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進撃の巨人アニメ最終話~共犯「これからは、ずっと一緒だね」~
アニメ「進撃の巨人」もついに終わりを迎えてしまった。
連載終了から2年半。まだアニメがあるから生きてゆけたものの、アニメさえも終わってしまった。
諌山先生がアニメ終了後に出した「当コンテンツはこれにて終了です!」という言葉が、より「終わり」を実感させる…。
連載終了時は、進撃という物語の中に一貫してあった「愛と呪縛」について感想を書いた。
しかし、連載終了から2年半ほど経ち、私の受け取り方が変わったのと、アニメでは台詞の変更などもあったことから、「進撃の巨人」の他の側面が見えてきたので、その点について述べたい。また折角、アニメーションなので、その他、演技や音楽も混ぜ合わせて感想を記せたらと思っている。
1.日常の幸せ ~3人でかけっこをするために生まれてきたんじゃないかって~
ここでは「枯葉」「野球ボール」「貝殻」が大事な道具になっている。どれも、共通しているのは「意味はないけれど、些細な日常の幸せ」の象徴ということだ。
アルミンがオカピの口の中に攫われ、意識を失っている場面。
道で、アルミンはジークと対話をする。
「何の意味があるのかもわからず、ただ生きている。だから、死ぬ前は、意味を探し続ける日々に踊らされることから抜け出せてほっとするのかもな…自由になれたって…」と告げるジークに対してアルミンは、幼馴染3人でかけっこした時のことを思い出す。
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「その時、僕はなぜか思った…。ここで3人でかけっこするために、生まれてきたんじゃないかって…この何でもない一瞬が、すごく大切な気がして…」
そして、アルミンは、かけっこした時に風に舞っていた「枯葉」を持って、「人類が増えるために必要なものでもないけれど、僕にとってはすごく大切なものなんだ」と告げる。しかし、ジークにはその枯葉が「野球ボール」に見えている。そして、ジークはキャッチボールをした日のことを思い出す。
「ああ、そうだ。ただ投げて、取って、また投げる。ただ、それを繰り返す。何の意味もない。でも、確かに、俺は、ずっとキャッチボールしているだけで良かったよ…」
これは、エレンがかつて告げた台詞「この世に生まれないこと。これ以上の救済はない」に対してのアンサーである。
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生まれてくること自体が罪。生きていても、永遠に自分がなぜ生きているのか。その意味を探し続けることになる。それなら、生まれない方が幸せなのではないかという問いに対し、「意味のない日常の些細なこと、それ自体が幸せなのではないか」と答えを返しているシーンだと思う。
いつしか、その些細な一瞬の幸せを忘れ、自分の人生の意味を探し始め、正解のない問いのなかで彷徨い始めてしまう。まさしく、ジークも…、アルミンでさえもそのような状態だったのだろう。
「意味のないただのキャッチボール」を思い出したジークは、リヴァイに殺される前に
「いい天気じゃないか…。もっと早くそう思ってたら…」
とボソッと呟く。彷徨い続けている中で、身近にある幸せなことが見えなくなっていたのかもしれない。
そして、道でのエレンとアルミンの会話。この箇所はかなり原作から変更されているし、わかりやすくなっている。
アルミンは、ふと、血の海から「貝殻」を取り出す。この「貝殻」は、エレンとアルミンたちが初めて壁の外にある「海」を目にしたシーンに出てきたものだ。ずっと夢見ていた海に辿り着き、はしゃぐアルミン。アルミンは初めて目にした貝殻をエレンに見せようとするものの、その時エレンは絶望していた。
「なあ、向こうにいる敵、全部殺せば…、俺たち、自由になれるのか?」
エレンは海のずっと先、遠くの未来を見て、すぐそばにある些細な幸せ、「貝殻」を見ることはなかった。
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そして、道の場面で、初めてエレンはアルミンが手に持っている貝殻に気づく。(原作だと貝殻を手渡すだけで、それに対して台詞を通して言及することはないんですよね…)
「やっと気づいてくれたのか。いつでも足元にあったのに。いつも遠くばかり見てるから」
自由を手にするため、生きる意味を獲得するため、ゴールのない暗闇をひたすらに進撃していたエレンが、その日々から解放されたことを示唆しているのだろう。
まさに、これらのシーンの基盤にあるのはエレンの母、カルラの台詞。
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「この子はもう偉いんです。この世界に生まれてきてくれたんだから」
「意味」なんていらない。「生まれてきたこと」そして「何気ない日常の一瞬の幸せ」それさえあえば、もう十分偉いんだと…肯定してくれている。
ちなみに、ヒグチアイさんの「いってらっしゃい」の歌詞にこのようなフレーズがある。
「もしも、明日がくるのならあなたと花を育てたい」
おそらく、「ミカサ視点」からエレンに向けた歌詞なのだが、この歌詞も、あなたと花を育てられるだけで、それだけで幸せだというニュアンスが伝わってくる。
2.共犯 ~これからは、ずっと一緒だね~
道でのエレンとアルミンの会話は原作から変更されていた。
「エレン、ありがとう。僕たちのために殺戮者になってくれて…」
原作のこちらの台詞は、わかりやすい表現ではないが、それでもアルミンなりの言葉で「虐殺は肯定できないけれどエレン自身のことは肯定したい」思いが伝わってきて好きだ。
しかし、私はアニメ版の台詞の方が好きだった。(個人によって好みは分かれそうだけれども…)
「ありがとうエレン。僕に壁の向こう側を、この景色を見せてくれて。これは僕たちがやったことだ。だから、これからはずっと一緒だね」
「これからはずっと一緒だね......!!!!!」
アルミンの声優、井上麻里奈さんの声があまりにも優しくて…。死にゆくエレンにかけてあげるアルミンの最後の言葉が…、これだったのなら、エレンはとても救われたんじゃないだろうか。(しかも、このシーンで流れている音楽が良い!!澤野さんが進撃のために作るサントラ、進撃の世界観にベストマッチしていて本当にすごいです…)
私は、原作を読んだとき、エレンはミカサの愛によって殺され、そしてやっと、「自由の奴隷」から解放されたと感じた。ミカサの愛によってエレンは救われた。それは間違いではないと思う。
けれど、アニメ版で声優さんの演技がついて、ここの台詞が妙に頭に残っていた。
「死にたくねえ。ミカサと…みんなと一緒にいたい…」
いや、そうだよなと…。当たり前だけれど、エレンも、調査兵団のみんなといつまでも一緒にバカ騒ぎしながら過ごしていたかったはずだ。できるのなら、おじいちゃんになって死ぬまでみんなと一緒に生きたかったはず。
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「死」して「自由の奴隷」から解放されたとはいえ、エレンは1人で死んでゆくこと、とても辛かったし寂しかったはずだ。
(ここら辺のエレンの演技については、梶さんが音響監督から、「泣きが強く縋ってほしい。エレンらしさじゃなくて、人間らしさが見たい」と指示されていました。100カメより)
アルミンが「他の道はないか探そう!」と言うものの、エレンは「駄目だ。俺と同じでみんな死にたくなかったはずだ。なのに、俺は許されるわけないだろう」と返す。
余談だが、このシーン、少女漫画の傑作中の傑作として有名な「BANANAFISH」でアッシュが死んだ時の吉田秋生先生のインタビューを思い出す。吉田先生は結末にアッシュの死を選んだ理由として、このように述べていた。
「(アッシュは)殺さなきゃ、殺されるから、仕方がなく人殺しするけど…。でも、やっぱり殺人者なんですよね。数限りなく殺してるでしょ。名もなき人々を。だから、最後は自分の命で贖うべき」
まさしくエレンも同じ状況だ。エレンも、名もなき人々を、人類の8割を踏みつぶしてきた。そこにどんな理由があろうと、「殺戮者」である事実は変わらない。これだけ人を殺しておいて、罪から逃れようとすることなんて不可能なのだ。
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(ハンジさんもアルミンと同じで、団長になってもなお、最後まで「対話」を諦めたくなかった人なんですよね…)
そんなエレンに対して、アルミンのかけた言葉が本当に素晴らしかった。エレンのやったことは消えないけれど、エレンが孤独にならずにすむ。そう思わせてくれる言葉だった。
「わかるよ。この世から人を消し去ってしまいたいと思ったことなら、僕にもある。エレンに外の世界の本を見せてたのは僕だ。誰もいない自由な世界をエレンに想像させたのは僕だ」
エレンの全ての行動の根源である「外の世界への渇望」。そして、壁の中にいたエレンが抱いた「渇望」は、「人類のいない外の世界」に行くことだった。漠然と、エレン自身も自覚しないところで「大地を平らにしたい」という原始的な欲求が芽生えていた。
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「俺は平らにしたかったんだ。何でかわからないけど、やりたかったんだ」
それが、「地ならし」にもつながった。そして、その「渇望」を抱くきっかけを与えたのはアルミン自身だと…。
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ここで、アルミンが言いたいのは、「エレン1人の罪ではない」ということだろう。「エレンだけじゃなく、僕にも罪がある」ということ。
「あればだけど、地獄で。8割の人類を滅ぼした罪を受けて苦しむんだ。2人で」
まさしく、「共犯」という言葉がぴったりではないだろうか…。
アルミンは「エレンを殺した英雄」を演じることで、一生かけて罪を償っていくのだろう。上に立つものとして、かつてのエルヴィンのように「一流の詐欺師」になる覚悟を決めたのだ。
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これまで優しさと弱さのあまり、「何かを捨てる」ことをできなかったアルミンが、「アルミンという個」を捨て、「英雄」として徹する覚悟ができた表れのように見える。(アルミンは、白夜以降、エルヴィンのように何かを捨てて決断することができない自分に、コンプレックスを抱いていたと思うのだけれど…、この力強い眼差しを見て、ああ、覚悟を決めたんだなと…感じました)
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かつて、アルミンはエルヴィンの姿を見てこのように言っていた。
「何かを変えることのできる人間がいるとすれば、その人は、きっと…大事なものを捨てることができる人だ。化物をも凌ぐ必要に迫られたのなら、人間性をも捨て去ることができる人のことだ。何も捨てることができない人には、 何も変えることはできないだろう」
3.エンディング「二千年…若しくは…二万年後の君へ…」
エンディング「二千年…若しくは…二万年後の君へ…」
リンホラが満を持して帰ってきてくれたわけだが…、今までの進撃の主題歌を思い出す全てのエンディングに相応しい楽曲だったと思う。エレンの死後、続いていく世界を表現した歌詞だった。
まず、最初に「13の冬」のメロディを再び持ってくるとは…。これはもうずるい。泣くしかない。
「13の冬」とは
リンホラが2019年にアルバムのカップリングとしてリリースしたミカサの思いを綴った楽曲。歌唱はミカサ役の石川由依さん。
そして、「二千年…若しくは…二万年後の君へ…」では、ミカサ役の石川由依さんの歌唱から始まり、サビでひっそりとミカサを見守るかのようにエレン役の梶さんのコーラスが加わりデュエットになり…。ミカサが死に、ミカサの棺の映像がエンドロールに流れると、石川さんからリンホラに歌っている人が変わってゆく。歴史を語る人がどんどん受け継がれ変わってゆくような演出も相まって、とても良いエンディングだった。
「聴こえるか。森を出ろ。何度道に迷っても…」
エレンたちが亡くなり、巨人の力がなくなった後も、争いは続く。
でも、「盲目的にゴールもなく彷徨う森」から出ようとし続けれる力さえあれば、森から出られないとしても、何か少しでも変えることができるかもしれない。
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サシャの父から始まった「森を出ろ」という言葉…。進撃の巨人においてとても大事な台詞のうちの1つだと思う。
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