見出し画像

【おすすめ映画】「ギルバート・グレイプ」 優しくてやわらかくて温かい

NHK・BS3で放送されていた「ギルバート・グレイプ」を録画して鑑賞しました。

自分はこの作品が大好きで、「#おすすめ名作映画」というお題にはぴったりだなと思い、記事を書きました。
お付き合いください。

はじめに

若き日のジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオの共演作ということで、ご存じの方も多いと思います。

1993年(日本公開は1994年)のアメリカ映画で、監督はスウェーデン人のラッセ・ハルストレム。
他には「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」が有名ですかね。

簡単なあらすじとしては、
ギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)はアメリカの田舎町で、過食症の母と知的障がいをもつ弟アーニー(レオナルド・ディカプリオ)、姉と妹の5人で暮らしています。

ギルバートの役割は弟アーニーの面倒を見ること。
ギルバートは小さな食料品店で働いているのですが、アーニーは目を離すと給水塔に上ったりしてしまうので、職場に一緒に通っています。

ある日町外れに、トレーラーハウスで国中を旅しているベッキーとその祖母がやってきます。トレーラーが故障して修理のためその町にとどまることになったベッキーは、食料品店に買い物に行きギルバートとアーニーに出会います。
次第に3人は交流を深め、町から出たことがないギルバートは自分とは全く違う生き方のベッキーに憧れを含んだ恋心を抱く・・・。

ハリウッドスターは出ているが、ハリウッド映画ではない

今、あらすじを書いていて思ったのですが、この映画はあらすじを書くのが難しい。
なぜなら、ハリウッド映画の典型的なパターンから外れているからです。

起承転結がはっきりしない・大きな事件はない・銃が出てこない。
バリバリのハリウッドスターが出演していますが、はっきり言って、ハリウッド映画ではありません。

これはラッセ・ハルストレム監督の作風が大きいと思います。
小さな町を舞台に、小さなエピソードがいくつも描かれます。
でもそこがいいんですよね。

俳優に関していうと、最近の癖のある役を演じるジョニー・デップも好きだし、ティム・バートン作品のエキセントリックな彼も好きだけど、この作品のような、ちょっとさえない寡黙な青年役もいいんだよなあ。
知的障がいの役を演じたディカプリオは、この演技でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされています。

みんなで泣いたり笑ったりしようよ

この映画のどこが好きかというと、自分にはどこか寓話的に感じるんですよね。そこがたまらなく好きです。
小説でたとえるなら、文語体ではなく、口語体で書かれたやわらかい雰囲気。

断っておくと、この映画はファンタジーではありません。
むしろファンタジー要素はひとつもありません。

あらすじでも書きましたが、ギルバートは過食症で太ってしまい身動きの取れない母や弟の世話に追われています。
亡き父親が建てた自宅はいろいろガタがきていて、いつ壊れてもおかしくない。
そのうえ働いている食料品店は、オーナー夫婦はとてもいい人たちだけど、国道沿いに新しいスーパーチェーンができて先行きは暗い。
さらに、憂さ晴らしの不倫相手は夫が死んで引っ越してしまう。
重苦しい生活が毎日続いています。

でもね、「10歳で死ぬと宣告されていた弟が18歳の誕生日を迎える」とか、「夫の死のショックから7年間外出していない母親」とか、その過食症で太ってしまった母親を「鯨のように大きい」と形容するとか、「トレーラーハウスで旅して回っている女性」とか、現実からちょっと浮いてる印象を受けるんですよね。

すごく現実離れしているわけじゃないけど、現実にへばりつているわけでもない。
そのちょっと浮いてる感じに、監督の優しい眼差しを感じます。
世の中にはいろんな人がいるし、人生にはいいこともそうでないことも両方起こるってことを、突き放して描くのではなく、微笑みながら描いている感じがして、温かい気持ちになります。

あと、30年前の作品で、以前に何度か観ているのですが、不思議と古びていない。
映画全編に、そこはかとなく「祝祭感」が漂ってるんですよね。
祝祭感というと大げさに聞こえるかもしれないけど、映画が本来持っている「観客みんなで感情を共有する」という性質を忘れていないというか。
いつのまにか巻き込まれているというか。
みんなで泣いたり笑ったりしようよ、というか。

もし映画館でこの作品を観ていたら、観終わった後、知らない人でもいいから隣の人に「いい映画だったね」と話しかけたくなると思います。
おすすめです。

最後に、画像はアーニーがついつい上ってしまう給水塔。
自分もちょっと上ってみたいような、そうでもないような。
って、上ったらダメですね。

この記事が参加している募集

#おすすめ名作映画

8,292件

#映画感想文

68,576件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?