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エフェクチュエーションでも初期仮説が大切なワケ ~吉田満梨さんの講演より~

昨日は、エフェクチュエーションの研究会に参加していました。

エフェクチュエーションの書籍や講演で有名な、吉田満梨さん(神戸大学 准教授)の講演があり、とても刺激的だったので、気づきを整理してみたいと思います。

私の中での結論としては、
エフェクチュエーションだとしても、結局、初期仮説を立てる方が、成果につながりやすい
ということ
それ、エフェクチュエーションじゃない、という反論は受け付けません(笑)



エフェクチュエーションとは?

以前書いた、エフェクチュエーションの基礎的な内容はこちら

最初からきちんと計画するのではなく、
まず、できることからやってみて、色々な壁を超えながら、うまくやる、という考え方

ベンチャーとか、新規事業にありがちな、不確実性を乗り越える方法について、
優れた起業家が共通して実践している意思決定のパターンを体系化した理論です。

もともと、エフェクチュエーションの考え方は、私にとって、とても自然な流れ
それ、ふつうなんじゃないの、と思ってしまうのですが、
最近になって、にわかにブームになっている

  • 学術的に研究され、理論体系ができている

  • 成功事例を論理的に説明できる(証明)

  • 再現性があり、エフェクチュエーションの考え方は教育可能である

という感じで、感覚的な話ではなく、学問として整理されているのが凄いです。


見通しの明確さ(確実度)による分類

エフェクチュエーション(Effectuation)と比較される、コーゼーション(Causation)
でも、この2つは対立する概念ではなく、むしろ相補関係
程度問題であり、実はグラデーションの中にある、と考えるのが自然

計画を立ててやる、コーゼーションがダメなわけではなく、
とりあえず始める、エフェクチュエーションが、いつもうまくいくわけでもない

結局、見通しのレベルは、程度問題

エフェクチュエーションは、見通しがない状態から始めると言われるけど、
ある程度の初期仮説が、あるハズ

仮説を立ててはいけない、ということもなく、
仮説によって行動や思考が制限されないように、注意!
くらいじゃないかな


偶然性を味方につける

  • 失敗の中にも、新たなチャンスを見つける(転んでも、タダでは起きない)

  • 想定から外れたときが勝負 (困った! となってからが本番)

  • 当たり前を、当たり前と思わない、細部に気を配る

  • ふだんは見過ごしてしまうような当たり前の中に、新たな発見がある

エフェクチュエーションの特徴的な部分ですが、
こういう考え方が、今までなかったわけじゃない

初期仮説を、どんどん書き換えて行く!
というポジティブでダイナミックな発想かな

まあ、そんなことは、自然に出来ていれば、
ムリに意識しなくていいんですけど


パートナーシップをつくる

協業や共創、というと、おおげさすぎるけど、

偶然の出会いの中に、未来を一緒につくる仲間がいるかも
という発想はいいですね

全ての出会いを、チャンスに変える!
そういう想いが、新しいつながりを生み出します

内部資源と外部資源をつなぐ

社内でできることは徹底してやる
外部とつながり、一緒になって、「我々に、何かできないだろうか?」と問いをなげる
前向きな「問い」(Asking)が大きなブレークスルーを生み出すことがある

内と外をつなぐ、という観点は、今の時代に合ってるなぁ


カモ井加工紙株式会社 の事例

事例で取り上げられていた、カモ井加工紙株式会社は、
もともとは、工業用のマスキングテープを製造販売している会社

あるとき、マスキングテープの熱狂的マニア女子3人が、
工場見学を申し入れしてきた、、、
そこから、思わぬ展開で、新商品開発、市場創造、新規事業へつながっていく

かわいい、カラフルな文具・雑貨用のマスキングテープは、こちら、、、

小さなチャンスを見逃さず、内部と外部が連携して、チームを組み、
当然、うまくいかないこともあったと想像しますが、そんな困難を乗り越え、
つぎつぎと、展開していく…

結果的に、20億円の新規事業につながったそうですが、
最初は、だれも、そんな展開は予想していなかったし、
そうしたい、という意志もなかったハズ

意志も目的もない状態から、大きな展開が起きることもある
小さな可能性の目を見逃さない、というだけで、チャンスは生まれる
という、すばらしい事例でした


大企業の中で、エフェクチュエーションは成り立つか!?

Q&Aコーナーで、
やる前から、「成功する根拠を示せ」 と言われるような大企業の中で、
エフェクチュエーションは成り立つのか? という質問が会場からあり、

1つの観点として、過去の研究論文も引用しながら説明されていました。
ポイントは、コーゼーションとエフェクチュエーションのミックス戦略

まあ、そうなりますよね、という感じだけどw

承認を求めるから、止められる
ベストケースでも、自分が責任取るので、ここまではやらせてください、
リスク許容範囲を申し出て、合意をとりつけるのが、せいぜい

でも、そんなことしてたら、普通はスピードがめっちゃ遅くなる


私の持論は、、、

大企業では、勝手にやるのが正解!

大企業では、勝手にやって、失敗しても、大勢には影響がない
会社が潰れることもなければ、自分がクビになることもない

だったら、好きなようにやったらいいのでは?
という考え方です

やるときは、小さく始める
自分一人でやっているときは、こっそりやってれば、誰も気づかない
妄想、構想段階は、時間をかけてもOK

ある程度、企画案が出来たら、
少人数の賛同メンバーでチームを組む(気乗りしない人はメンバーに入れないこと)
数人で始めたら、早く、目に見える成果を出すことに集中する
お金のニオイがするまでは、とにかくスピード命!

お金のニオイがしてきたら、頭の固い人も動く可能性がある…


勝手にやるのは、自己責任で!

勝手にやるときは、承認も、評価も、求めない
止められて、怒られるまでは、勝手にやる
怒られても、こっそりやり続ける
そのくらいの覚悟は必要

もちろん、自分なりの正義があるのが大前提
いいことしているのに、もし怒られたら、「相手が頭悪い」くらいに思っている


今は、そんな甘くないかも、ですが
私は、そうやって、おもしろい時代を生きてきました
(自由に出来たのは、ホント環境がよかった。感謝、感謝です!)


「まずやってみる!」という日本の文化

大企業でも、中小企業でも、トップや上司の人が、「まず、やってみよう!」
ということがあります。でも、これを真に受けていると、ケガをする(笑)

頭のいい人(社長や上司)が、「まずやってみなさい!」と言っている本当の意味は、
「考えずに、とにかくやれ」という意味ではなく、
初期仮説を立てて、戦略的に工夫してやる」が前提、だったりします

何も考えずに、言われたままやっていると、怒られる
「やれと言われたので、やったんですけど、、、 なんで、怒ってるんですか?」
と、マジ切れしても、仕方ない
前提のズレから、誤解が生まれることは多いと思います


「自分ゴト」(自己決定力) が成功のカギ

エフェクチュエーションは、わらしべ長者的に、つながりを広げていく
というと、運まかせに聞こえてしまいますが、
強い、主体性が大前提

自分が本当にやりたいことを
自分で決めて、トライする!
「自己決定力」が、すべての前提にある

多少反対されても、やり続ける覚悟
なぜ今、やるのか? 
自分で問い続け、想い続け、発信していく

自分のビジョン、課題意識を発信しつづけ、
そこに反応する人を見つけ、巻き込んでいく
そういう無意識の戦略性が重要


エフェクチュエーション教育での成功事例

吉田さんの研究の中で、
理論体系は数か月の講座で伝えられるけど、
成功要因として大きいのは、実践プロセスの方にある、というお話
色々なトライをしながら成果にたどり着くプロセスの中に、本質があるようです

相互に協力しあう仲間との共創関係(損得を超えた、共創の可能性、創造性)
弱いつながりが、大きな強みになる


などなど、示唆と刺激に富んだ講演でした
休日に、こんな熱い議論が聞けるなんて、幸せ~



この記事を書いたのは、

収益の柱を増やす「未来実現パートナー」 川原茂樹
https://mousoubiz.com/
https://twitter.com/mousoubiz


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