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『坂道のセンターって基本1人じゃん?』2023.#15 アルビレックス新潟×ガンバ大阪

ガンバ大阪相手に完敗を喫したアルビレックス新潟。ルヴァン杯での好パフォーマンスをリーグ戦に結び付けられず、現状の最下位相手に痛い痛い痛い痛い痛い(だって最下位やぞ)超痛い黒星。そんな、内容も負ける相手も最悪だった試合について振り返っていきます。

ポヤトス監督のゲームプラン、新潟の試行錯誤

ディフェンス面において完璧な試合、ゲームの運び方ができたのではないかなと思っていますし、最初に先制出来たのが良かったなと思いますし、その中でボールを持たれる展開が続いたのですが、しっかり安定した守備で守ることができて、前半をクローズ出来たのが良かったと思います。

ポヤトス監督

徳島時代の対戦時では比較的非保持に重きを置いて新潟を仕留めにかかったポヤトス監督。カテゴリーと率いるチームが変わってもそのスタンスは変わらず、新潟の生命線である『ビルドアップ~前進~崩し』の崩しに至る前のフェーズからダメージを与えてきました。

試合前コメントでは『新潟のCBは認知に長けている』と恐らく千葉/舞行龍への警戒を口にしたポヤトス監督。プレッシングではその二人への負荷を強めるよりは、彼ら二人が時間とボールを届ける前方の選手達を消すように誘導してきました。両SHが少し内寄りに中間ポジションをとる、CMFはバイタルに鎮座する事で自然と五角形を形成。基本は外へ誘導しながら、時に降りて五角形に顔を出す伊藤涼太郎,谷口海斗にはCMF,CBが迎撃して自由を奪います。

更に痛手だったのが開始一分の先制弾。早いというか早すぎる時間帯にチーム随一の配給者がもろに直結しての被弾。恐らく精神的なダメージとジェバリという陣地回復&カウンターを成立させる恐怖的な側面があったのでしょう。これにより(良い意味で)遊ぶように相手を釣りだしてスペースを作りボールを送り込む、千葉和彦本来の価値を示す事が非常に難しくなってしまいました。

21分頃に『運ぶ事で数的優位を作ってもいいのでは』という指摘が解説者の方からなされていましたが、前述したような事情もあり比較的無難にプレーをこなしていた印象です。

ビルドアップ隊が運んだり相手の矢印を折れない上に、配置で相手に影響を与えられない(後に触れる)ので中々効果的に進めない新潟。制限による外誘導で囲い込むガンバに対し、各々が中央で相手の間に立って引き出そうとしたり、降りてボールに触れる伊藤涼太郎など打開するための試行錯誤を続けるも本質的な解決には至らず

ただ、ガンバもガンバで⇩のように各ラインの振る舞いが統一されていなかったりと苦しい中でも割とチャンスは作れていました。それでもワンタッチによるフリックという一種の賭け(成功確率が低い)を前進の段階で繰り出さないといけない状況がそもそもまずかった。ラスト30mで中央密集を繰り返した事にも起因しますが、成功確率の低いプレーを成功確率の低いエリアで行ってしまう不確定要素の強いフットボールを実行していたように思いました。

ラインを簡単にひっくり返されるシーンも目立ったガンバ

--ボールを持たれる展開ではあった。
東口:いまのウチは握り返す力がないので、割り切って。後ろでもしっかり守れていたし、セットプレーでの1失点は余計でしたけど、流れの中では守れていたので、我慢強く戦えたかなと思います。

--ダニエル ポヤトス監督もカウンターだけのプランではない。
倉田:本当なら時間を作りたかったが、全部ショートカウンターでいけそうな感じがあった。相手陣でしっかりと自分たちの時間を作るのは今後の課題。こういう試合をずっとしていたら、キツいので。毎回うまくいくとは思わないので、自分たちでペースを握れる試合運びは課題かなと思います。

ポヤトス監督としてはミドルプレス→引っかける→ショートカウンターを軸とする展開は不本意だったそうですが、CBは勝手にミスしてくれるわ(15:55~)、保持では大外から殴り込めばシュートチャンスに繋がるわ、そもそもジェバリが収まるから基準点を経由してスピードアップを図ればいいわで中の選手達からするとさほど嫌な展開ではなかったのでしょう。

そして前半終了間際にはプレスラインに沿ったパスを出して奪われる、終始質的優位を示してきたジェバリによるポストワーク、新潟による責任を持たないボールへの寄せとプレスバック…と本日の要素が全て詰まった追加点を記録。ガンバとしては理想通り、新潟としてはそもそも試合として成り立たない、そんな対照的な様相が表れた前半の45分間でした。


修正?

相手を引き出す事で背後,ライン間にスペースを創出する、いつもの前進~加速~崩しに持ち込めない新潟。それでも包囲網を押し下げてラスト30mまで進む事は出来ます。ただ、その先で効果的なアクションに持ち込めないのが停滞感を感じさせた一原因。

今日は保持時、特に崩しの局面では島田を1列前に押し出して、相手のMFラインで人の間に立って押し込んだ時の数的不利を解消しようという狙いが見えました。ただ、チームとして中央部のエリアだけで間を使おうとした事島田が前方での振る舞いを苦手としている事から中々適策にはなり得ませんでした。上記のように各々が繋がろうとして結果的に相手の手前に立つ事でボールが入っても直接的に圧を受けるなど、正直しんどさを感じてしまうシーンも多々。伊藤涼太郎が潰されたシーンなんて何回見たことか。

机上の話に留まるのを承知で、こうすればよかったかなと思うのは上記のように幅を使いながら相手を広げる事。ボール出し/ネガトラの防波堤役を島田/高に任せて、WGとSBが外側と内側に立ってそれぞれ相手に影響を与える形。

・三戸→藤原でみんな大好きポケットを突いたり
・張った三戸に渡してレーンを横切るようにドリブル→相手の目線を引き付けて背後/逆サイドへチャンスメイク (84:00~ダニーロは出来るよ)
・相手が片側に圧縮してきたら逆への展開で揺さぶる→スライドの遅れを突いて中央へ侵入

など、優位を保ったまま相手のアクションに応じて最適な選択肢をとれるのが適切な選手に適切な場所でプレーしてもらう事の良さ。中央を固めてくる事なんて織り込み済み、それを打開するための鳥栖・福岡戦だと思っていたので本日のパフォーマンスには悪い意味で驚きました。まさかまたしても中央での交通渋滞が発生するとは。。全く大外を経由しない事からも松橋アルビにおいて大事なのはあくまで中央、だからガンバがMFラインを時に5枚敷いてきても人と人の間に入って中央を割ろうとしていたのでしょう。

別に中央に狙いを定めるのは悪くないし、ゴールに一番近いエリアなので突破すれば大チャンスに。ただ裏を返せば相手だって当然人を置いて固めてくる訳であって、だからこそ大外を経由して相手を動かす事で中央にスペースを空けたり、そもそも大外周辺からゴールに直結するような設計を落とし込む(ルヴァン福岡戦のレビューにて)など、一つに縛られない事が大事になっていきます。今節の新潟はそうではなく、一の目に期待して残り5/6が出続けるサイコロのようなフットボールに終始してしまいました。

--ハーフタイムに3人代えて流れが変わった。狙いは?
松橋監督:前半、相手の守備の仕方に対してわれわれの優位性があるところを、もう少しポジティブにしたかった。そこをうまく相手は狙ってカウンターのきっかけになり得る場面だったと思いますが、点を取られていましたし、点を取りにいかなければならない。そのリスクもあるのはもちろんですが、もう少し相手に圧を掛けていかなくてはいけないというのが狙い。

後半の話も少しだけ。二点ビハインドで動かない訳がない、という事で3枚替えと共に若干の修正を施した新潟。監督コメントと渡邊泰基のコメント(有料コンテンツ)を踏まえると、CBの持ち運びを促したとだと推測します。

加えて大外と内側のレーンに選手が立って相手に二択を提示。若干ですが大外からの攻略を伺うようになりました。ただ、気になったのは以下の場面。

CB泰基からライン際の堀米へ。しかし堀米は相手SHの管理下に入ってしまい、少し運んでからのクロスに終わってしまいます。これだと相手を動かせず、人がいる中央に放り込むだけだとハイライトシーンに至るまでの過程としては中々に厳しい。ではどうすれば良かったのか?

福岡戦で再三田上-太田が実現させていたんですけどね…

横幅を少し意識したとはいえ、左も右もWGが内側・SBが外側を務める事になった後半。特に堀米のサイドが顕著ですが、左利きSBを左アウトに置くと利き足の関係上縦方向に詰まってしまいます。なら右利きのWG(小見)を外側、堀米を内側に置いて両者ともオープン(180度)にボールを持てる状況を作り出したかった。まぁそれを水曜日に実践していたんですけど。

それに、上記のように外側から突破口を開けば相手のラインを押し下げて最終的に中央が空いて高木善朗のユートピアに導かれるなど、チームが得意とする中央突破がより活きてきます。福岡戦でもあったし、69:40~の崩しとかその最たる例。


大外も中央もバランスよく活用する、その中で最適なキャストを最適な位置で輝かせる。こうした要素がガンバ戦では足りなかったのかなと思いました。

後半は少し幅を意識したとはいえ、結局ペナルティエリアの幅に人が集約する形がメイン。幼稚な形で3失点目を喰らい、その後は1.2タッチによる中央突破を行っては失いガンバにカウンター/保持を許す展開のまま終了。勝てる要素が少ないというか殆ど無い試合になってしまいました。


締めに入りますが、前述したような点をもし松橋監督が落とし込んだとしても、簡単に先制点を許してしまう→ネガティブな雰囲気が漂い最悪のミスを連発するようだと勝てる試合も勝てないのだと思います。それに焦りからか急ぎすぎて博打のような縦パスを連発して引っかけてカウンターを喰らうなど、新潟が一番やってはいけないプレーも随所に見られるなど本当に悪循環に引っ張られた試合でした。

もし試合会場では見えてこないようなメンタル的な所に欠陥を抱えているのなら、次週にも成功体験を掴んで自信を取り戻して欲しいなと思います。フットボールにおいて精神的な余裕は凄く大事、サポーターも決してポジティブになれない状況ですが『新潟のフットボール』への誇りは見失わずチームの取り組みを全力でサポートしていきましょう。筆者自身も来週は現地@平塚に行くので指定席から後押しとなるような全力のサポートを行ってきます。そして獲るぞ勝ち点3。ではでは


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