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20日間で20都市を巡る、フランス一周4000kmのグルメ旅 【13日目 Beaune】

こんにちは!モトです。

9月17日木曜日、晴れ。
この日はBourgogne(ブルゴーニュ地方)、Beaune(ボーヌ)にやって来ました。

ブルゴーニュといえば、ワイン!!

Beauneへ行くからには、カーヴに行かなければ!!

この数日前、Reims(シャンパーニュ地方)でシャンパンのカーヴに行けなかった私は、あの日の失敗を踏まえて、今回はちゃんと事前にカーヴの予約をしました。
(Reimsでシャンパンのカーヴに行けなかった話はこちら↓)

このBeauneという町は、今回訪れたフランス20都市の中では数少ない、夫が希望した町でした。
夫がこの町を選んだ時、私は「あぁワイン好きだからね〜。」くらいにしか思っていなかったのですが、実はもっと深い理由があったようです……。

Hospices de Beaune / Hôtel-Dieu

ここBeauneにはかつて、Hospices de Beaune(オスピス・ドゥ・ボーヌ)という有名な病院がありました。
この建物は現在、Hôtel-Dieu(オテルデュー)として一般に公開されており、ここでは当時の病院の様子が忠実に再現されています。

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それは15世紀、百年戦争が終わった当時のこと。
貧困と飢餓に苦しむ人々を救うため、雇用を作り出して収益を得られるようにしようと、ブルゴーニュ公爵の宰相が慈善事業でこの病院を建設しました。

上の写真は、この病院の中庭です。Hospices de Beauneといえば、この建築が有名です。
もともとは中央ヨーロッパに起源をもつ建築様式だそうですが、Hospices de Beauneの建設からブルゴーニュ地方に広まり、この地方の典型的な様式にまでなったそうです。

ブドウ畑による収入を病院の運営費に充てることで、多くの病人を受け入れ、修道女たちが世話をしていました。

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やがてその評判は富裕層にも広まり、彼らからの寄付が集まると、病院は規模を拡大して、装飾も充実し、「貧しき者のための宮殿」と呼ばれるようになったのです。

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病室内にチャペルがあります。ここは宗教と医療の共存する場だったのですね。

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その呼び名のとおり、病院内はとても豪華ですが、当時は強盗などを避けるため、外観はわざと地味にして、外からはその豪華さがわからないようにしていたそうです。

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こちらは薬局。
病院の敷地内には菜園があり、薬に使う植物もここで栽培していました。
下の写真の絵には、当時の薬局と、その外側に広がる菜園の様子が描かれています。

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Hospices de Beauneのワイン畑は、毎年行われるワインのオークションで世界にその名を知られていて、今日でも、Hôtel-Dieuの運営費はこのワイン畑による収入で賄われているのだそうです。

医療従事者であり、かつ敬虔なクリスチャンの夫は、いつかここを訪れてみたいとずっと思っていたのだそうです。
夫曰く、「フランスの医療従事者でHospices de Beauneを知らない人はいない」のだとか。


La Cave de l'Ange Gardien

今回私達が訪れたカーヴは、私がトリップアドバイザーを見ていた時に見つけたものです。
日本語のレビューはないけれど、フランス語のレビューではベタ褒めされていて、一体どんなカーヴなんだろう?と気になっていました。

私がカーヴのテイスティング(10種)の予約をした時、夫は
「せっかくの旅行なのに、2時間もカーヴで酒を飲むのに費やすなんて……」
と不満気味でした。

しかしなんと、この日は結局4時間もカーヴに滞在した後、彼は
「本当に来てよかった。人生でかけがえのない体験をした。」
と言ったのです。
私ももちろん同じ感想でした。

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このカーヴのガイドはPierre(ピエールさん)、年配の男性です。
たまたまこの日の予約は私と夫だけだったそうで、なんとラッキーなことに、私達二人だけで彼を独占することができました!

本来は2時間の有料プログラムなので、4時間はおそらく例外かと思います。この時期はCovidの影響で観光客が少なく、後の予定もなかったようで、ワイン以外の話もたくさんしてくれました。)

この4時間で私が学んだことは本当にたくさんあって、ここにはとても書ききれないのですが、以下に、心に残った彼の言葉を紹介します。

・ワインの味を見分ける方法は無い。飲んでみるまでわからない。それなのに、男性は値段で、女性はラベルの美しさでワインを選びがちである。

・赤ワインを飲む時は、ぐるぐる回さない

・私たち夫婦が本当に見つけるべきワインは、妻が好むワインではなく、夫の好むワインでもなく、二人ともが美味しいと思えるワインである。

・人の顔には目がふたつ、耳もふたつ。ふたつあるのには理由がある。では、鼻の穴はなぜふたつなのか?
 それは、右の鼻と左の鼻で感じる香りの種類が違うから。犬が匂いを嗅ぐ様子を注意深く観察すると、右の鼻、左の鼻、両方の鼻と、全てを使って匂いを嗅ぎ分けていることがわかる。

・ワインは常に食事とセット。食事に合わせてワインを、ワインに合わせて食事を選ぶ。
 とあるレストランで800€(10万円ぐらい)のロマネコンティと16€のエスカルゴを頼んだ日本人がいたけれど、なんと滑稽なことか!それを提供するレストランもおかしい(=外国人客を金儲けの道具としか思っていない、本当のフランス料理を提供する気がない)。
 800€のワインには、それに見合う食事を。

いかがでしょう。これらは私が彼から学んだことのほんの一部ですが、刺さる言葉がありましたか?
終始、目から鱗の連続。
序盤から、他のカーヴとは全然様子が違うと思っていましたが、テイスティング方法も全然違いました。

私はフランスで何度もワインカーヴを訪れていますが、テイスティングの方法をここまで細かくレクチャーしてくれたカーヴはここ以外にはありません。

かなり大雑把に言うと、ブルゴーニュの白ワインでは、味わう前にワインの色・粘度(ワインの涙と呼ばれるもの)・香りを見ます。
香りを嗅ぐ時は、右の鼻、左の鼻、両方の鼻を使って。

一方赤ワインでは、見るのは色と香りのみ。
そのかわり、赤ワインにはタンニンがあるので、口に含んだ時の感触を注意深く観察します。

驚いたのは、Pierreがワインの香りを嗅ぐ時、私達よりも遥かに多くの香りを嗅ぎわけたこと……!
彼は幼少の頃から両親に鼻を鍛えられたそうです。

彼のように特別な訓練を受けると、人は1000〜2000種類もの香りを嗅ぎ分けられるようになるのだとか。
(ちなみにPierreは元料理人。古いソースや、出来合いのソースを使っているレストランの匂いも嗅ぎわけるそうです。)

印象的だったのは、私がある赤ワインの香りを嗅いだ時のことです。私が
甘い香りがする。」
と言うと、彼は
「それは君の脳が、この香りを甘い香りだとインプットしているから。君がこの香りがするものを食べた時に、それが甘かったという経験を脳が覚えている。それはバニラの香りかな?シナモン?アーモンド?それとも、りんごの香りだろうか?」
と言ったのです。まるで鼻のレッスン。

この時以来、私は「甘い」「酸っぱい」「美味しそう」「良い匂い」などと鼻で感じた時に、それを細かく分析する癖がつきました。


二人が好むワインを見つけるために

「夫婦二人ともが美味しいと思うワインが、良いワインである」というのがPierreの基本的な考え方です。

この『良いワイン』を見つけるために、私達は、ラベルと値段の隠された4種類の白ワインと4種類の赤ワインをテイスティングしました。

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味を忘れないように、感じたことは全てメモに残しておきます。
夫との相談は禁止!!
そうして自分の好きなワインをランク付けします。

最後に、夫の付けたランキングと自分のランキングを互いに見せ合い、上位(1位または2位)になったものが一緒だったら、そのワインは『良いワイン』となります。

このランキングの見せ合いっこがとても楽しかったです!私が1位にしたワインを夫が4位にしていたり。発見がたくさんありました。

Pierre曰く、『良いワイン』が見つかることは幸運なのだとか。さらに、『良いワイン』が安かったらラッキー、高かったら残念です。

幸い、私達は手頃な値段の『良いワイン』を見つけることができました!

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もちろん、気に入ったワインがなければ買わなくてOKです。
私達は、家にまだワインのストックがあることを考慮して、一箱(6本)だけ購入しました。

この日、4時間の間に彼から教わったメソッドは、私がワインを飲む限り、今後一生、役に立つと思います。

このカーヴには、来年か再来年あたり、もう一度訪れたいと思いました。その時にはまた別の種類のワインが飲めると思うので。
(Pierreはワインの品質チェックを頻繁に行っているので、カーヴで取り扱うワインも頻繁に変わるのだそうです。)

そしてその時までに、私の鼻も、舌も、もうちょっと鍛えておきたいです。

最後に、Pierreがワインの話をしてくれている時、途中何度かわからない言葉があり、彼や夫が簡単な言葉に言い換えて解説してくれることがありました。(私のフランス語レベルはB2ぐらいです。)
フランス語はわからないけれどこのカーヴに行ってみたいという方は、簡単にでも通訳してくれる友人やパートナーを連れて行くと、より理解が深まると思います。
せっかくの体験なので、日頃からの疑問を解決したり、新しいことを一つでも多く学んで、機会を存分に活用することをオススメします。貴重な経験になること間違いなしです。

なお、予約必須です。

La Cave de l'Ange Gardien
03 80 24 21 29
https://www.lacavedelangegardien.com/



さて、予想外にカーヴで4時間もテイスティングをしてしまったので、この日はこれ以外に観光する時間がありませんでした。
でも、これ以上にない貴重な体験をして、もはや観光への欲求は満たされていました。
と言うわけでレストランへ直行。

この日のレストランは、ブルゴーニュ地方の郷土料理と、ブルゴーニュワインが味わえるお店です。

前菜にはTartare de Thon mi-cuit aux légumes croquantsを頂きました。
Thonはマグロ、mi-cuitというのは、日本で言う炙りみたいな、表面だけ火を通した半生の状態です。
それに、歯応えを残した野菜を合わせたもの。

最近、フランスのレストランではmi-cuitのメニューをよく見かけるようになりました。最近の流行りなのでしょうか。

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味付けが濃すぎず、素材の味が感じられて美味しかったです。
サラダのような一品ですが、ピーマンのパンチが効いていて、マグロも風味が強く、赤ワインによく合います。


Spécialité : Bœuf bourguignon

ブルゴーニュ地方といえば、Bœuf  bourguignon(ブフ・ブルギニョン=ブルゴーニュ風、牛肉の赤ワイン煮込み)がとても有名です。

実はこの料理は、夫のスペシャリテ、彼の得意料理でもあります。

私は夫の作るBœuf bourguignonが大好きなのですが、レストランで食べたのはこれが初めてでした。

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小さな鍋でサーヴされるので、食べる分だけ自分でお皿によそうスタイルです。
見た目はビーフシチュー。
お味は、夫の作るBœuf bourguignonよりも繊細なお味でした。
こちらも前菜同様、塩味やスパイスは少なめにして、素材の味を楽しめるように料理されているようでした。

お肉、ワイン、マッシュルーム以外にも、ブーケガルニや、恐らくセロリなども使っているのだと思うのですが、ソースの味が奥深く、美味しかったです。
日本で食べるビーフシチューに近いと思いました。
はじめは量が多いと思ったのですが、味がしつこくないので、たくさん食べられました。

ちなみに下は、夫の作ったBœuf bourguignonの写真です。

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ソースのとろみや、お肉のサイズ、マッシュルームのサイズなど、全然違います。夫はニンジン無し、じゃがいもはフレンチフライで。

どちらが好きかと言われると、私は夫の、少しジャンクフード味のあるほうが好みかなぁと思いました。

夫はBœuf bourguignonを作る時、Lardonsというベーコンをたくさん入れるので、塩味と旨味がしっかりしているのも特徴です。

今まで夫のBœuf bourguignon以外食べたことが無かったので、他のレシピを頂いて、比較できたことが楽しかったです。これからも他のBœuf bourguignonを色々食べていきたいと思います。


デザートには、Salade de fruits fraisをいただきました。日本でいうフルーツカクテルです。
この日はワインをたくさん飲んだので、さっぱりしたフルーツが身体に沁みました。アルコールを飲んだ時には、ビタミンを摂るのも大切ですからね!

そしてうっかり、写真を撮り忘れました。気が付いた頃には、時すでに遅し。

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空っぽになっておりました。

こちらのレストランでは、デザートも全てメゾンの手作りです。
料理の味付けは全体的に薄めで、地元の質の良い食材の味が楽しめます。
個人的には、Bœuf bourguignon以外のメニューは少し平凡な気もしましたが、ブルゴーニュ地方のBœuf bourguignonは一度食べてみる価値があると思います。

Brasserie le Monge
http://www.brasserie-lemonge.com/


泊まったホテル : Ibis Beaune centre 

中心街から徒歩10分くらいのホテルです。ブルゴーニュワインをたくさん飲んでも安全に帰れる距離ですね!
駐車場とプールもあります。安定のIbisです。

今調べたところ、現在は臨時休業しているようで……心配です。
早く観光客が戻って、普通に営業ができるようになることを祈っています。

ちなみにレストランからホテルへ帰る途中、Hôtel-Dieuの壁にプロジェクションマッピングが映し出されていました。

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Beauneの町は小さいですが、人の温かみと、信仰の強さと、ワイン文化への愛情を感じる町でした。

さてさて、【13日目 Beaune】はいかがでしたか?
最後までお読みくださり、ありがとうございました!

次回は、私が20都市の中で2番目に気に入った街、【14日目 Annecy】をご紹介します。アルプスの山々に美しい湖、活気のある町……!
楽しみにしていただけると嬉しいです。
それではまた!

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