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人工知能(AI)とバイオテクノロジーが急速に発展した先にある「人類の未来予想図」。テクノロジーとサピエンスの未来

世界の名だたる有識者が絶賛し、ベストセラーとなっている1冊がある。『ホモ・デウス』─ 気鋭の歴史学者が解き明かすのは、人工知能(AI)とバイオテクノロジーが急速に発展した先にある「人類の未来予想図」だ。上・下巻合わせて500ページを超える大著だが、その“要点”は何なのか。

進歩の列車に乗る人は神のような創造と破壊の力を獲得する一方、後に取り残される人は絶滅の憂き目に遭いそうだ。

そんな不気味な“予言”を記した『ホモ・デウス』が、多くの書店で平積みされ、店内売り上げトップを独占している。

著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏(42)が2011年に上梓した前著『サピエンス全史』は世界数十か国で翻訳され、800万部を突破した。その続編となる『ホモ・デウス』も、9月までに400万部を売り上げている。

著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏(YONHAP NEWS/AFLO)著者のハラリ氏は1976年にイスラエルに生まれた。ヘブライ大学で地中海史と軍事史を学んだ後、英オックスフォード大学で博士号を取得。帰国後に書き上げた前著が欧米主要メディアで話題になり、一躍、その名を世界に轟かせた。

新刊が描く世界観には、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏やノーベル文学賞作家のカズオ・イシグロ氏ら錚々たる知識人が賛辞を送っている。

ただ、〈テクノロジーとサピエンスの未来〉という同書の副題からも、いかにも難解そうな印象を受ける。そこで、ポイントを4つに絞って同書の大意を要約しよう。

俺って「無用者階級」?

【ポイント1】人類はこれから「神」になる。「恐ろしい本」と指摘するの人も多い本だ。「かつて、大勢の人が亡くなる“人類の脅威”といえば飢餓、疫病、戦争の3つでした。ハラリ氏は、それらの脅威を人類はすでにほぼ克服していて、これからさらなる進化を遂げるとしています。そのことを“人類は神へとアップグレードする”と表現しています」

表題でもある『ホモ・デウス』とは、ラテン語で「神の人」という意味だ。これまでも科学技術は進歩を遂げてきたが、今後、人類は“神にだけ許されていた領域”に踏み込んでいくとハラリ氏はみている。

同書では様々な事例が紹介されているが、たとえば米軍は、人の感情を制御する「チップ」を脳に埋め込む実験を始めている。適切な刺激を与えることで、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)に苦しむ兵士の治療に応用するのが目的だ。また、電極が備わった特別なヘルメットを通じて兵士の集中力を研ぎ澄ませ、作戦の遂行能力を向上させる研究もあるという。

人の感情や欲望、意思といったものまで、制御可能になる時代の到来が強調されているのだ。

【ポイント2】「神の人」と「無用者階級」に二分される。ただハラリ氏は、恩恵を受けられるのは、〈少数のアップグレードされた超人エリート層〉であるとする。そして、それ以外に〈大量の無用な人間〉が残されるとも論じている。

これまでは戦争が起きれば「兵隊」が必要だったし、経済を回すためには「サラリーマン」がいなくてはならなかった。だから国の指導者も“その他大勢”の声を無視できなかった。しかし、これからは違う。ドローンや精鋭サイバー部隊が戦争を即座に終わらせれば、「兵隊」はいらない

『ホモ・デウス』は、「AIで消える仕事」が大量にあることも浮き彫りにする。銀行員、旅行業者、医師、弁護士、裁判官、刑事などは、高度なコンピュータの開発によって、次々と必要なくなると予想されている。

しかも、他にする仕事もない。だからハラリ氏はそれを失業者ではなく、単に必要とされないだけの「無用者階級」と表現するのだ。

機械に支配されてしまう?

【ポイント3】人間はAIにデータを提供するだけ!?すでに渋滞予測機能がついたカーナビは存在するが、今は道を決めるのは運転手だ。だが将来、多くの自動運転の車に搭載されたナビが、同じ目的地に向かう人に別の道を指示して渋滞を回避する世界がやってくれば運転手は本当の情報を知ることすらできなくなる。

「この本では、人間と機械の関係性がどんどん変わっていることが示されています日本ではまだ、ITを“人間が使う道具”としかとらえない人が多い印象ですが、むしろヒトの手足と融合して“人間の一部”になるような方向に進んでいるわけです」

【ポイント4】それでも人間に希望はある。ただ、絶望だけではない。「興味深いのは、ラストの手前までは“人間がデータに支配される未来”の到来を予感させる内容なのに、最終章でハラリ氏がそれをひっくり返しているところです。未来を予測し、常に学んだり自分を知ろうと努めたりしていれば、選択肢も広がる。最終的に、AIと人間の関係はどうなるかわからないし、何か違った関係のあり方が見えてくるかもしれない。結論は、そんなふうに楽観的に締めくくられています」

予測不能な未来がくるからこそ、考え続けることが大切―まずは、『ホモ・デウス』を手に取ってみるのがいいのかもしれない。


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