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【読書日記】「最悪の将軍」(朝井まかて/集英社)

五代将軍綱吉の物語。全八章。

綱吉が次期将軍に選ばれるところから始まり、綱吉視点と正室信子視点が交互に入れ替わりながら、綱吉の生涯を描いている。

大河ドラマや時代劇などではちょっとエキセントリックに描かれていたりして、そんなイメージが染み付いていたけれど、この綱吉さんは実直で思慮深い!
正室の信子も、とても賢くて陰ながら綱吉を支えます。

悪い人たちじゃないのに、ではなぜ「最悪の将軍」となってしまったのか。
その一つとして、領民とのどうしようもない距離があると思います。
 
戦をやらなくなって久しいので、武ではなく文で治めよう。
領民たちの生活を少しでも改善しよう。

だけど思うようにはならないんですよね。

お触れ一つ出しても様々な役人を経るうちに、領民のところへ届く頃には綱吉の考えや思いは歪められ全く異質のものになってしまう。

あの「希代の悪法」も。 

綱吉と信子は基本的に江戸城にいるので、下々の役人や領民との触れ合いはありません。
その声もダイレクトには聞こえてきません。
その隔絶感がよく描かれています。

領民たちのことをどんなに考えていても、やはり生まれながらの殿様・お姫様であることによる感覚の違い。

もしこの二人が領民と直に触れ合い、現場を見ることが出来ていたら……なんて思いました。

そうそう、綱吉の物語なので「あの有名な大事件」も描かれています。
これも綱吉視点からなので、領民とはだいぶ違う感覚で捉えられていますけど、なかなか無い視点なので興味のある方には面白く読めるでしょう。

ちなみに、桂昌院は案外憎めないキャラになってます。


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