指導者のヴィジョン(4.コーチング方法)

4. コーチング方法
(1) サッカーの基本を忘れない
 「ゴールを意識したプレー・ゴールに向かう」をまず第一に意識して指導全般を行う。ゴールに向かう姿勢やゴールを守る意識は、どんなトレーニングの局面でも結成てコーチも選手も最も基本的で決定的なテーマである。

(2) 目的から練習方法は導き出される。(Focused Coaching)
 それぞれの練習には必ず一つの目的がなくてはならない。目的も無くトレーング方法だけ模倣しても意味が無い。常に目的をはっきりさせたトレーニングを計画し、できる限り実践に近い形でトレーニングを行い、その戦術要素を入れて技術を学ばせる。

(3) できる限り判断を伴った形で技術を習得する(Skill+Insight)
 1つの選択肢しかない状況はサッカーではあり得ない。常に判断を伴って技術も身につけていくべきである。技術のトレーングは解決方法を教えるのではなく、解決方法を見つけ出す訓練である。そのためには、よい状況判断ができるための習慣(視野の確保)を身に付けさせなくてはならない。
 良い状況判断のためのポイントは、「良いポジション」、「良い体の向き」、「周りを観ること」である。全体的には、シンプルにゴールを意識したプレー(Direct Play)を重視する。

(4) 繰り返しのトレーニングによって、サッカーの基本と正しい習慣を習得させる
 状況判断を伴う、技術、個人戦術の習得には、繰り返しの基本トレーニングを欠くことはできない。モティベーションを工夫しながら、繰り返しトレーニングをさせることでサッカーの基本技術を徹底して身に付けさせることは重要なポイントである。その際、まず、正確性を重視し、徐々にスピードを求める指導も忘れてはならない。「ミスを無くす」、「精度を上げる」ことは、サッカーの究極的なテーマの1つである。

(5) 選手のスキルに応じて、トレーニングの内容や負荷を変えていくことは、効果的なスキル獲得に大きな影響を与える。負荷とは、スペースの広さ、時間、人数、回数などである。体力的な意味においては、実際の試合と同程度の負荷をかけたトレーニングが必要となる。

(6) ゲームフリーズ(Game Freeze)
 戦術指導は、その局面での即座の指導が効果的である。その際の、指導「タイミング」が重要である。ゲームフリーズを行うには指導者が練習の目的を明確に把握して、「コーチ」する場面をイメージしていることが肝要である。「コーチング」は局面の選手だけではなく選手全員に向けて行うことが大切である。そして、プレーを実行させながらのフォーカスコーチングとの併用はさらに効果的である。

(7) コーチは矯正できなくてはならない(欠点の矯正)
 コーチの役割は、ただ練習させることではなく、悪い習慣が出てきた時はどのように矯正するか考え実行することである。従って、トレーングにおいて重要なことは、メニューよりも目的達成のためにどのようにそのメニューを活用するかである。簡単そうなことでもしっかりと理解させることは難しい。そのためには「良いプレーと悪いプレーをはっきりさせる」こと、同じことを何度も繰り返し言うことも大切である。

(8) ゲームを中心としたトレーニング(Good Organizing, Good Coaching)
 ゲームの中にはサッカーに必要なものが凝縮されている。しかし、フリーなゲームだけやらせるだけだと、自分の好きなプレーしかしなくなるリスクがあるので、コーギが上手くコントロールすることが大切である。

(9) 分析と評価
 一貫指導していく上での指導者としての「サッカーを読む力(分析と評価)」が重要な要素であり、選手の課題を見つけて正しい方向へ指導する指導者の力が不可欠である。「観察・現状分析・実践・評価・目標設定・トレーニング」の繰り返しの作業によって個人とチームは向上していく。

(10) 選手のやる気を高める指導
 コーチングの質とともに、選手のやる気を高める指導や動機付けは重要である。客観的な評価やアドバイスとともに「褒めること」は選手のやる気を高め、トレーニングへの意欲を向上させる。選手に対して「厳しいことを要求」する場合は、性格や心理状態を把握して行う必要があり、後のサポートを怠ってはいけない。

(11) 良いサッカーのイメージを与える(Good Demonstration)
 トレーニングの場面では、特に良いデモンストレーションを見せて、プレーの良いイメージを与えることが大切である。また、良い試合、良いビデオを観ることもサッカーのイメージ作りには有効である。

(12) トレーニングの時間
 例えば、3・4年生のトレーニング時間は70分、5・6年生は90分程度で十分であると思われる。一つひとつのトレーニングの質を高く保つことが必要条件であり(特にどの練習もディフェンスの意識が高いことが求められる)、「2時間以上行ったら一つひとつの練習の質及び集中力は低下してしまう」ことを十分に認識する必要がある。
 コーチの役割は、選手に「良い習慣」を身に付けさせることである。逆に長くだらだらとした同一練習は「悪い習慣」を身に着けさせてしまう危険性があるといえる。指導者の相違工夫が大切である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?