オーーー、ニッポン!
2008年5月24日。
初めてプロサッカーの試合を生で観たのは日本代表の試合だった。
サッカーを始めて間もないころ、所属していたサッカークラブで日本代表戦を観戦しに行こうという企画があり、それに参加した。
たしか親父は仕事があったので、母と妹と僕の3人で参加した。
その当時知っている日本のサッカー選手は名古屋グランパスに所属している選手くらいだったが、グランパスから日本代表に選ばれている選手が何人かいたので楽しみにしていた。
試合当日、小学校で大型バスに乗り込み、クラブの友達とその家族と一緒に豊田スタジアムに向かった。
僕は自分の苗字と誕生日の日にちである18が背中に入った日本代表のユニフォームを着て、試合に臨んだ。
この日のために事前に母が買ってくれていたユニフォーム。自分が日本代表になった気がして朝から気合が入っていた。
頬にペイントまでしていた。無料でできたからっていうのもあるが、いつもの自分ならやらないのでかなり気合が入っていたと思う。
また、サッカースタジアムの大きさにも圧倒されて興奮気味だった。
こんな人が集まるところで、こんないい芝生のピッチでサッカーをしている人たちがいるんだと感じたことのないスケールの大きさに度肝を抜かれていた。
その日は雨だった。豊田スタジアムは屋根があるから雨でも大丈夫と聞いていたが、その大事な屋根が壊れていて雨にあたりながらの応援になった。
この試合はキリンチャレンジカップっていうのか。コートジボワールっていう国が相手なのか。そんなことを思いながら試合がはじまるのを待っていた。
アップで選手が入ってきた瞬間に大きな大人たちが一斉に大きな声を出して応援を始めた。太鼓をたたいたり、旗を掲げたりしながら腹から声を出して応援していた。
オーーーーー、二ッーーポオオオン!ニッポン!ニッポン!オーーーーー、ニッポン!
僕もつられて、その応援歌を口ずさんだ。
次第に会場の声は大きくなっていき、僕もそれと同じように声が大きくなっていた。周りを見れば、友達やその家族も一生懸命声を出して応援していた。
試合がはじまり、さらに応援の声は大きくなった。
僕も負けじと声を出した。
そして、前半の早い段階でゴールが生まれた。
点を取ったのは名古屋グランパスの玉田選手だった。
知っている選手が目の前で、自分たちの応援に応えてくれるようにゴールしてくれたのが堪らなくうれしかった。
あまり感情を出す方ではなかったが、ゴール後は大喜びしてみんなとハイタッチしあったりした。
気持ちが高まり、さらに応援に身が入った。
試合はそのまま1-0で終了したが、スコア以上に自分の中で満足感があった。
知り合いはもちろん知らない人とも一緒になって日本代表を応援する。プロのサッカー選手を僕たちの声でサポートできているのかもしれない、力になれているのかもしれないという感覚が嬉しかった。そして、その感覚を一緒に応援している人たちとその場で共有しあえるのか堪らなく楽しかった。
帰宅しても高揚はおさまらず、試合に行けなかった親父に今日の試合はどんな試合だったかを聞かれてもいないのに話していた。
そして、一緒にスポーツニュースを見て今日はこの試合を観に行ったんだよなぁと余韻に浸っていると、いきなり睡魔に襲われてぐっすりと眠りについた。
余談
あとから知ったのだが、この試合は長友選手の日本代表デビュー戦。今思うと親善試合なのにいい試合を観にいけてたんだなと思う。
また、そのときから今までずっと日本代表として一線で戦い続ける長友選手はすごいなと改めて感じる。