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高山村から見る「地方議会の危機」

昨日の記事の続きですが高山村に行く前に、こんな記事を見つけました。

「議員になっても月収16万円、老害のようなベテラン議員…「地方議会」のヤバい現実」 (10月26日 現代ビジネス)

詳しくはリンク先で読んでいただきたいのですが、要点としては

・増え続ける「無投票当選」
・地方議員の「高齢化」と進まない「新陳代謝」
・生計が立てられないほどの「低収入」

について書かれています。 この記事の内容を頭に入れながら高山村を取材したところ、なるほど記事通りの問題点が見えてきたのです。 今日は それについて高山村や長野県の現状と照らし合わせながらレポートしていきます。

◆定数割れのまま運営されてしまう議会

今回の高山村長選と合わせて高山村議会議員補欠選挙も同時に告示されました。 2017年の村議選で定数12名に対して11名が立候補し全員無投票当選欠員が出たまま議会は運営され村長選のタイミングで補欠選挙が実施されたのです。

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欠員2(1名が体調不良のため任期途中で辞任したため欠員増)に対して2名立候補し無投票当選となりました。 選挙が行われなかったのは残念ですが ひとまず定員が埋まるコトになったのは良いことかと思います。

1名は(ポスターが貼られている)自営業の黒岩 清道(くろいわ きよみち)氏(60)、そしてもう1名が(ポスターが貼られていませんが)パート従業員高井 央葉(たかい なかば)氏(41)です。 高井氏は高山村議会最年少、且つ 村唯一の女性議員というコトで全国紙の記事に載りました。

高齢男性ばかりの議会、6児の母が立候補 無投票で当選(朝日新聞デジタル 10月28日)

現代ビジネスの記事によると町村議選挙の実に23.3%無投票当選、つまり町村議員の5人に1人が選挙を経ずに議員になれているというのが現状です。 決して良い状況では無いのですが なり手がいないのだから仕方がありません。 ただその結果として、村議員はドンドン歳を重ねていくのです。

◆進む「高齢化」と進まない「女性進出」「新陳代謝」

まずはこの表を見て下さい。(※「政治山」サイトより引用)

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これは2017年の高山村議選の当選者一覧(任期途中で辞職した方を除く)です。 まず見ていただきたいのが全員男性であるコト。 年齢は最年長78歳最年少でも64歳全員還暦以上です。 しかもこの表は2017年当時の年齢なので現在はプラス3歳となり現職10名は全員前期高齢者以上3名が後期高齢者となります

ハイ、じいさんだらけです。

 高齢でも元気であれば議員をしていただくコトに問題は無いのですが議員全員が高齢者なのサスガにマズいかと。 今回の補選で60歳の黒岩氏と41歳の高井氏が加わり平均年齢が一気に下がるコトになりはするのですが・・・ 
止まらない議員の高齢化と進まない女性進出。 現代ビジネスの記事によると町村議会議員の女性比率12.4%と低調です(都道府県議会議員で10.4%、指定都市議会議員で20.8%、市区議会議員で19.7%)が、これでも過去最高水準だそうです。 他国と比べても、あまりにも低い。
フランスでは男女の政治参画を平等にする狙いで2000年にパリテ法が制定され、ルールを決めて女性の政治参画を促進させている国も有ります。 その方法を日本でそのまま導入するコトは難しいでしょうが、いずれにしろ女性議員比率の向上は日本の政治における大きな課題のひとつです。
なぜ地方議会で ここまで女性議員が増えず高齢化が進んでしまうのか、それは人口の減少や若者の流出なども当然ありますが、それらとは別の要因が考えられます。 それが、お金です。

◆安すぎて本業に出来ない、地方議員の報酬額

こちらの図を見ていただきたいのですが、

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長野県市町村別の議員報酬ランキングです。 ベスト10は この通りで10位の諏訪市の議員でも民間と比べて ある程度の額を得ているコトが分かります。 

が、

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一方、高山村は月収169,000円長野県第48位。 しかもこれは2015年のデータであり本年度 高山村が出している「高山村の給与・定員管理等について」(※PDFファイル)によると現在は150,000円となっているようです。 もちろん期末手当(ボーナス)も4.4か月分と厚く出るものの分母となる月収が低いため それを加えても議員年収は2,460,000円となります。 税収に応じて決まるとはいえ村の政治を司る方の給与としては、あまりにも低い。 高山村役場の職員の平均月収が333,200円初任給でも大学卒で172,200円貰えるのと比べれば如何に低いかが御理解いただけるかと思います。 そして恐ろしいコトに高山村より議員報酬が安い自治体が15町村も有るのです・・・

村民の代表として選ばれ村民のために働きながらも議員収入が低すぎて生活が出来ないし4年毎に(無投票当選が多いとはいえ)選挙によって失業するかもしれないリスクが有る。 だから別に仕事を持って それを本業として安定した収入が確保できている人だけが副業で議員をやっているという現実。 その結果として高山村では農業自営業をやられている方や高額な給料を得る必要が無い、高齢の男性が議員の多数を占めているのです。これでは若い世代が議員になって地域に貢献しようという気持ちが起こらないでしょうから高齢議員が(最悪、無投票で)居続けて新陳代謝が進まないのです。
更に言えば議員の成り手不足対策として議員定数削減の動きも有りますが それが更に(高齢男性)現職議員の固定化に繋がり議員職が(安い報酬のクセに)利権となっている可能性も否定できません。

折しも高山村長選が有った11月1日は大阪市廃止・大阪都構想住民投票が大阪市で有りました。 それを先導したのは「公務員削減」を訴え「議員報酬返上」ウリにしている日本維新の会(おおさか維新の会)です。「公務員や議員は給料を貰いすぎだ!」オウムのように繰り返し言って支持を伸ばしていますが果たしてそれで本当に良いのでしょうか? 
民間で働いていて収入が上がらない怒りの矛先を公僕に向けて叩けば気持ちはスッキリするのかもしれませんが、それが議員の成り手不足や じいさんばっかりの議員による利権の固定化を招いて議会が機能が鈍り、それらが巡り巡って自分に返ってきてしまうのですから。 地方議会というものをもう一度見直し待遇を良くするために地方自治法の改正が必要ではないでしょうか?(ただし議員報酬目当てに立候補させる「輩」のような某国政政党もいますから その対策も同時に必要です

◆今後の取材活動について

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今年のコロナ禍で長野県南信から出るコトが無かったのですが選挙ウォッチャーとして活動を始めてから遠出もするようになり、このような美しい紅葉も見る機会が出来ました。 今回の取材でも様々な方から話を聞けたし、選挙ウォッチャーになったおかげで隙が有れば引きこもる性分な私がアクティブに活動するコトが出来ていますし非常にやりがいを感じています。
現在の活動は元祖選挙ウォッチャーのちだいさんに倣って取材の様子をツイキャスで配信しレポートをこのnoteで販売するスタイルを取っています。 ツイキャス配信時間を重ねて将来的には「キートス」というクラウドファンディングみたいなもので取材費を募る計画だったのですが、先日ツイキャスからキートス制度の廃止がアナウンスされ、私の計画が一気に崩れてしまいました。 千曲市長選の取材費は記事の売り上げで赤字には なっていないものの今後どうなるかは分かりませんし取材費を個別に募る形を取らないと早晩限界が来るでしょう。 かといってツイキャスがキートスの後継として発表した月額制のメンバーシップ制度は「多くの人に知ってもらいたい」という趣旨には そぐわないし何より私というコンテンツに毎月定額で応援してもらうような魅力が無いw。 なので今後のコトは私にも分かりませんが諸事情で12月は忙しくて取材活動が土日しかできなくなりそうなので、とりあえず11月までは やれる限り全力で取材していきたいと思っています。 予定では4,5本の取材を計画していますので、もし宜しければ応援いただけると幸いです。
一度始めた選挙ウォッチャー、そう簡単に辞めるワケにはいきません。
ちだいさんの取材活動に制限が出てしまっている今は尚更、この灯を消すワケにはいかないのです

※昨日の記事を御購入いただいた皆様へ
この記事は有料にする予定でしたが冷静に見返すと文字数や画像数が有料記事の条件を満たしていなかったため無料にしました。
お騒がせしてスミマセン・・・

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