーションを組むと言います。バリエーションを組むと、商品ページがまとまるのと合わせてレビュー数も合計されます。
さて、それでは本題に入っていきましょう。
Amazonについて基礎知識をお持ちの方は8以降からご覧ください。
1. そもそも自社ECかECモールか?
まずECを始めようと考える際、大きく自社ECとECモールのどちらかを選択します。自社ECにはフルスクラッチ型、shopifyのようなクラウド型、ebisumartのようなパッケージ型、他カート一体型LPと様々ありますが、本noteではまとめて自社ECと定義します。ECモールはAmazonや楽天市場、Yahooショッピング、Qoo10のような特定の事業者が提供しているECプラットフォームです。まず自社ECとECモールの違いを挙げていきましょう。
a. 集客
ECモール
プラットフォームの知名度、利便性で集客できる。ECモール自体もプロモーションを打っていることや配送が早いことが多いことからも、ECモールしか利用しない消費者も一定いる。
自社EC
ブランドや商品を押し出し、広告やSNSなどで自ら集客が必要。集客方法の自由度はある分、集客のための労力は大きい。
b. 集客後の導線
モール
モールのUIに沿ったユーザー行動のパターンがある。
自社EC
コンテンツを自由に変更することで、ユーザー行動を変えていく/誘導していくことが可能。
c. 商品陳列、ブランディング
モール
モールの仕様に従った商品陳列(=商品ページ公開)をしなければならず、デザインに制限がある。
自社EC
自社のブランディング、商品コンセプトに合わせて自由な表現が利用できる。
d. ランニングコスト
モール
プラットフォーム手数料が発生するが、受注管理や倉庫システムなどプラットフォームが一定用意をしていることで、人手が比較的少なくて済む。その代わり一定の手数料が抜かれる。
自社EC
EC販売における周辺の仕組みを自ら導入、運用していく必要がある。その代わり利益率コントロールしやすい。
ざっくりですが、このような違いがあります。もちろん細かい点は他にも多々ありますが、、、。それらを踏まえたうえで、
総合的な結論
私が考える結論は、「可能であれば自社ECもECモールも両方やるべき。難しい場合は商材ごとに優先度をつけて運用する。」です。
なぜなら、ECモールと自社ECに訪問するユーザー属性が異なるためです。また、現代において事業者視点では自社ECもメリットがありますが、消費者視点ではメリットがないことが多いです。そのため、自社ECを運用する場合は以下のような消費者視点のデメリットをCXの工夫等で別途対応することが必須となります。
自社ECの主なデメリット(よくあるケース)
配送がモールより遅い。送料もかかることが多い。 その割に価格がモールと変わらない。
対策例:定期便のオファーなどで差別化する
モールでは多くのカテゴリをカバーしているが、自社ECは特定の商材しか買えない。
対策例:限定商品などを販売する
ECを日常的に利用する人について、モールならそのプラットフォームの初回登録のみだが、自社ECではショップごとに都度会員登録をしなければならない。
対策例:SSO(CRM施策考えると2023年時点ではLINEがベター)、EFO
もし自社ECとECモールの併用が難しい場合は、以下のように商材別で媒体を採用していきましょう。基本的に併用できないケースとしては、予算が限られているor人的リソースが限られていることがほとんどの理由のため、以下のように商材に応じて取捨選択をしていくことを推奨します。
LTVが高い商品(例:サプリ、化粧品):自社EC
ブランディングに力を入れる高単価商品(例:高級バッグ、アパレル):自社EC
1000円以下の低単価商品:自社EC
手数料で利益が出ないことがほとんどのため
それ以外:ECモール
このような形でECモールを選択した後は、次はどのECモールから取り組むべきかを考えます。
2. ECモールの選び方
そもそもECモールにはAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、Qoo10など多数ありますが、できるのであれば基本的にこの4つは出店した方が良いです。そのうえで絞るのであれば、多くの場合Amazon一択です。
主な理由は流通総額が国内トップであること(2023年時点ではAmazon楽天の2強)と、Amazonは今後SNS機能やCRM機能の拡充が予測されているのに対して楽天は改悪ニュースが多めであることです。
とはいえ、ターゲット属性によっては
一応主要ECモールの各社違いも記載しておきます。
ECモール間の違い
流通総額(推定値含む)
Amazon:約7兆円
楽天:約6兆円
Yahooショッピング:約1.7兆円
Qoo10:約2500億円
ZOZOTOWN:約5000億円 ※自由出店ではないので以降割愛
メインユーザー層
Amazon:10-50代男女(他ECモールと比較して相対的に幅広い)
楽天:30-50代女性
Yahoo:30-50代男性
Qoo10:10-30代女性
特に売れやすい商材(基本まんべんなく売れますが)
Amazon:家電、おもちゃ、雑貨
楽天:食品、アパレル、家具
Yahoo:スポーツ用品、カーパーツ
Qoo10:コスメ・アパレル
サイト構成
Amazon:商品カタログベース
商品ごとにストアが紐づいており、1商品ページに複数ストアがいる状態
楽天他:ショップベース
ショップごとに商品が紐づいており、1商品ページに1ストアがいる状態
商品ページ構成
Amazon:シンプル
楽天他:カスタマイズ性が高い(Amazonと比較して)
店舗維持・販売手数料(他に販促費用等オプションで発生します)
Amazon:月額の店舗維持費用あり、販売手数料あり
楽天:月額の店舗維持費用あり、販売手数料あり
Yahoo:月額の店舗維持費用なし、販売手数料なし
Qoo10:月額の店舗維持費用なし、販売手数料あり
3. Amazon市場基礎知識
ここまででAmazonに絞って検討していくことが決まりました。ここからはAmazonで販売するにあたっての基礎知識を理解していきましょう。
基礎知識(3C観点)
まずは、3Cにおける顧客(Customer)観点で見ていきます。ここでは、Amazonに来るお客様の思考や行動、市場規模の測り方を見ていきます。
まず、Amazonを利用するお客様には以下の特徴があります。これらを後述する販促の際に考慮する必要があります。
基本的には何かしらの商品または商品カテゴリにあたりをつけて購入するために訪問する人(健在層)が多い。
商品自体をすでに意思決定している、または何かしらの判断基準(価格、品質、デザイン等)でこれから商品を決める、等
6-7割くらいの訪問ユーザーは検索から購入している。
検索順位をハックすることがとても重要。
基本的に夜18時以降に購買行動が活発になる。
18-24時にかけて売上が伸びる傾向があり、日中と23時台を比較すると2倍程度も売上に差が出る。
次に、市場規模の測り方です。Amazonではキーワードの検索ボリュームで市場規模を測ります。キーワードの検索ボリュームは、以下のような方法で調べることが可能です。
狙いたいKWの販売実績がない場合
ブランド分析“検索キーワード”の検索順位とセラースプライトから想定する月間検索数を推定する。
ブランド分析の”上位の検索用語”を利用する場合の検索順位と月間検索数の目安
検索順位が~10位:100万回/月の検索数
検索順位が1000位:10万回/月の検索数
検索順位が10000位:2.5万回/月の検索数
検索順位が50000位:1万回/月の検索数
IMPは検索数×20くらい
ブランド分析のインプレッションは広告を除くインプレッション数(広告込みの商品数だとスマホ27商品/ページ・PC61商品/ページ、かつスマホ:PC比率が6:4だと仮定するとならして40商品/ページ)、かつ検索行動におけるデバイスの利用比率でキーワードごとにインプレッション数が変動する
季節性のKWは上記の限りではない
セラースプライトを利用する場合
執筆時点ではだいぶ精度が上がっている感覚なので、表示される数字をそのまま採用しても一定問題なさそう。
狙いたいKWの販売実績がある場合
ブランド分析”検索クエリのパフォーマンス”を利用する。
月間検索数の実測値が確認できます。
IMPは検索数×20くらい
ブランド分析が使えない場合 ※あくまで肌感覚です。
セラースプライトで月間検索数と購入数/購入率を確認する。
カテゴリ系KW:実際の検索数=セラースプライトの検索数/1.2
カテゴリ系はやや多めに見える
季節性KW :実際の検索数=セラースプライトの検索数/0.7
季節性は少なめに見える
市場規模と合わせて、実際の購入につながるKPIも確認していきましょう。ブランド分析のクリック数シェアや購入数シェアから出すこともできますが、難しい場合は以下をベンチマークとすると良いでしょう。
指名キーワード
CTR:20-30%(20%ならOKだが、計測は困難)
CVR:5-10%
競合が多い/強いものだと5%くらい、そうでなければ10%くらい
一般キーワード
CTR:1.25%くらい
CVR
~5000円:4%
~10000円:2%
~20000円:1%
20000円以上:0.5%
競合分析
次に競合商品をチェックしていきます。競合商品の洗い出し方は以下の通りです。上述している通り、検索流入が大半を占めるため、検索結果画面をベースに競合ベンチマークを決めていきます。
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