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映画感想文「福田村事件」 めちゃくちゃ良かった

映画館で現在公開中の「福田村事件」を鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。

と、いつもならここで映画の情報(監督名やらあらすじ)をのっけるのだけど、結論から先に言います。

めちゃくちゃ良かった。☆5じゃー!

ふだん自分は映画感想文をよく書いていて、生意気にも5段階で評価しているのだけど、その最高点。

「ほんとに面白い映画はネタバレしても面白い」と自分は思う(なぜなら映画は話の筋だけを追うものではないから)のだけど、この事件の顛末を書くのはためらわれるので、ごくごく簡単にあらすじを書きます。

    ***

舞台は100年前の日本。9月1日の関東大震災の発生と共に、「朝鮮人が集団で襲ってくる」「朝鮮人が略奪や放火をした」という流言飛語が飛び交い、それは東京の近郊地域にも広がる。
そして9月6日、福田村(現在の千葉・野田市)に薬の行商に来ていた香川の被差別部落の一団が、村民たちに朝鮮人と疑われーーー

    ***

監督はドキュメンタリーで有名な森達也氏。
なので、観る前はドキュメンタリー寄りの作品なのかなと思ってました。
また「福田村事件」は実際にあった事件を基にしてる(※映画は事実を基にしたフィクション)ので、余計にそう感じたのかもしれません。

でも作品の中身は、もろ劇映画。
シナリオもただ直接的に事件を追うのではなく、いろんな登場人物の多視点で描きつつ、最後のクライマックスに収斂されていく。
平たくいうと、終盤「盛り上がる」ように作劇されてます。
自分と同じような事前想像で観に行くかどうか迷われてる方がいらっしゃるのであれば、その心配は不要です。

むしろ自分は韓国や台湾が自国の歴史(暗部含む)を題材にしたエンタメ映画を作ってるのを「良いな」と思っている人間なので、福田村事件という「とてつもなく衝撃的で重たい」事件を商業映画化したことにまず賛意を表明したい。
とても勇気の要る企画だと思います。

内容に関していうと、この映画は差別構造を描いていてそれがこの映画の大きな骨格なのだけど、その構造が今現在にそのまま当てはまることに、言葉を失う。
人は、身近にいる立場の弱い・小さい人間を見下すことで自尊心を保ち、自分より強いもの・大きなものは想像の外に放り出して、日々を過ごしている。
これって、自戒を込めて、今の時代にもそのまま通じていませんか。

ただこの映画のいいところは「差別構造を理解しましょう」という学習的視点で作っていないこと。
もしそういうスタンスで作られていたら、⭐︎5はつけてないと思う。
映画を観て結果的側面的に勉強になることはたくさんあるけど、自分は何かを納得するために映画を観てるわけじゃない。

そういう意味で、どうしてこんな衝撃的な事件が起きたかというのを、映画を通じて「目撃」する。
シナリオ的には、21世紀の人が「過去にこんな事件があったんだよ」と資料を読み解く、みたいなところから始めることだってできただろうけど、そんなことは一切せず、オープニングロールで俳優の名前も一切出さず、タイトルだけ出して物語が始まる。
自分は冒頭からグッと入り込めました。

まあじゃあこの作品の全てが完璧かというとそんなことはなくて、説明セリフは多々あるし、カメラワークがものすごく良いってこともない。(俳優さんたちの演技は良かった)

話の中身でも女性新聞記者に希望を持たせてるけど、ジャニーズ問題をみるとメディアだってあてにできないから、綺麗事過ぎるよなと白けたりもした。

でもこの作品は、強烈な事件をただセンセーショナルに捉えずに、しかも核心を急がずに、地道に細部を積み上げてる。
実際にあった事件だからといって、単純に結論づけてない。
自分はそこを評価したい。
どうしても結末ばかりに目がいってしまうけど、そこまでの道のりを丁寧に描いてるのが良点だと思う。
事件は独立した点じゃなくて、線の先の大きな点ですよね。

物語の終わりに、登場人物の1人が「なぜ、、、どうして、、、(こんな目にあわなきゃいけないのか)」と絶句するのだけど、その問いは観客にも向けられていると思う。
その問いを痛みとしてちゃんと抱えなければと強く思いました。

重たい映画だけど、おすすめします。

総合評価 ☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

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