記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画感想文「悪い奴ほどよく眠る」 真面目な三船が好き❤️

配信で「悪い奴ほどよく眠る」を鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。

1960年 日本
監督 黒澤明
土地開発公団の副総裁・岩淵の娘・佳子と、秘書・西幸一の披露宴が始まる。だがその直前に公団の課長補佐が逮捕され、披露宴は異様な空気に満ちていた。その頃、検察への謎の密告状によって、公団と大滝建設の贈収賄事件が摘発寸前まで進められていた。

Filmarksより

はい、黒澤明作品です。
けれどもどうなんでしょう?黒澤作品の中ではそこまで知名度は高くないかもしれません。
でも自分はこの作品が好きなのです。
その理由は主演の三船敏郎さんが真面目だから。

三船敏郎さんて、もみあげとひげがつながってて、ガハハって大きく口を開けて笑ってるイメージありませんか?
自分もこの作品を観るまではそういう印象でした。ひとことでいうとワイルドで豪快。
でもこの三船さんはひげは全くなくてつるっとしてて、眼鏡かけてて、窮屈そうにスーツを着ている。
最初観た時は「これがあの三船敏郎?」って思いました。

しかも三船さん演じる主人公の西は、汚職事件で自殺に追いやられた父の復讐をするという役。
素性などもろもろ隠して復讐相手の懐(娘婿)に飛び込んでるので、なかなか自分の考えてることを言わない。もちろんガハハなんて笑わない。
でもそのいろいろ抑えてるところに色気を感じたんですよね。
「ワイルドで豪快」っていういわゆるひと昔前の男性っぽい魅力も良いのだけど、抑えてるところからにじみ出る色気ってありますよね。
いじらしい魅力というか。

かといって、めちゃくちゃ冷血で淡々と復讐を果たすかというとそうでもなくて、復讐の道具に結婚した相手のことをほんとに好きになってしまって苦悩するという人間味もあって、自分はグッときました。
「ガハハ三船」も良いけど、「真面目三船」も好き❤️

ここでお話の内容を少し書くと、汚職事件の悪だくみメンバーを主人公・西が追い詰めていくストーリーなのだけど、64年前の作品ですが今観ても思うところがあります。
トカゲのしっぽ切りって、いつの時代も変わらないんだな。。。

ただ悪の中心人物の副総裁・岩淵は、部下の命すらなんとも思わないほんま悪い奴だけど、息子や娘には優しい。特に娘を溺愛している。
奥さんを亡くしてるけど、再婚していない。
お手伝いさんもいるので男手ひとつで育児をしたって感じではないけど、もしかしたら奥さんのことをとても愛してるから、再婚してないのかもしれない。
そこら辺の背景は説明されてないので分からないけど、この時代の男性ならすぐ再婚しそうだけど、していない。
全く愛情がない人間ではなさそう。
でも部下の命はなんとも思わない。。。

ネタバレになってしまうけど、岩淵は娘の西への愛情を利用して、西の命を奪う。
保身のためなら他人の命や娘の気持ちは平気で押しつぶす。まさに悪い奴ほどよく眠る。

人間って一体なんなんでしょう?
そういう奥行きのある人物(今作は悪い奴だけど)を描くのが黒澤作品の魅力ですよね。

最後に、三船さん演じる西は口笛を吹きながら、復讐計画を実行する。
今作のニヒリズムとセンチメンタリズムの重なり具合が好きなのです。

おすすめです。

この記事が参加している募集

おすすめ名作映画

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?