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Last5,新潟は異なるアプローチに対処して24年への布石を打つ

降格もなく、かといえば優勝はおろかACL圏内も射程圏内ですらなく。(広義で考えて)この時期に何も懸かっていないチームはモチベーションを失いやすく、残り試合をただ淡々と消化しがちになってしまいます。

新潟も残り5試合、第三者からすれば何のために戦うのか?が曖昧な時期に突入したかと思います。我々もラスト5戦を消化試合として過ごしてしまうのか?

んな訳ねーだろ!!消化試合?むしろ本番はこっからだよ!!!

ちょうど頭の中で『SixTONES-こっから』が再生されましたが、アルビレックス新潟の2023シーズンはこっから更にギアを上げていく事になります。2週間の中断期間もあってすっかりお休みモードになっているであろう新潟クラスタの方々に向けて、今回は残り試合の見どころ、意識すべき目標設定について軽く話を進めていきます。早速行きましょう!


軌跡を有形に 

一桁順位。選手の口々から度々発せられる2023シーズンの最終目標ですが、これはモチベーション維持のための到達点に留まらず明確に達成したい目標だと捉えられます。

一つは堀米が語るようにクラブのステータス上昇を分かりやすく形として表せるからでしょう。

1桁順位にこだわるのは主将らしい思いもある。「クラブの格を上げるというか、新加入で入る大学生や高校生が、新潟を選ぶ時に残留争いしているよりも1桁にいた方がいいと思うし。いいサッカーをやっているだけでなく結果も出してクラブの価値を高めたい」とJ1定着から強豪チームへとステップアップを目指す。

スポニチ 9.27

チームに留まらずクラブの視点からも的確に指摘できるのが流石ゴメスといった感じですがまさにその通り。これまでには存在しなかった(というか自ら潰してしまった)説得の根拠を費やせる事で、彼が言及していたリクルート面、更にスポンサー獲得などクラブの規模を上げる交渉に対して新たな可能性を見出せる事でしょう。

そしてもう一つ、絶対に一桁順位でシーズンオフを迎えたい理由が。

それはJリーグからの配分金の存在です。

4年ぶりの復活となる今年度からは配分金の大幅な見直しが実施された。支給対象のクラブはJ1リーグの成績上位1〜9位に拡大され、以下のような配分に変更。また「DAZN視聴者数など」に基づいて算出されるファンベース数の1〜9位にも配分される。

▼2024年度の理念強化配分金(23年度の成績に基づく)

【成績】総額16億2000万円
1位:5億円(1年目:2億5千万円、2年目:2億5千万円)
2位:3億6000万円(1年目:1億8千万円、2年目:1億8千万円)
3位:2億2000万円(1年目:1億5千万円、2年目:7千万円)
4位:1億5000万円
5位:1億2000万円
6位:9000万円
7位:7000万円
8位:6000万円
9位:5000万円

ゲキサカ 1.31

リーグの地位向上のために野々村チェアマン(諸事情で名前は控えさせていただきます)が『トップクラブがグローバルコンテンツとして輝く』という方針を掲げました。これは国内の枠を超えるビッグクラブの登場によって集まった資金や人気をリーグ全体に還元する事でJのステータスや実力を世界基準に近づけていきたいという試み。

そのために、これまでは比較的均等に振り分けられていた配分金を上位クラブへの傾斜配分に変更する事で、端的に言えば格差を生み出し上位の実力を上積みしていこうと目論んでいます。

J1もJ2も今季の順位表を見ると顕著に現れていますが、昨今のサッカーは経営規模がそのままピッチ上に反映されやすくなっています。Jだと方法論や成功体験が流布される事で各クラブが賢く資金注入を行うようになった印象があり、現在1部2部の首位がそれぞれ楽天/サイバーエージェントを胸に纏う事実がその効用を証明しています。

今後もこの流れは続いていく、というかJの方針を踏まえると更に加速していくと思われます。2022年の売上高で考えるとJ1最下位と、資金力で劣る地方クラブの新潟がJ1定着,その先の夢を見るには経営規模を上げていく事がマスト

(中野社長)
川崎フロンターレさんや浦和レッズさんの前期の売上高は約70億円。それに対してアルビレックスは27億円でした。今期は30億円を見込みますが、それでもトップ2の半分以下で戦っていかなくてはなりません。もちろん選手強化費を2倍3倍に増やせばチーム力が2倍3倍になるわけではありませんが、できるだけ増やしていきたい

 チームの収入というのは、チケット収入、グッズなどの事業収入、スポンサー収入、そして選手が移籍した時の移籍金の4つからなります。この4つをそれぞれ伸ばしていきます。それがわれわれの役割です

経済界ウェブ 5.11

中野社長自身がストレートに指摘された『お金が足りない、経営規模を上げる必要がある(意訳)』という課題を克服するため、同様に挙げられていた4つの収入源。ここにチームの成績次第で最低5000万円が追加される訳です

クラブの経営方針を考えると無理に強化費に費やす事は無いのかなとも思いますが、いずれにせよ今季の売上高がようやく30億に到達するかどうかのクラブにとって大きな収入となる事は間違いありません。しかも自分達の実力次第で確実に獲得できる資金源。ここを逃さない手はないでしょう


残り試合への原動力となって、対外的な地位向上の説得材料に昇華され、配分金が手に入る。新潟にとって一桁順位を確保する事は24年、その先を見据えると大袈裟でなく重大なミッションとなります。一戦必勝を重ねながら今季最後にして最大の目標を達成できるのか。シーズン最後までプロフェッショナルな姿勢を要求しながら新潟の歩みを追っていきたいところです。


見えてきた"あの季節"

シーズン終了が近づくという事は同時に冬の移籍市場到来を意味します。

例年既にこの時期には水面下で各クラブ,選手による駆け引きが行われており、その間に立つ代理人など関係者から独自のルートを伝い記者が情報を手に入れた結果、移籍情報として報道される事となります。

12月に終了するシーズンでは大体11月終盤~12月序盤にかけて移籍情報が加速、契約満了リリースや監督人事の動きは更に前から表立つ傾向にあるので、広義での移籍情報はもう少しすると熱を帯びてくる頃でしょう。

移籍期間も存分に楽しみたいぜ!という方は⇩の2点を今からやっておけば情報を逃す事はないと思います。
クラブ公式の通知を常時オンにする
朝起きたら必ずTwitterをチェックする
(特に11月からの試合翌朝)
(京都サポの某大手垢さんを除くと各紙の情報が大体網羅されてる)

新潟視点に話を移すと、松橋監督の続投はまず確定的かなと。手ごたえを得た所から更に跳ね上がる挑戦にクラブも監督も意欲的でしょう。恐らく単年契約なので今年で切れる契約に対して延長オファーを出す必要はありますが、監督自身まず快諾するだろうと思ってます。ここはそこまで深く考える必要はありませんね。

ただ、ここまでピッチ内外に好影響を与えると共に結果を残している監督となると、他クラブからの引きの手だって伸びてくる事でしょう。

例えば松橋監督の古巣である横浜Fマリノスはマスカット監督がスコットランド・レンジャーズに栄転する話が浮上しており、その後釜として新潟の指揮官をリストインしている可能性が一応存在します。ここは動向を注視しておく必要がありそうですね。また、彼らとはレンタル移籍中の松田詠太郎以外にも選手のやり取りがありそうなので、それこそ11.24マリノス戦の翌日は何かしらの報道が投下されるかも…?


ピッチ上の話をすると起用法に一つ注目してみてもいいかもしれません。一戦必勝的なアプローチに変わりはないでしょうが、例えば来季も契約が残っているダニーロ・ゴメスをこのままパルプンテ枠に留めておくべきなのかどうか。

ダニーロに限らず来季に向けて一つでもオプションを増やしておきたいところですし、そういった意味では新たな人選,戦術にトライする可能性があります。『目の前の敵が最強の敵』というある種のコンセプトを大前提に、枠組みを広げるための試行錯誤が見えてくるのかどうか。そんな視点でスタメンや試合を眺めるのもこの時期の楽しみの一つです。

もしそういった事象が見えたなと思ったらマッチレビュー等で深掘りしていくのでまたチェックしていただけたら幸いです!卒論との兼ね合いもありますが…笑


Last5

ピッチ上の話に移ったところで折角なので最後は残り試合の見どころについて。

鳥栖,京都,FC東京,マリノス,C大阪と続く残り5試合。名前だけ見るとビビっていたであろう開幕前とは対照的に『むしろ楽しみだな』と素直に思える辺り、新潟は違和感なくJ1で戦ってこれたんだと実感させられますね。

そんな2023年の積み上げを2024年に引き継ぐ,或いはアップデートさせるために、それぞれの試合ではクリアするべき宿題が存在します。ここからは注目するべき宿題(=見どころ)について3試合をピックアップして紹介していきます。

31節 vs京都サンガ ~"カオス"への挑戦状~

アルベルト期での対戦時は2試合とも熱戦を繰り広げた曺サンガ。『J2版・リバプールvsマンチェスターC』と勝手に称していましたが、片方の監督が変わった今でも対照的な志向性を持つ対戦カードとなります。

ボールを保持して展開を落ち着かせる事でゲームから不確実性を排除して優位に進めたいのが新潟なら、敢えて不確実性を好んで相手ごとカオスに引き込む事で優位性を奪いに来るのが京都。大体のチャンスは長いボールを送り込んでセカンドボールを拾った所から始っており、更に相手の自由を奪うためにビルドアップの開始から崩しに至るまでマンツーマンの色が濃いアプロ―チを仕掛けてきます。

この試合では新潟守備陣が展開を有利に働かせる鍵を握っています。ビルドアップでは小島を絡めて京都に対して+1を作りながら空いた所を経由してプレスの勢いを緩められるか。相手の強みであるロングボール→相手陣内でのセカンドボール奪取→奇襲に対しては整った守備体系の下、最終ラインが競り合いで・高を中心とした中盤がセカンド争いで優位に立てるのか。京都の目論見を破壊しながらゲームの勢いをこちら側へ寄せるための努力が必要になるでしょう。

曺サンガとの過去の対戦成績(1分2敗)にも表れている通り新潟にとって苦手な相手だと思います。ゲームとしては見ごたえがありますが、彼らのようなスタイル同士の対決だと大体不確実性を好む者に有利に働くもの。それに町田のように古都の蹴鞠集団と被る部分が多いチームが来季のコンペティションに加わる事を踏まえると、京都相手にも試合を支配できる"強さ"を確認しておきたいところです。『主導権を巡るための攻守における京都対策』をここでは注目点に挙げたいと思います。


33節 vs横浜Fマリノス ~持たざる展開でも活きる道を~

この頃に優勝戦線がどうなっているかで色々変化する部分もありそうですが、この試合ではプレス→ボール奪取→ポジティブトランジション(守→攻の切り替え)という局面の入れ替わりが鍵を握ると思います。ボール保持が生命線な新潟にしては珍しく、持たざる展開を強みとしてゲームプランに含めたいところ。

相手を引き寄せてライン間,DFラインの背後を突いていくブライトン式ビルドアップ(こういうやつ)を軸に、前線の速い人達にスペースと共にボールを届ける事に挑戦するマリノス。しかし、このやり方の肝であるCBによるボールを運ぶ力,配給能力が乏しいのがトリコロール。

そのために各チーム共通のマリノス対策法が講じられており、中身としては

・守備側全体=中を消して外誘導を徹底
・守備側2top=相手CBへのプレスを放置して相手CHへのカバーシャドーを優先
・守備側CH=ライン間を埋めるように鎮座。もし相手CBからそのスペースに差し込まれたら迷わずボールに対してアタック
・守備側WG=相手SBに渡ったらアタック

というもの。優先順位を誤らず相手を背中で消す事でライン間のスペースを潰す事に成功します。実際に前回対戦時の新潟も似たような修正策を施してマリノス相手に逆転勝利を飾りました。

外側,中央ともに狙い撃ちして奪いに行ける仕組み

当然、前年度覇者のチームがそのまま沈黙する訳はなく、CH同士で斜めの位置関係をとって相手FWのカバーシャドーから外れる事で中央でボールを引き出す(=受けた後に加速して攻め込んだりWGに良い形で届けられる)など、彼らなりにあれこれしている姿が見受けられます。それに対し新潟はどういった策で狙いを消して優位に試合を運ぶのか、チームスタッフの力量も問われる一戦になりそうです。

恐らく前半戦同様のアプローチも組み込みながらゲームを進めるであろう33節。誘導して奪い取ってカウンターという積極的な非保持の姿勢がまたしても通用するのかどうか、プレッシングの局面には進化の余地が残っているだけに実力を図る良い機会になるかと思います。


34節 vsセレッソ大阪 ~ボールを持って盤面を支配せよ~

ここはもう開幕戦と最終戦という見事なコントラストを描けている対戦カードなので、あの時からの進捗確認という意味合いで楽しめる試合でしょう。

ゾーンディフェンスが特徴的な福岡にダブルを喰らわせてる事からも、相手が整うと自分達も整って優位に試合を運びやすくなる新潟。開幕戦では五分五分だったボール保持の時間を長くして、『押し込んだ展開から如何にスコアに結びつけるのか』という来季以降直面しそうな壁に対して一つの解を見せる事ができるのか。

セレッソ-福岡とこの辺のチームは『4-4』のブロックで相手のパスコースをケアしながら守る分、保持側からすると大外が空きやすくなります。大外に待つ選手に如何にして時間とボールを届けられるのか。そのためにCB-GKでプレスを交わしながら相手2top脇から運び出せるか。ピッチ全体で配置的優位を活かしながらその優位性を殺さない個人戦術を発揮して欲しいところです⇩。

マンツーマンなら大外にはRSBが行けばいい!となるが、ゾーンDではそうはいかない。

また、同じようにゾーンディフェンスで守る新潟に対して開幕戦では幅を最大限活用しながら大外からの崩しで再三脅威を見せつけたセレッソ。SB-WGがレーンを交換しながら必ずどちらかがフリーになる仕組みを作るなど、特に日本代表・毎熊-クルークスで構成される右サイドは破壊力抜群。

開幕戦で喫した2失点をここで払拭するために、配置上のミスマッチに対しての全体での守り方の共有局所で個々が負けない事は必須要件です。見せつけられたJ1基準を跳ね返せるか、或いは更に差を見せつけられるのか。果たして名実共に有終の美を飾る事ができるのでしょうか。


終わりに

ここまで2023シーズンの残された期間について話を進めてきました。一戦必勝のスタイルを崩さず、まずは再開初戦でサガン鳥栖相手に一桁順位への意欲を本気だと証明できるのか。楽しくも厳しく、松橋新潟の戦いを最後まで追っていく際に少しでも今回挙げた見どころがガイドライン的な役割を果たしてくれれば嬉しいです。ではでは!

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