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【いいところを語る映画評】「渚のシンドバッド」 これは、隠れた名作!

「渚のシンドバッド」を配信で鑑賞しました。
で、感想を書いてみようと思います。

※ピンクレディーの曲ではありません。サザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」とも違います。映画感想文です。

気を取り直して、1995年の邦画で、監督は橋口亮輔氏。
ちなみに、濱口監督(「ドライブ・マイ・カー」)とは違います。

見出しにも書きましたが、とってもいい作品だと思います。
隠れた?名作です。(みなさん、知ってました?)

自分は、橋口作品は「恋人たち」と「ぐるりのこと」は観たことあるのですが(でもずいぶん前に見たので、もう記憶がない)、この作品は未見でした。

というわけで、いいところを語りたいと思います!

はじめに

情報です。

1995年 日本
監督・脚本 橋口亮輔

クラスメイトの吉田に想いを寄せる高校生、伊藤。転校生でレイプされた過去がある女生徒の相原は、その事に気づき伊藤に興味を持つ。同性愛とレイプ被害という、他人には話せない秘密を抱える二人は急速に打ち解けるようになる。その相原のことを実は恋慕する吉田。複雑な三角関係の先には……。

ウィキペディアより

「これだけの情報じゃ分かんないよ」ってなっちゃいますよね。
でも、この作品は明確な縦軸がある物語ではありません。
なので、どんなに詳しいあらすじを読んでも、この作品の良さはなかなか伝わらないと思う。

ひとことで言えば、高校生男子の同性愛をメインにしたひと夏の群像劇って感じだけど、う~ん、なんだろう?
自分で書いておいてなんですが、「うわべをすくいとればそうなんだけど、その説明では大切なものがこぼれてしまう」って感じです。

それよりも自分は、「とてもとても誠実な映画」と言いたい。

人を好きになるって、こういうことだよな

とはいうものの内容にふれると、同性愛者の伊藤は親友である吉田に思い切って告白するんですが、いい奴である吉田(ほんとにいい奴)は、「優しさ」から「キスしても大丈夫、抱きついてもOK」と言っちゃうんですね。
で、伊藤はキスして抱きつくんですが、吉田はいったんは受け入れるんですが、最後は突き放してしまう。
さらに吉田は、伊藤のいないところでは「無理だよ、男同士なんて」と言ってしまう。

これはドキッとしました。
「自分は同性愛を蔑視しない・理解している」っていう人(自分もそうです)を、映画中盤でもう突き放すんですよね。
で、橋口監督はそこで留まることなく、その先をずんずん行きます。

伊藤はそのあと吉田に対して微妙な態度をとるのですが、吉田が相原のことを好きなんじゃないかと気づくと、吉田を相原のところに連れていきます。

で、伊藤は相原からどういうつもりなんだと問い詰められるのですが、

伊藤「吉田がどんな風に人を好きになるか、見たかったんだ」

本編より

この台詞を聞いたときに、「ああ、ほんとに人を好きになるって、こういうことだよな」って思いました。

どうしても同性愛の話ってそこばかりが取り上げられがちだけど、この作品はそれよりも、「人が人を好きになるとこうする」っていう真情があふれてるんですよね。
論理的な説明じゃなくて、瞬間瞬間の気持ちをすごく大事にしている。
そこにノックアウトされました。

画面の構図がいい

あと、撮影テクニック的な話をちょっとすると、この映画は長回しを多用しています。
でも自分は長回しよりも、画面の構図がとってもいいと思いました。
画面の中の人物の大きさ・配置、それがものすごくいい。
長回しってカットを割らないぶん、下手をすると冗長に感じるんだけど、それを許さなかった。
ワンシーンワンシーン、ひとつの「画」として、こだわり抜かれてる。

いやあ、ほんとに誠実な映画です。

最後に、画像はこの作品のロケ地である長崎の写真をお借りしました。
いい風景だなあ。

あ、この作品はクライマックスが夜の砂浜のシーンなのですが、ずーっと波音が聞こえてます。
台詞の奥にずーっと波音。波音。波音。波音。波音。
この感覚の描写、言葉だけじゃ絶対説明できない。
そこが映画のいいところですよね。

総合評価 ☆☆☆☆+☆半個

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

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